【第28話】 大きなお世話だった?
「桃華に他の目的でもあるなら……けど、この世界に来たばかりの人間の目的なんて元の世界に帰りたい以外になにもないの一点バリだし。自分で言ってなんだけど~、これポシャりじゃね?」
――別の目的? 私にとっては元の世界に帰ること以上に大切なコト、それは。
「目的ならあるわ! 妹を、この世界にいる妹を見つけ出すこと。そうだ! あなたたち、妹を知らない? 悠久 花蓮っていうんだけど」
ガバッとリーダーに食い掛かるように、身を乗り出した。
「ととっ! バビったぁ。急にどうしたん? 妹とコッチで離ればなれになっちまったのか? 俺は悪ぃけど、聞き覚えがないな~。クローディアたんは?」
リーダーがクローディアさんの方に問い掛けてみると、クローディアさんは難しい顔をして答えた。
「……いいえ、ごめんなさい。私も知らないわ。見つけたら保護するように『理想郷の鐘』のみんなに伝えとくわ。ええっと、悠久 花蓮ちゃんでいいのよね?」
私は肯定するために頷く。
「……ただ今回の特異点には桃華の分しかエネルギーは観測できなかったし、あの予言が外れたってことなのかしら?」
どうやら二人とも私と花蓮がこの世界に一緒に来て、逸れたと誤解してるみたいだ。
「ちがうの。妹は八年前にこの世界のこの街に迷い込んでシュレンさんって天使に保護されたみたい。保護されてから五年後に行方不明になったみたいだけど」
ここから先の言葉が言いづらい。
なにか責めてるみたいになってしまうけど、うまい言い方が見つからないのでありのまま話そう。
「……その、言いにくいんだけどシュレンさんに妹の手掛かりがないか話を聞きに今日、アルくんが出掛けて、その間にお留守番していた私をあなたたちがさらって今ここにいます」
「「………………」」
気まずい沈黙があたりを支配していった。
「え~、あ~、そのスマン!」
リーダーもどきがスパっと頭を下げた。
頭を上げると申し訳なさそうに口を動かした。
「その件についてはマジメンゴ。だけどよう、俺らもメチャテンパッていたんだぜ。アルフェルが城を離れないと桃華にコンタクトとかマジでムリメだったし、俺もダチ公をそうやすやすと死地にいかせたくないのがガチの気持ちな!」
いい加減にみえるけど、いい加減でないのが、ううん、むしろ、真情を吐露しているのが、この人から不思議と伝わってきた。
「マジで命懸けます的なアクションだったわけよ。結果としては、桃華には知りたい情報を得るチャンスを逃がしてしまうオチになっちゃたワケ……からの~今回も結果オーライの予感到来的な!」
――やっぱり、反省してないように見える。
「これから向かおうとしたところに目的のシュレンはいるんだなぁ。まぁ、困ったちゃんなことに穏便にトーキングはちょっとムリメな気もしますが~。――ここで任せろ! って言えちゃうのがリーダーの由縁ってやつ?」
「え? いまなんて……」
この人いまなんて言った? なにかとても大事なことを――
「方法は考えるからよ! 必ず、花蓮ちゃんを発見して、『理想郷の鐘』のみんな、いや、人間みんなで俺たちの世界に帰ろうぜ!!! ……まだ帰り方も分かんないけどな、てへぺろ」
喋り口調から緊迫感は全くないけど、それでもなんとなく、この人がリーダーに選ばれた理由が分かった気がする。
どんな困難な状況でも大丈夫だ! 任せろ! と言える人間がどれくらいいるだろう? 失敗したら周りは、この人のせいにする人もいるだろう。
それでも、この人は素直に謝り、次こそはとチャレンジし続ける気がする。
音無響夜とはそんな人物に思えた。
どんな困難にも諦めない人にこそ人は手を貸し、同じ志を宿し、命を燃やし、意志を連ね紡いで行く。
「……はぁ、アルフェルだけでも厄介なのにシュレンまであなたは相手にしようというのですか? ルナとルミがいない現状、捕獲しか方法がないんですよ?」
呆れた顔でクローディアさんが口を挟む。
「ラスボスを相手にしながらシュレンGETだZe! なんてどこかの有名ゲームみたいなマネなんて不可能です。無理言わないでください」
クローディアさんがリーダーを怒鳴りつけた。
今日だけで何回目だろう? このリーダー相手では気苦労も絶えないかもしれない。
けど、クローディアさんには申し訳ないが、このはなしは私には充分すぎるほど魅力的だった。
妹の手掛かりを掴むチャンスだ。
「お願いします。私をそこへ連れて行ってください! シュレンさんに会わせてください。妹の、大切な妹のわずかな手掛かりなんです。どうかお願いします」
妹に関する大切なことだ。
それにこの世界のありさまを私は上辺だけしか見ていないのかもしれない。
なぜにアルくんのことを、この二人はここまで憎むのか。
その理由もそこにあるとリーダーは言った。
真実を教えると。
「だってよ、本人も行く気満々だし、さらって誘ったのはコッチなわけだから、おわびになるどころかさらにひどいことになるかもしんねぇけど連れて行かないわけにはいかない的な?」
私はぶんぶんと首を縦に振る。
「それともクローディアたんは桃華の大切な妹のことなんか知らねって言うの?」
リーダーの言葉に「うっ」と一瞬、怯むクローディアさん。
「かぁ~! 冷たい! 冷たいっすわ! クローディアたんマジクールビューティ。心まで冷たくなってしまったんですね! 分かります! って分かりたくねぇって~の!」
私の言葉を追うようにリーダーが煽り口調でクローディアさんを捲くし立てる。
「なっ!? 私はリスクを配慮した上で意見したまでです! 別に桃華の妹のことや心情を無視して言っているわけではありません! 私がクールビューティーでもそこまで非道ではないです! ふんっ!」
自分でクールビューティとか言っちゃうんだ――なんかこっちの世界で会う人会う人――残念だ。
「嗚呼、ゴッドよ! 無鉄砲でも仲間のために戦う俺が好き! って言ってくれた俺のかわいいハニー、クローディアたんはどこに行ってしまったのか?」




