第123話 場末の店
こちらはカクヨムに掲載された修正版です。
原文ともによろしくおねがいします(*^^*)
一息ついて、最初の目的に立ち返った弥生たち。
あらためてホップと探していると伝えたが、ゴロスケたちはそんな香草は聞いたことがないと困り果てた。
そのかわり市場の奥に、ちょっと変わった万屋があると教えてくれた。
そこは食べ物から骨董品まで、とにかく珍しい物ばかりを取り扱っている店で、そこならばもしかしたら知っているかもしれないとのことだった。
で、さっそく市場にやってきた弥生たち。
いつもなら賑わっているはずの大通り。
しかしいまは誰一人として姿が見えず、閑散と静まり返っていた。
「……あんた朝、市場でしじみを調達してきたって言ってたけど……」
「ええ、この市場です」
「やっぱりねぇ」
国の全軍を壊滅させたモンスター。
その姿はすでに国中に広まっていて、市場の労働者はみんなどこかへ逃げてしまっているようだ。
「……これじゃあ目当ての店も閉まっているかもしれないわよ」
「申し訳ありません」
「まあまあ、とりあえず案内しますじゃ。ついてきてくだされ」
トコトコと二本足で歩いていくゴロスケ。
人間大のフクロウ。
その大きな後頭部が揺れる様は、なんとも愛嬌があって笑える。
「どうかしましたかの?」
「い……なんでもないわ。ごめんごめん……くく」
「…………?」
真後ろまで回転する頭に、まんまる目玉。
いまのところフクロウ族はゴロスケしか見てないが、こんなのが何人もいたら面白くて萌え死にしてしまうかもしれないと吹き出しそうになる弥生だった。
「……ここですじゃ」
案内されたのは、大通りを抜けて細道に入ったさらに奥。
城壁間近に建てらてた石造りの古ぼけた店だった。
日当たりが悪いせいか、壁にはコケがびっしりと生えて手入れもされていない。
普通なら不気味がる外観だが、草の精霊である彭侯と、それを従える弥生はとくに気にしているようすはない。
湿った木製扉の脇には小さなプレートがぶら下がっていて、そこに『猪手孟樽』と書かれていた。
「なんちゅう名前やねん!?」
つられて関西弁がでてしまう弥生。
「……怨怒霊の住人に関西訛りはありませんが、こういう形で継承されているのかもしれませんね」
「……なんか騙されてる外国人みたいね」
まあネーミングセンスはこの際どーでもいい。
とにかく中に入ってみようとする弥生。
ゴロスケはなぜか怯え、レレの後ろで羽を畳んでいた。
「細っそっ!!? なにそれ!!? フクロウの警戒ポーズ!??」
「いえ……その、はい、申し訳ないですじゃ」
「なにワフ? ここはそんなに危険な場所ワフか?」
「危険と言うか……そうですな。ここは珍しく上級亜人である店主がそのまま店番を勤めておりまして……」
「ああ、だから怖がっているのね?」
「弥生様、一応警戒なさったほうがよろしいかと」
全身にツタを巻いた彭侯は弥生に代わり、前に立った。
避難して留守かもしれないが一応慎重にノックをしてみる。
――――コンコン。
「こんにちは。やっておられますか?」
「おう、開いてるぜぃ」
すると意外にも返事があった。
しかも若い女性の声。
弥生に目配せをして三歩ほど下がってもらうと、
「失礼します」
警戒しつつ扉を開いた。
「…………おや、見慣れないお客さんだねぇ? 他所の人かい?」
中の広さはコンビニぐらい。
薄暗い店内には怪しげなガラクタが所狭しと陳列されて、干し肉やら瓶詰めやら、壺やら茶碗やら、剣やら盾やら、古着やら古本やら、珍しそうな珍品がジャンルを問わず売られていた。
そして奥のカウンター。
漢方薬と書かれた無数の瓶棚の前に立つのは、やはり若い女性。
頭に狼の耳を生やした気の強そうな上級狼人だった。
歳は二十歳くらい?
銀色のストレートヘアにもふもふケモミミが愛らしいが、やはり上級亜人なだけあって相応の迫力は感じられた。
「ええ、そんなところです。少し珍しいものを探してここを尋ねたのですが、よろしいでしょうか?」
「……珍しいもの? だったらウチに来て正解だけど、なんだってのさ?」
店主は彭侯を見ても警戒する様子はない。
きっと彼女はまだ自分たちのことを知らないのだろう。
ならば知られて怯えられる前に商談を済ませたほうが楽ですね。と彭侯は懐から一枚の紙を取り出した。
「ホップという香草を探しています。取り扱っておられるでしょうか?」
「ホップ? ……聞いたことのない植物だねぇ」
「こういったものです」
首をかしげる店主へ紙に描かれたイラストを見せる。
すると「ああ、なんだ」と微笑んで、
「ヒロポじゃないか? それならここにあるぜ」
そう言って後ろの棚から瓶を一つ持ってくると中身を見せてくれた。
カリカリに乾燥させられ茶色く変色した平たい植物。
それはまぎれもなくホップだったが、求めている物とは違った。
「コイツは食欲不振や胃もたれに良い薬でな。他にも鎮静作用や不眠にも効く優れものさ。なかなか手に入らない貴重品だけども、あんた色男だから特別にまけてやってもいいぜ?」
「ああ、いや……これなのですが。求めているのはこれの新鮮なものなのですよ」
「新鮮? 生ってことかい??」
「ええ、それもできる限り採れたてで」
簡単に微笑む彭侯。
店主は呆れ顔で言った。
「バカ言うなよあんた。これはずっと北の方でしか採れない草で、しかもいまは季節じゃない。そりゃあ無茶ってもんだぜ?」
「もちろん存じておりますよ。これが収穫できるのは8~9月辺りでしょう。その時期に仕入れてもらえればいいのです」
「予約か? ……たってなぁ、生でだろ? う~~~~ん……。一応聞くがどのくらい必要なんだい?」
「10トンくらいですね」
「……あんたやっぱバカだろう?」
提示された馬鹿げた量。
店主の頭からアホ毛がピョコンと飛び出した。
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