26話
女神が降りてくるので、預言拝聴者が集められることになった。
大変な準備である。
神ってすげーんだな。
『預言者の間』には、今、俺をふくめて九人がいた。
エルフ族。
ドワーフ族。
木精族。
竜人族。
まだ会話をしたことがない、それぞれの預言拝聴者。
半獣族は、ノイだ。
妹はまだ体調が戻りきらないのと、あと、ノイがしたことの後始末で忙しいらしい。
……後先考えろ。
真族はベリアルだ。
さっきからむやみやたらと俺にアイコンタクトをしてくる。
意味はよくわからない。
妖鬼族はもちろん、スイテンだった。
彼女は手を合わせて震えている。
昨日からずっとバイブレーションモードだ。心配になる。
人間族は、オフィーリアだった。
彼女と会うのも久しぶりのような気がする。
最近はスイテンにつきっきりだった。
あとでゆっくり会話をするのも、いいだろう。
周囲には、緊張が満ちている。
もうじき女神が来る時間帯なので、痛いぐらい静まりかえっていた。
……そう、『時間帯』なのだ。
詳しい時間は、実は明確ではない。
お昼ご飯を食べにいきますねー、という軽いノリだ。
……俺も、女神というものの偉大さをいまいち認識してないが。
女神降臨という事態の重大さを一番理解していないのは、女神自身のような気がする。
周囲にあてられて、俺まで緊張してきた。
『お昼ぐらい』になってからというもの、ベリアルでさえ、表情がかたい。
この空気の中、女神はどういう登場をするつもりなのだろう。
かなりハードル高いぞ。
光と一緒に降ってくる?
それとも、いつのまにかそこにいる感じで?
あるいは声だけでの登場で、姿はあとからというパターンも、あるかもしれない。
もしくは天変地異を起こして、俺たちを預言者の間から追い出し、神々しい登場とかも……
どう出る。
女神は、どう来る!?
俺は、さりげなく周囲に目をくばった。
すると――
発見する。
がこん、と動き出す、預言者の間の分厚い扉。
全員の視線が集まる中――
「あ、どうもみなさん。女神です」
女神が、ふつうにドアを開けて登場した。




