第百一話
「速度落とせ。港にぶつけるなよ」
「はい」
エイルバーの指示で徐々に速度を落とす船。
隣には苦虫を嚙みつぶしたような表情のミリーが控えている。
「さて行くぞ。荷物をおろしたらお前は解放だ」
「…………」
やがて船が完全に止まると、甲板の方が船員たちの怒号でうるさくなる。
「化け物共が来るぞ!!急いで運び出せ!!」
「急げ急げ!!」
船倉にある木箱を二人がかりで抱え、次々と運び出す。
中身は見えないが、エイルバーの言葉を信じるならばこれは本なのだろう。
「外に出るぞ」
「…はい」
「降りろ!!奴ら到着した!!」
遠眼鏡を使ってエイルバーの乗る船を見るエイラが叫んだ。
「行くぞ!!」
「はいッ!!」
まず飛び出したのはキマイラとテュポーン。
「ドリュアスはこれを使って!!エイラは警戒を!!」
「あいよ…これは何じゃ?」
「分かった」
クラウは叫びながら、ドリュアスに身の丈程もある銃を任せた。
船体に完全に固定されたそれは通常の銃よりもかなりの重量がありそうだ。
「『ニ型重機関銃』対物用の銃!それで荷物を狙って」
「と言われても使い方なんぞ分らんわい」
「ああもう!!」
「エイルバー…ミリーの身柄を渡してもらおう」
「ああいいぞ。『荷物』を移動させてからだがな」
甲板に降り立ったキマイラとテュポーン。
彼の隣にいるミリーも不安そうにキマイラを見ている。
「キマイラさん…」
「無事か?ミリー」
「はい。私は無事です」
「俺が女に手荒な真似をするわけないだろう?」
「今お前がやろうとしていることを考えたうえで発言しているのか?」
「そういやそうだな。すまん」
笑いかけるエイルバーとは違い、キマイラの顔は憤怒に歪んでいる。
「ああいいぞ。だが積み荷を移動させ…」
彼がそこまで言った後、炸裂音が鳴り響き置かれていた木箱が砕け散った。
「何ッ!?」
荷物を破壊され焦ったような声を出すエイルバー。
「ミリー!!」
彼が気をとられている最中に何とかミリーを抱き寄せるキマイラ。
「クラウ!?どういうつもりだ!!」
(まさかミリーの事を見捨てるつもりか!?)
炸裂音はクラウ達の乗る飛行船から聞こえてくる。
そちらに視線を向ければ、クラウが大きな銃をこちら側に向けて凄まじい勢いで発砲してきているではないか。
銃口から弾が吐き出されるたび、キマイラ達がいる船…甲板に腕が入れられるほどの大きさの穴が開いていく。
「糞ッ!!『本』がッ!!」
なりふり構わず木箱の残骸に近づくエイルバーだったが、彼の表情は別の理由で驚愕に彩られた。
「なん…だと…?」
銃弾の雨が降る中エイルバーが目にしたのは…
木箱の中に目一杯詰め込まれた、ただの石ころの山だった。
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