【第34話】 私があなたをさらった者です
「お! 戻ってきたな」
ドアが開かれるなり、開口一番にリーダーの声が届く。
「お待たせしました、リーダー」
クローディアが凛とした声で返事をする。
私も続けて部屋に入ると、リーダーの他に新たに三人も知らない顔が並んでいた。
これから共に向かうメンバーだろうか?
「いや、別に待ってねぇよ。俺らも今、着いたところ~。それで武器はナニをチョイスしたん?」
「桃華、あれを出してみてください」
クローディアの催促に頷き、さっきの感覚を思い出しながら、右手を肩まで上げて、木刀を掴み引っ張り出すイメージを抱きながら、腕を手前に寄せる。
すると、右手には木刀が重さを持ち、具現化したことを知らせてくれた。
「うぉ! それは俺のキッズ時代のメモリアルウェポンじゃね?」
「ええ! リーダーの言う通りすごい性能を持っている武器だということを桃華が見抜いたんです。見てください! この容量を」
周囲のみんなが木刀を注視する。
「おお! すげえ!」
「これは計り知れない物ね」
「ほぅ」
「ッベェー! マジか!? これマジっスか!? 俺の思い出補正とか掛かってねぇよな?」
各々が驚愕と感嘆の声を上げる……ちょっと待てとツッコミたいコメントをさっきからしている人物もいるけど。
「ふふ、驚くわよね。まだ、覚醒していないのに何の変哲もないこの木刀のポテンシャルを見抜く桃華の力にも。リーダーの戯言を実証したこの実績に私も目を見張ったわ」
なにか気まずい。
刃傷沙汰を避けたかっただけで、選んだのになんかクローディアの中での私の評価がどんどん上がっていってる気がする。
期待に応える自信も根拠もない私には荷が重く感じた。
それにしても、リーダーを相手するとみんなにツッコムところが増えてくばかりだ。
「それでよければ自己紹介も兼ねて、この木刀に特殊能力を付与してあげてくれないかしら?」
クローディアの提案に一同は顔を見合わせると、長身の男性がすまなそうに口を開く。
「クローディア、その件なんだが自己紹介については問題ない。これからの円滑さのためにわれわれも異論はないのだが、能力を知られている香霧は兎も角、私とソフィアは自身の魔法内容を明かすつもりはない」
「……それはなぜ?」
「その者、聞けば天使よりの考え方をしているようではないか」
ジロリと長身の男性が私を一瞥する。
「魔法の内容を事前に知られるということは対策を打つことができるということだ。信を置けるかも分からぬ人物に切り札を開示することはわれわれにはできないという事を理解してもらいたい」
「そんな! 気持ちも分かるけど、これから向かうところを考えればそんなことを言ってる場合じゃ……リーダー」
助けを求めるようにクローディアがリーダーに声を掛ける。
「しょうがねえっしょ。無理やりとか意味ないぽん。俺はかまわねえんだけど全員、魔法教えるのはごめりんこなのも分かるしな。俺の特殊能力を付与は意味なさげだしぃ、装備に関してはこのままでおなしゃす」
「そんな!」
「わりいな! 時間も巻いてかないとヤバタンなのは分かるっしょ? ダイジョビ! 俺が護ってやるし、それにクローディアたんの大事なネックレスも着けてるみたいだしイケルイケル!」
至極真っ当な意見に反論する気は私にはない。
生死が掛かる状況で、初対面の私を信用できないのも仕方がない。
リーダーの反応はムカつくけど!
「クローディア、気にしないで。ありがとう」
「桃華……分かったわ。話を戻しましょう。自己紹介だったわね。それじゃ香霧からお願いするわ。桃華は彼の姿を見るのは初めてじゃないかしら?」
クローディアの紹介を受けて、香霧と呼ばれた細身の男性が軽い会釈する。
黒い髪に黒い瞳と日本人と同じような風貌だ。
名前からして、東洋の方だと推測できる。
細身の体に黒のジャケットの下に灰色のインナーを着込み、黒のチノパンと体特徴も合わせて全体的に黒ずくめな印象だ。
「こうやって姿を見せて会話するのは初めてだね。僕は王 香霧、中国出身で年齢十八だ。君をアルフェルの城から連れ出したのが僕だよ」
「あなたが!? あのときの?」
「ああ、大体の君の事情もリーダーから聞いたよ。結果的に君の目的を妨害してすまない」
香霧さんが申し訳なさそうに頭をさげて、手を合わせる。
「洗脳されてないなんて、俄かに信じることはできないけど、いずれにしても迷惑を掛けてしまったとあらば、全力でこれから向かうところへサポートするよ」
「あ、ありがとうございます」
あの一方的に話をしてきた人物とは思えないほどの豹変振りだ。
あのときは香霧さんからしてみれば切羽詰まった状況であり、余裕がなかったからということだろうか。
「サポートにあたり、これから僕の魔法の一部を説明するけどよく聞いていて欲しい。僕の魔法は使いどころを間違えたりすれば一瞬で危機に陥るからね」
真摯な瞳で彼は念を押してくる。
私はそれに反射的に頷くと、彼は満足気味に頷き説明を始めた。




