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第百三話

 「進め進め!!皇帝を打ち倒すのだ!!」


 帝都ウッディーネへと向かう軍団がある。

 大量の騎兵と銃で武装した歩兵、砲兵を従えた一人の男…

 スタトゥニテ帝国の主要五都市の一つであるサマラスを治めるイヴァン侯爵だった。


 「侯爵様、いよいよ皇帝になるときがきましたな」


 「ああそうだ!ようやく俺に運が回ってきた!そもそもいつまでも皇帝の座を世襲制で受け継ぐというのは昔から好かなかったのだ。これを機にすべてをひっくり返してやる」


 「ただひとつ不安が残りますな。我々には大義が無い。皇帝を打倒したとしても他の貴族たちに反乱を起こされる可能性も…」


 「ああそうだ。我々の言い分はこうだ。皇帝は自分の死期を悟りウッディーネの民全員と心中するつもりであると。我々は皇帝の乱心を止めるために軍を派遣するのだ」


 「なるほど」


 とても楽しそうに呟くイヴァン侯爵の隣で馬を並べているのは魔術師であるベッファ、彼は以前より侯爵と交渉を行っており、反乱を企てていたのだ。

 そしてベッファの後ろに続くのは…


 「………」


 白髪に紅い瞳の青年達。

 本から生み出されたキマイラだ。


 「それにしても全員判で押したように一緒の顔だな」


 「全員同じ性能、戦闘能力を持っています。仮に帝国側がどれほどの戦力を備えていようと歯牙にもかけないでしょう」


 「ふふふふ、楽しみだ」






 「もっと飛ばせ、クラウ」


 一方海上を飛ぶ飛行船ではキマイラが苛立ちながらクラウを急かしていた。


 「限界速度です。これ以上はどうしようもない」


 機械の船体はこれ以上速度を上げようがなく、機関部に至っては異常なほどの音が響いている。


 「クラウ様、こうなれば私とキマイラさんで一足先にウッディーネに向かいます。他の皆様は後から」


 「分かりました。キマイラさん、テュポーンさん。お願いします」


 「行くぞ、テュポーン」


 「はい」


 躊躇なく飛行船から飛び降り、二人は翼を羽ばたかせ真っすぐに飛んでいく。


 「キマイラさーーーん!!どうか無事で!!」


 「ああ!!」


 飛行船から身を乗り出しつつ手を振るミリー、それに答えつつキマイラは飛んで行った。


 「相変わらず早いな。テュポーン」


 「これでも加減しているのですがね。私の熱核器官はかなり旧型で長持ちしないので…速度を落としましょうか?」


 「いや、構わない」


 キマイラの先を行くテュポーンは相変わらず凄まじい速度で飛んでいる。

 その速さたるやキマイラが全速力でも追いつけない程である。


 「無関係の人間まで殺すやり方は、私も絶対に反対です」


 「ところでテュポーン。ベッファ…この名前に聞き覚えは?」


 「…良くない噂なら少しだけ小耳に挟んだことが」


 少しだけ考え込むような表情を見せた後、彼は口を開いた。


 「どんなだ?」


 「かつてこの大陸が五つに別たれていた時。とある魔術師が武器や薬を売りさばいたり、戦争の火種をばらまいていたと」


 「火種?」


 「…サマラス人のふりをして、トゥールス人を殺す…などです」


 「それは…」


 「とはいえあくまで噂、証拠もありませんでした。ですがこうしてエイルバー様の意図とは違う動きを見せている時点で、恐らく噂は事実」


 「懐に危ない人間を入れていたのか。エイルバーの奴は」


 「恐らく知らなかったのでしょう。この手の情報は当時魔術師をまとめていたエルフリーナお嬢様と、ギース様のみ」


 「…ギース、か」


 苦虫を噛みつぶしたような表情を浮べながら、二人はウッディーネへと急いだ。


 

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