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役目を終えた元魔王の現代ダンジョン配信~腹パン魔王に配下の食レポを添えて  作者: やしき丸


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宝箱探し02

「探すと見つからないもんだねえ」


「そうですねー」


 ミディアの顔の話題も落ち着いてきて、俺達は探索を再開した。だが、一向に目当ての宝箱は見つからない。


:宝箱は探す物じゃないってそれ1番言われてるから

:反応集しか知らないからもっとあるもんかと

:ミディアちゃんの顔隠れちゃった


 俺も配信を観ている時に偶然発見した物や反応集のような動画でしか知らなかったので、もっと簡単に見つかる物だと舐め切ってしまっていた。


「先へ進むか……? いや、ここまで探したんだ。今日だけは宝箱探しするぞ!」


 別に攻略を急いでいるわけじゃない。今日1日を宝箱探しで浪費したって別に構わないだろう。


◇◇◇



 しばらく10層をうろついていると、他の探索者に出くわした。


 ダンジョンで他の探索者と出会った時はお互いに挨拶するのがマナーだ。

 人気のない薄暗いダンジョン内で武器を持った他人と出くわせば普通は緊張する。お互いに挨拶を交わすことで『敵意がない』ことを示すのだ。


「こんにちはー!配信中でーす!」


 配信者であれば配信中であることを告げるのはほぼ義務のようなものだ。配信に映りたくない人もいるし、他の配信者とすれ違うこともある。配信中であることを告げずに普通の探索者とトラブルになり炎上。みたいな騒動もこの界隈ではたまにある。


「あっ!配信者の方だったんですねー。こんにちはー」


 俺は言葉を失い放心してしまった。今カメラに向かって笑顔で挨拶してくれたこの探索者、見覚えがある。ありすぎる。


:みくちゃん!?

:みくちゃんやんけ

:なんでこんなとこにみくちゃんが?


 そうなのだ。なんという偶然か、みくちゃんに遭遇してしまったのである。

 生のみくちゃんはモニター越しに見るよりもずっとかわいく見える。


「みく……さんじゃないですか!こんにちは!シュウです」


「ミディアです!」


 いきなり『ちゃん付け』でファンムーブをかますのは絡みづらいと思ったので、とっさに『さん付け』にした。


「シュウさんにミディアさんですね。みくです!今日はオフなんで、映るのはちょっと恥ずかしいですね」


 オフでもダンジョンに来てるのか……。カメラに気付いた瞬間ぱっと笑顔を作ったし、プロだなあ。


「俺達は今宝箱探しをしてるんです。みくさんは見かけませんでしたか?」


「えっ。そうなんですか?私も暇つぶしに10層の宝箱でも探そうかなって思って来たんです」


:みくちゃんと呼べ。かっこつけるな

:コラボしろ

;一緒にいけ!誘え!

:生のみくちゃんと会ってるの羨ましすぎる

:みくちゃんがいると聞いて


 コメントは好き勝手言っている。みくちゃんと遭遇した瞬間から、リスナー数がすごい勢いで跳ね上がっている。

 どこで嗅ぎつけてくるんだ……。


「こら。みくさんはオフなの。無理に誘ったら迷惑だろ」


「あはは……。目的は同じですし、良かったら一緒に行きますか?」


 なんと女神であるみくちゃんの方から誘ってくれた。

 こうして俺達は突発の3人パーティとして行動し始めた。


(初コラボがみくちゃんとは……まじで嬉しい!……けど、ファンムーブはなしだ。一人の配信者として接しないと)


「普段からオフの時もダンジョンに来たりするんですか?」


「私は趣味もダンジョン探索なので。中層までしか行きませんけど」


 3人で探索を再開する。俺は緊張と興奮を悟られないように必死に取り繕っている。勇者と対峙した時より緊張しているかも知れない。……というのはちょっと盛り過ぎか?だが、同じくらい緊張しているのは本当だ。


「宝箱って探すと見つからないもんなんですねえ」


「配信の企画にしちゃうと余計そう感じますよね!私も何回かやりましたけど、あんまり成功してません」


 みくちゃんと話しているとモンスターが現れた。ダンジョンスライムだ。

 こいつは見た目は立体の水たまりみたいだが、近付くと飛びついてきて服や装備を溶かしてしまう。なぜか人体は溶かさないので危険度は低いが、高い装備が溶かされたりするので探索者には嫌われている。


「ミディア。スライムも食えるか?」


「いけますよ魔王様。私は何でも食べるのが取り柄ですからね。」


「た、食べる?それに、魔王様?ロールプレイ系……そういう設定なの?」


 ミディアの返事にみくちゃんが戸惑っている。

 ミディアは構わずに巨大な口を出現させた。


 ――ズゾッズズズッ。


 ミディアの口がスライムを吸い込んでいく。


「え?何あの口……」


:困惑してるみくちゃんかわいい

:お口ぽかーんで草

:初見はそうなるよな


「うちのミディアのスキルは捕食なんです。ああやってモンスターを食べます」


「ふむ……。これは食べ物ではありませんね。飲み物です。口に入った瞬間シュワシュワ感が楽しめます。甘さはなく苦味があるので、個人的にはそのまま飲むのはお勧めできません。何かのジュースで割るとおいしくなるでしょう。星3つです」


「しょ、食レポ……?」


:スライムは飲み物

:炭酸水っぽいのかな?

:シュワシュワ感って溶かされてるのでは……?

:割ればおいしいから星3つか。意外と好評だな


「こんな感じで、ミディアが食べたモンスターの食レポをするのが定番なんです」


「す、すごい配信ですね……こんな世界もあるんだ……」


 みくちゃんは初めての食レポに驚きつつも楽しんでくれているようだ。

 ダンジョンスライムのドロップはリチウム鉱石のかけらだ。


 その後は出て来たダンジョンウルフを俺が腹パンで沈めていった。みくちゃんの『光属性付与』を使った華麗な剣技を見せてもらうこともできた。


「シュウさん強いですねー。深層もいけるんじゃないですか?」


「初心者なんでまだまだです。いずれ深層に挑戦したいですけどね」


「初心者でこれですか……末恐ろしいですねえ」


「みくさんももうすぐ40層に到達しそうじゃないですか。ソロだと初ですよね?」


「あはは……。次の配信で40層到達できるように頑張ります!」


 ……?

 なんか一瞬みくちゃんの様子がおかしかった気がする。40層の話題になった瞬間少し動揺していた。何かあるのかも知れないが、配信では触れないでおこう。


;初のソロ40層はまじの偉業だからな

;パーティですら数えるほどなのにソロだもんなあ

;40層到達の瞬間は絶対に見届けるぞ


「……ないですねえ。あと探してないのはあそこを右に行ったところだけですね」


 マップを確認しながら進んで行く。あと探してないのは、ここを右へ曲がったエリアだけだ。

 ここまで探しても見つからなかったので、俺は『どうせここにもないだろう』と、ほとんど期待せずに進んだ。

 するとそこには――


「あった!宝箱あったぞ!」


 今日1日は無駄じゃなかったと興奮して、やっと見つけた宝箱に俺は駆け寄った。


「あっ」


:これは切り抜き確定

:初心者やなあ

:視聴者だったなら知ってるはずなのになぜ

:興奮して忘れてるんだろ


「さあ開けるぞ!何がでる!?テレレレーン!」


 俺はハイテンションで宝箱を開けたが、中は空っぽ。


「な、なぜだ……」


 俺は膝から崩れ落ちた。


「宝箱……開けた跡がありました」


 はっとして確認する。

 未開封の宝箱は鍵の部分が緑になっている。そして誰かが中身を取るとそこが赤くなる。宝箱の仕様だ。

 確認してみると、しっかりとそこは赤くなっていた。


「宝箱を見つけて興奮して忘れてた……知ってたはずなのに」


「こういう時もありますよ!私だって何度も空っぽの宝箱に遭遇しましたし!」


 みくちゃん(推し)が俺を励ましてくれた。俺の宝はここにあったんだ!


「発見済みだったのは残念だったけど、みくさんと探索できて楽しかったです」


「私も珍しいスキルが見れたので楽しかったです!食レポも面白かったです!」


「じゃあ今日はこの辺で!次もみてくれよー。ばいばーい!」


 3人並んで手を振って配信を締めた。視聴者数は最終的に5000人を超えていた。みくちゃん効果やばすぎる。


「ありがとうございましたみくさん。おかげで配信も盛り上がりました」


「いえ。楽しかったのは本当ですよ。ミディアさんの食レポもすごかったです」


 みくちゃんが笑顔で楽しかったと言ってくれた。これ以上に嬉しい事はない。

 ただ、さっきの違和感が引っ掛かる。歩きながら聞いてみるか……。


「40層到達の話題って振っちゃまずかったですかね?」


「え?」


「いや、一瞬だけ様子がおかしかったなって……視聴者さん達は気付いてなかったみたいなんで、触れなかったんですけど」


「……」


「あ、いや。すいませんいきなり……」


 みくちゃんは立ち止まって黙り込んでしまった。どうしよう。触れちゃまずかったか……。


「あの……」


「は、はい!」


「この後時間ありますか?」


「へ?」


「ちょっと付き合って下さい」


 みくちゃんは俺の手を掴むと、そのまま10層の転移結晶に向かってずんずん進んで行く。


(手!みくちゃんの手が!?)


 俺はパニックになりながら、しかしちゃっかり手は離れないようにみくちゃんの後を必死に付いていくのだった。

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