サイドストーリー 未来に続く古き英雄達 中編
「全員無事にこれたな。城門を開けるぞ」
「出来ると思うか?」
「………」
ブレダ城の中、目標の城門が見れる場所までクラウ達は移動できたのだが…
「これどうやって開けるんだ?神様にでも祈るか?」
出来る限り小さな声でタイラーが呆れたようにそう漏らす。
だが無理もない、目標である城の門は土嚢で完全に塞がれているのだから。
とてもではないが数人程度でどうにかなるものでもない。
「…火薬庫があるはずだ、そこにある火薬を奪取してあの土嚢を吹き飛ばす」
「任務が増えてんじゃねぇか…畜生め」
「ごちゃごちゃ言ってる前に行くよ」
そう言ってアルビーナはクラウから城の見取り図をひったくった。
とはいえ…
「…分からない。なにこれ」
城の見取り図は何処にどういう通路があるなどの表記はあっても何のために使われる部屋なのかまでは書かれていない。
おまけに見取り図自体もかなり古ぼけ、書かれた線が掠れていてかなり分かりずらい。
「お前は学が無さすぎるんだよアルビーナ。俺に貸せ」
「…ッチ」
「なになに…多分こっちだな。行くぞ」
怪訝そうな顔で彼女はバルトロを見る。
「本当に大丈夫なのか?」
「勘だよ。けど多分ここだ」
にやにや不快な笑みを浮かべながら明後日の方向に行こうとするバルトロ。
その場の全員が不安になりつつもついていくことにした。
「おい、早くしろ」
「急かすなって」
バルトロを先頭に薄暗い石造りの通路をついていくと、鍵のかかった部屋が一つあった。
当然見張りがいたのだが…
「…うぇっ」
アルビーナは口を押えて吐くのを抑えている。
二人の見張りだった男の一人は後ろから首を斬られ、あるいは無理やりへし折られ死んでいた。
「おい餓鬼、こいつが鍵を開けるまでに聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
物陰に死体を引きずりながら、タイラーがクラウに聞いてきた。
「お前、こういうことやるの初めてじゃないだろ。何人殺してきた?」
先ほど見張りを殺した時、一人はクラウが担当していた。
彼女はあえて物を投げ、それを確認しようと近づいてきた見張りを奇襲して首を刈った。
一連の動作は無駄な動きなど一切なく、抵抗もさせずに殺す。
そんな芸当が出来るクラウという少女に寒気を覚えていた。
「…私は大昔、戦争に参加していました。もう何人殺したか分かりません」
「……」
「そうしないと味方が死ぬから、私がやらないといけないから。だから…私は…」
「…開いたぜ」
複雑そうな表情を浮べつつ、バルトロは扉を開けた。
「…これは火薬樽か?」
部屋の中には、いくつもの樽が保管されている。
そのうちの一つを、ピエトロは無理矢理こじ開けた。
「間違いない。火薬だ」
手に取ってみる。
黒く、そして独特な臭いの砂。
間違いなく火薬だ。
「湿気てないだろうな?」
「使わんと分からん」
「行き当たりばったりばかりだなおい」
そう言いながら、彼らは肩に担いで樽を運び出していく。
クラウの背丈ほどの大きさの樽だが、タイラーやピエトロには全く問題なく担ぎ上げている。
「あ、ちょっと俺無理だわ」
「あんた…」
…バルトロは運べなかった。
「…止まれ」
「ああ…」
ピエトロが片手を上げて指示を出した。
「足音、三人だ」
「こっちは行き止まりだぞ。どうする?」
「…あたしに任せて」
巡回の兵士だろうか?
靴音を響かせながら、徐々にこちらに向かってくる。
アルビーナは胸元をはだけながら音がする方へと歩いていった。
「案外乳がでかいんだなあの女」
「おいクラウ…」
アルビーナに続き、クラウも後に続く。
短剣を抜き放ち、段々大きくなる足音に警戒しながら。




