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会議



 ――我が『風心旅団』、そのギルドの内部。


「――さて、諸君。問題が発生した」


 俺は、その中央にある酒場風広場、その椅子の一つに座って、周囲にそう言い放つ。


「……問題って、完全にアンタがただマヌケだっただけだろーが」


 呆れたようにそう言うのは、テーブルに腕を組んで腰掛け、こちらをジト目で眺めるネアリア。


 はい、その通りです。ごめんなさい。


「まあ、うん、ハハ……ウチのペット達を元気いっぱい遊ばせてやりたくてですね」


「……頭領、前々から思っていたが、アンタちょっと、ヘンなところで抜けてるよな」


 と、次に彼女は、近くに座るセイハとレギオンの方に視線を向ける。


「つーか、二人も一緒に付いてたんだろ。何でそれぐらい気付かねぇんだ。ウチらのボスが、割と抜けている面があること、お前らもよくわかってんだろ?」


「……申し訳ないです」


『……面目、ない』


 セイハはいつもの如く仮面なので表情がわからないが、しかし申し訳無さそうな様子でそうネアリアへと言葉を返す、今朝俺のお供として付いて来ていた二人。


 いや、あの……ホント、その二人を責めないでください。


 私が、非常に哀れな気分になってしまいます。


「まあ、叱責はその程度で。今は、今後をどうするか話し合うべきでしょう」


 と、ネアリアを窘めるのは、老執事ジゲル。


「……ったく。あぁ、確かにそうだな。それで、どうするんだ頭領? もう、かなり騒ぎになっちまってるんだろ?」


「なってるな。緊急依頼が出されるってよ。調査隊が組まれて、近辺の森に捜索に出るらしい」


「別に、放置しておいてもいいんじゃねぇか? どうせ、森の中に脅威なんていねぇんだし」


 その提案は非常に魅力的だが……。


「……そうしたい気分ではあるが、脅威の対象が見つからなかった場合、脅威が去ったと判断されるまでの一か月、その調査隊に組み込まれることになるそうだからな。俺とセイハと、お前も」


「あー……Ⅶ級に上がったから、緊急依頼に強制召集される対象になったんだっけか」


「そう。けど、例の『国王選定の儀(・・・・・・)』まで、もう一か月切ってるだろ。それまで丸々動けなくなる、なんて事態は避けたい」


「じゃあ、どうすんだ。頭領のペットどもを本当に討伐させるなんて論外だし、その騒ぎの正体はウチらが飼ってるペットです!なんて言い触らすバカをやる訳にもいかねーだろ」


「……そうなんだよなぁ。だから、こう……出来れば勘違いだった、っていう方向で行きたいんだが……」


「そりゃ無理だろ」


「それは不可能でしょうな」


『……私も、それは難しい、かと』


「……ま、マスター、私は、いいと思いました」


「う、ウチも、そう思いんした、主様!」


「うん、ありがとう君達。俺、そんな優しい君達が大好きだよ」


 でも、さらに惨めな気分になるから、フォローせずにそっとしておいてくれると、もっと嬉しかったかな。


「だ、大好きだなんて……」


「あ、主様、お、お気持ちは嬉しいですが、そういうのは皆様が見ていないところで言っていただけると……」


「……そこの色惚け二人組は置いておくとして、実際問題、どうすんだ。明日にはもう動き出すことになるんだろ」


「ふむ……この際、冒険者の資格は剥奪されても良いのでは? すでに、王都内部に侵入するという目的を果たしている以上、王都への滞在はどうとでもなるかと」


「いや、俺達みたいな他所から来たヤツらの場合、冒険者の資格の剥奪と同時に、王都の追放もあり得るらしい。その場合でも、一か月後の国王選定の儀には絡めなくなるからダメだな」


「む、なるほど、そうでしたか……それでは確かに駄目ですな」


 納得した様子でそう言うジゲルの次に、ネアリアが口を開く。


「じゃあ、こういうのはどうだ。むしろ逆に、なんかテキトーなそれっぽい魔物を見繕って、その調査隊にぶつけるってのは。これだったら、ソイツを討伐して皆ハッピー、ウチらも早く事が済んでハッピー、大団円ってな」


「あー……悪くない考えだとは思うが、そんな簡単にそれっぽい魔物が見つかるか? ヤバい魔物の出現ってのは、時たまあるそうだが、それでも十年に一度あるかないかって話だぞ」


 この王都という人の住むところがあり、そして定期的に冒険者や王都騎士団なんかが脅威の排除に王都外へ出ている訳だからな。


 相当遠くまで行かないと、それらしいヤツは連れて来れないんじゃないだろうか。


「遠くまで行きゃ、どこかにはいんだろ」


「それで結果、探索そのものに一か月も掛かることに、なんて可能性も考えられましょうが」


「んじゃあ、セイハを連れて行きゃ――」


「私は、マスターから一週間以上離れるつもりはありませんので。マスターのお傍を離れることになれば、恐らく三日で限界が来ます」


「……一応言っておくけど、アンタそれ、自信満々に言うことじゃねぇからな」


 脱力した様子で、ネアリアがセイハにそう言った――その時。


「……いる」


 ――そう、ポツ、と呟いたのは、つい先日我がギルドの仲間入りをした、寡黙な少女、瑠璃。


「お、瑠璃、いいぞ。何かあるなら、是非言ってくれ」


「……ぬまち」


「……あぁ、わたしもきいたことが、あります。みなみのぬまちに、おっきくてつよいまものが、いると」


 瑠璃の少ない言葉を補足するのは、彼女の双子の姉の、ルヴィ。


「へぇ? そうなのか。ありがとな、二人とも。助かったぞ」


 そう言って俺は、ちょうどいい位置にある彼女らの、透き通るブロンドの頭へと手を伸ばし、くしゃくしゃと撫でる。


「…………」


「……あっ、あの……」


「おい、頭領。新入りが困っているぞ」


「え? ――あ、すまん。つい」


「…………」


「……い、いえ」


 押し黙ったままの瑠璃と、若干頬を赤くするルヴィの二人の頭から手を離すと、俺は彼女らの言葉を思案する。


「南か……だったら、位置的にも俺達が散歩に出かけたところからそう遠くないな」


「ふむ……ならば一度、その沼地の魔物の確認に向かってみるのがよろしいかと」


「決まりだな。明日の朝、俺達が召集掛かる前に……そうだな、念のため皆で向かってみようか」


 双子のメイド見習いちゃん達は、率直に言って戦力外であるが……まあ、彼女らだけ置いて行くのも可哀想だろう。


「よし、そういう方針で。ダメだったらまたその時考えようか。何か質問あるヤツいるかー?」


「はーい、あんちゃん! おやつは持って行ってもいいですかー!」


「ご主人、いいですかー!」


「うーん、じゃあ、ちょっとだけな。シャナル、頼むぞー」


「えぇ、わかりました。腕によりをかけて、美味しいおやつを作らせてもらいます!」


 ぐ、と可愛い力こぶを作り、やる気をアピールするシャナル。可愛い。


「……もうアタシ、その辺りのボケにはツッコまねぇから」


「お、なんだネアリア。そんなこと言ってると、シャナルがネアリアの分、作ってくれないぞ?」


「作ってくれないぞー?」


「ネアリア、ざんねん!」


「あらあら、じゃあ彼女の分は燐華にファームに玲、それとルヴィと瑠璃の分にしてしまいましょうか」


「「わーい!」」


「あら、ネアリア、残念じゃったけえの」


「…………」


「え、あの……わたしたちも、ですか?」


「いや……別にいいけどよ……。つか、随分細かく分けるのな」


 そう言ってネアリアは、何とも言え無さそうな表情で苦笑を溢したのだった。



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