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女神からもらった俺の預言が、再翻訳でしか伝わらない!?  作者: 稲荷竜


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27話

「あの、預言者さんと話がありますので、みなさん一回はずしてくださいますか?」




 ふつうに登場した女神は、ふつうにそう言って、ふつうに全員を部屋から閉め出した。

 外部に音がもれない構造になってるらしい『預言者の間』に、女神と二人、残される。



 彼女の姿は、最初見た時と、ちょっとだけ変わっていた。

 虹色の髪。

 顔立ちは気弱そう。

 で、真っ白く大きな翼が背中にあった。


 ここまでは、最初見た時と変わらない。

 でも、前は薄衣を巻き付けただけみたいな衣装だった。

 クッキリ見える豊満な体つきを、今でもよく覚えている。

 なのに、今は、ちょっと綺麗めの、リクルートスーツみたいなものを着ていた。

 俺は思わず問いかける。



「その格好、どうしたの?」

「はい?」

「いや、服装が、前見た時と違うから」

「さすがに部屋着で外に出るのはどうかと思ったので、ちょっとそれなりの格好を……」

「あの女神っぽい衣装は部屋着だったのかよ!」

「あんな薄着で外出たら危ないでしょ?」



 たしかにそうだけどさあ……

 なに、俺、部屋着で対応されてたの?

 別にどんな服装で対応されようが、女神が俺にしてくれたことは変わらない。

 でも、ちょっと残念な気持ちになった。



「……それで、直接会わないとできない話っていうのは、みんなを追い出すような話なのか?」

「まあ。いらない混乱を招きそうですから」

「そこまでの話なのか……」



 聞くのこえー。

 でも、聞かないわけにもいかないだろう。



「それで?」

「結論だけ言いますと、弊社といたしましてはですね……」

「弊社!? あんた、会社員だったの!?」

「はあ、そりゃあ、そうですよ。あなたはわたくしのお気に入りですから個人的にだってお世話しますけど、ふつうここまで相性のいい相手をサポートするなんて、ないですからね。仕事でもないと、別に好きでもない、基本的に前世クズの、死んだ人の転生なんてやってられないでしょう? わたくしたち神は、サラリーマンですよ」

「現実って悲しいなあ……」

「話を続けても?」

「あ、ああ……」



 しばらく立ち直れそうにない。

 なぜか、これまで生きてきた中で最大のショックだ……

 だから会話の端々が社会人トーク入ったのか……

 いや、端々どころじゃなく、会話の中に会社員要素あった気がするけどさあ。



「それでですね、弊社といたしましては、あなたにもっともふさわしいお仕事が『預言者』であると厳正な審査により判断しておりますので、変更にかんしては、ご相談させていただきたく思います」

「それさあ、『相談しろとは言うが、相談されても駄目なものは駄目』ってニュアンスだよな」

「そうですね」

「やっぱり勝手な真似はできないか」

「……というのが、社の対応でして」

「うん? どういう意味だ?」

「わたくしは、個人的に、力を貸して差し上げてもいいかなって思ってますよ」

「……どう違うんだ?」

「まず、弊社の対応としてあなたの職業変更を認めた場合、以前語った万全のサポートが継続されることになります」

「以前語った……ああ、十個あるうちの二つだけ語ったアレか」

「二つ半です」

「いや、規約の文言で『半』はもう、ゼロと同じだよ」

「努力だけ認めてください」

「わかった、わかった……つまり、万全のサポートが保証されるわけだな。どんなサポートなのかを実感できる機会は、なかったように思うが……」

「まあそうですね。あんまりサポートをご利用になる転生者さんはいらっしゃいません」

「で、個人の対応の場合は?」

「サポートが利用できません。で、わたくしが独力でやるので、ミスが多くなるかと」



 ミスかあ。

 ……再翻訳とか?

 ん? ってことは……



「現状ですでにミスがあるようなんだけど」

「…………本来はミスがない状態が望ましいので、ミスをカバーするように、社員であるわたくしには努力が求められます」

「つまり、女神が改善の努力をしなくなると?」

「まあ、そういうことですね。わたくし側の話をいたしますと、変換器スクールなどに通う代金を今までは会社が出してくれていたのですが、自費でまかなわないといけなくなります」



 とことん俺には関係ない話だな。

 っていうか、スクール通いに金かかるんだ……

 女神って案外夢のない種族だな……

 現実に生きてるんだなあ、女神も。

 っていうか。



「でも、女神はどうしてそこまでしてくれるんだ?」

「え? それは駄目人間のあなたが好きだからですけれど……」

「そうだった……性格が歪んでいたんだな……」

「あの、わたくし気付いたんです。駄目人間のあなたが好きな自分が好きなんだって」

「知ってたよ……俺は、前々から、そう気付いてたよ……」

「というわけで、わたくしが個人的に提示するプランの話をさせていただきますね」



 おう。

 なんか、説明が長すぎて頭が死んでたけど、そういえばそんな話だった。

 ここからはどうやら、重要な話らしい。

 俺は態度をあらためた。



「わかった。教えてくれ」

「あなたを魔王にします」

「……え、なんて?」

「あなたを、魔王に、します」



 一語一語、区切るように、女神は、言った。

 俺は、理解が、できなかった。



「なんでいきなり魔王とか出て来たの?」

「他にふさわしい名称を考えるのが面倒だったもので……これまであなたを悩ませた問題は、すべて空気中に漂う魔力の素が原因なのは、ご理解いただけますか?」

「まあ」

「それをあなたがすべて統べれば、少なくとも、魔力の素が原因での問題は起こりません」

「なるほど。杖通話でも『魔力の素を管理する』とか言ってたな」

「魔力の素を統べる者、略して魔王です。魔者まもののほうがよければ、そちらでもいいですが。あるいは魔力の素を統べる男で、魔男まおとことか?」

「魔王でお願いします」



 魔男とか呼ばれたくないです。

 魔者もなんか、グレード低そう。



「では、あなたがお望みであれば、そのように手配いたします。もっとも、わたくしの個人的な力による魔王化ですので、不具合など出るかもしれませんが……」

「魔王って具体的にはなにができるの?」

「魔力を使った行いはだいたいできると思いますよ。人を植物に変えたり、人を石に変えたり、戻したり……あとは、かの有名な『ファイヤーボール』とかもできるかと」

「かの有名なとは言うが、有名どころすぎてどれを指してるのかわからん」

「ピーチ姫が使う方ですよ」

「ピーチ姫はファイヤーボールなんて使わねーよ」

「最近は使っていたような」

「いや、ピーチ姫はどうでもいいんだ。俺が悪かった」

「ではこれからデメリットのご説明を」

「ああ、やっぱりあるのか」



 そりゃそうだな。

 メリットばかりなんていうことは、ない。

 むしろ預言者は、基本メリットしかない立場だったのだ。

 それを俺が望んで変えてもらおうとしてるんだから、マイナスぐらいは発生するだろう。

 女神は神妙に、魔王になることで生じる不具合を語り出す。



「まずは、寿命が無限になります」

「おう」

「次に、老化しなくなります」

「ああ」

「そして、ある程度の運命操作ができるようになります」

「なるほど」

「最後に、世界中の情報を自由に閲覧できるようになります」

「そうなのか」

「大きなものは、以上ですね」



 なるほど……怖ろしい数のデメリットだ……

 思わず震える。

 そして、俺は、女神に言った。



「なんにも悪いことないじゃねーか!」



 最初から魔王にしてほしいぐらいだ。

 寿命無限で不老で運命を操れて世界中の情報を自由に見れるとか無敵すぎだろ。

 預言者じゃなくていいよ。



「いえいえ、よく考えてくださいよ。無限の寿命だなんて、なってみると退屈極まりないですよ。老化しないのも、自身の変化がなくてつまらないです。運命操作なんてもっての他で、ある程度の不自由さえなくなるのは、人生にスパイスがなくなるのと同様です。それに、世界中の魔力の素を使って好きな情報を好きな時に見えるなんて、旅をしたり想像したりする楽しみを奪われる、もっともおそろしい特性ですよ。実際に、神の中にはそれでノイローゼになる者もいます」

「悪いけど、もたざる者の俺にはわからない悩みばかりだ……」



 神の視点で語られても困るっていうか……

 なるほど微妙な不自由さは、神からの小粋なプレゼントだったというわけだな。

 供給する側が需要を把握してない。あるある。

 俺は宣言する。




「俺、魔王やるよ」




 女神はうなずく。



「わかりました。では、そうしましょう」




 そういうわけで。

 俺は、預言者から魔王にクラスチェンジすることになったのだった。

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