【第29話】 お姉さまとお友達
ほあ! なに突然? っていうか、この人いまなんと!?
「『どんな時でも死亡フラグをへし折るリーダーが大好きです』と告白してくれたホットなハートを持ったクールビューティーちゃんはどこに行っちゃったのかなぁ? 俺をビリーヴしているなら行かせてくれるはずだよなぁ?」
こ、これは愛の告白の大暴露では!?!?!?
けど、この場合は告白せりふを赤裸々に第三者に聞かせるのはある意味、公開処刑な気が。
「なぁ、桃華、俺の大大だ~~~い好きなクローディアたん知らない? クールビューティーだけど温かみのあるラヴリィなクローディアたんの方ね」
突然、クローディアさんとの馴れ初めを暴露し始めたKYリーダー、クローディアさんがぷるぷる震えている。
ああ、分かる。
あれは恥辱への怒りだ。
私でも会って間もない他人に恥ずかしいせりふを暴露されたら――とりあえず、ヤっちゃうかもしれない。
乙女の敵と認定しとこう。
「ああ! もう!! わかりました! わかりましたから、私は別にリーダーが心配で言っているんではないんです~! どうせケロっとして帰ってくるのが目に見えますし、私は桃華が心配だから反対なんです~」
ふぁっ!? クローディアさんが怒った?
ううん、これはどちらかというと。
クローディアさんの頬はさっきの公開暴露のせいで紅潮しているけど、口調は怒りというより拗ねたように聞こえた。
「あんな地獄のようなところ、魔法が使えない桃華が精神的にも肉体的にも厳しいと身を案じた上での判断です~。けど、本人が行くと希望するなら、もう止めはしません~」
「あ、あの、クローディアさん……?」
私の声にハッと我に返ったように、クローディアさんはコホンと咳払い一つ。
その様子を楽しそうにニヤニヤ笑うKYリーダー。
「Doよ? 俺のクローディアたん、メチャ可愛くね?」
私はもちろん――
「ギャップ萌えね」
即答した。
「うぇあ!? え~っと、そこ! 静かにしなさい! コホン……たしかにこちらに落ち度もありますね。ただ、アルフェルがココを襲う可能性は非常に高いんで戦闘要員は多く駐屯してもらいます」
顔を真っ赤にしながらも、クローディアさんは落ち着きはらった静かな声で告げた。
「なので、そうですね。ルーファスとソフィアの二名を同行させますので、リーダーと桃華を合わせた四人で目的の遂行をお願いします。なにか異論があれば聞きますけど?」
クローディアさんの言葉にリーダーはニッカリと笑い、
「問題なんて欠片もないパティーンだな。結構結構、その二人ならほとんどのピンチには対応できちゃうポテンシャル秘めてんし、てか溢れ出てるし問題ナッシング。しゃっ! そうと決まれば即行動だ!」
直情径行な性格なのがすごく分かりやすい人だな、この人。
けど、これまでの言動から……いや、言動は問題だらけだけど芯となる部分は会って間もないけど信用できる気がした。
「一時間後にもう一度、ココに集合でおけ? 桃華をみんなに紹介したいところなんだけどアルフェルが動く可能性がある以上、のんびりとできないジャン」
私的にはアルくんが来ることには何も問題はないけど、シュレンさんに直接会うチャンスは早々ないかもしれない。
私が知らないこの世界のことも気になる。
危険は伴うみたいだけど妹のことを考えれば臆する場合じゃない。
「桃華は武器庫にあるものを自由に使っちゃって。クローディアたんがナビってくれるから。そんじゃ、またあとで」
口早にそういうと、リーダーは出て行き部屋には私とクローディアさんが残された。
「あの、ありがとう。クローディアさん」
「礼には及びませんよ。むしろ、私は死地へ向かおうとしているのを分かっていながら止める事のできない自分に歯痒さを感じたくらいです。それに私にも大切な肉親がいましたから、桃華の気持ちも分かります」
クローディアさんは負い目を感じているのか。表情が暗く陰る。
「これは忠告になるんですが、私たちのリーダーは普段はちゃらんぽらんで頼りなさげに見えますが、いざという時には頼りになりますから、これから向かうところではなるべくリーダーの側から離れないようにしてください」
「ええ、分かったわ、クローディアさん。……けど、クローディアさんの恋人ってリーダーなんでしょ? 私も女だから興味あるんだけど、彼氏の側に他の女の子いるのって、なんていうかあまりいい気がしないモノじゃないの?」
クローディアさんに困った表情が浮かぶ。
「まぁ、正直、あまりいい気はしませんが『仲間』の命と比べれば我慢もできますよ。なにより、私は彼を信じてますから」
「わぁ、わぁ! いいな! いいな! 純愛だぁー! うらやましいなぁ、私もそんな恋してみたい!!」
「そ、そうでしょうか? 私は当然と思えることを口にしたまでですが」
照れくさいのか目をキョロキョロと右往左往させながら、もじもじと指を遊ばせる。
ギャップ萌えというものだろうか。
クールな大人の印象から一転して少女のようなあどけないしぐさは女の私から見ても、とてもかわいらしい。
あざとさを感じさせないその姿に親近感が湧いてくる。
「これはリーダーがクローディアさんに惚れちゃうのも分かるわ。だって、クローディアさん、かわいすぎるんだもん」
「か、かわいいって、な、な、な、なにを言って……」
空恥ずかしいのか、クローディアさんはあわあわと両手をぶんぶんと交差させる。
ズルいくらいにかわいいなぁ。
「それにうれしかったんだ」
「……な、なにがですか?」
「仲間と呼んでくれたこと。それがすごくうれしくて、それにクローディアさんがあんまりにもかわいくて好きになっちゃった。んふふ、ねぇ、クローディアさん、私と友達になってくれないかな?」
私の唐突なお願いにクローディアさんは満面の笑みを浮かべて右手を差し出す。
「ええ! 喜んで! 同じ世界の人間だもの。こっちからお願いしたいくらいだわ。よろしくね、桃華」
「はい! よろしくお願いします! クローディアさん」
差し出された右手を握ろうとすると、私のおでこをクローディアさんがコツンとつつく。
「こ~ら! だめでしょ!」
「え!?」
なにがダメなんだろう? 私は何のことか分からなくてきょとんとした顔をする。
「もう私たち友達なんでしょ? だったら、クローディアでいいわよ」
子供を諭すような優しい声で、親しみのこもった表情でクローディアがはにかむ。
「えへへ、しっぱいしっぱい。それじゃ、あらためて、よろしくね。クローディア」
私たちは互いにほほ笑み合いながら、握手を交わした。




