宝箱探し01
今日もミディアと新宿ダンジョンに来ている。前回からの続き、10層からだ。
ここからはいよいよ中層。ここで安定して狩りができれば周囲から中級者と呼ばれるようになる。
低層と比べてフロアも広くなり、モンスターもワンランク上の強さになる。
そして、ここからは新要素が加わってくる。
『宝箱』と『トラップ』だ。
宝箱には入っている物は様々で、中層辺りの宝箱には小さな金塊なんかが入っていたりする。
ダンジョンで金が手に入るとわかった時は、金の価格が瞬間的に暴落した。だが、宝箱からは手に入る金が少量だと判明したことで価値は戻り、現在は緩やかな下落傾向にあるらしい。宝飾品としての価値は少し下がったが、電子機器などの工業的な需要が高まったことで、ある程度の均衡は保たれているようだ。
トラップには色々な種類があって、モンスターを呼び寄せる物やダンジョンのどこかに転移させられる物が有名だ。中層にあるトラップには危険なものは少ないと言われている。深層にもなると結構凶悪な物があるらしいが、まだ気にする段階ではない。
ダンジョンの地形は変わらないが、宝箱とトラップは定期的にリセットされてランダムに再配置されることがわかっている。10層は毎週月曜日にリセットされる。
購入したマップにも注釈でリセットの周期が明記されている。
ちなみに今日は水曜日。10層の宝箱が残っているかは微妙なところだ。
『【宝箱探し】新宿ダンジョン10層を探索していくぞ【シュウ/ShuuMaT】』
「今日は10層を探索していくぞ。宝箱が残ってるといいんだけど」
:今週はまだ発見報告はないな
:配信者以外が見つけてるかも
:ローラーすればワンチャン
:今日は宝箱探しか?
一応宝箱とトラップは見つけたら探索者協会に報告するのがマナーということになっている。配信者は配信上で見つけるので基本的に守ってるけど、報告忘れやそもそも報告しない人もいる。実はすでに発見済みというパターンも多い。
「今日は先に進むよりも宝箱優先したいな。探索者になったからには一度は見つけたいじゃん」
:わかる
:ロマンだよな
:宝箱見つけた時の反応集おもろいんだよな皆個性があって
「それな。俺もちょっと前まで視聴者だったから、反応集とかよくみてたわ」
:魔王様は腹パンで開けるのか?
:宝箱の味も気になる。食レポ待ってます
:宝箱まで食べさせるなw
視聴者数が増えてコメントもどんどん流れるようになった。ノリが良い人が多くて俺も話しやすい。
「ワンチャンを祈りながら探してみよう。モンスターも新しいのが出て来るし、ミディアの食レポも楽しみだな」
「厳しく審査させてもらいます」
ミディアはすっかりモンスター食にはまってしまっている。それぞれ違う味や食感で楽しいんだそうだ。
しばらく探索していると、狼が現れた。ダンジョンウルフだ。
こいつらは通常三匹一緒に出てくる。数が増えることはあっても、減る事はない。
「ミディア。1匹食っていいぞ。2匹は俺がやる」
「わかりました!」
ダンジョンウルフが前に出た俺に向かってくる。こいつらはちょっとした連携を使ってくるので、ソロだと慣れるまではこいつに悩まされることも多い。
飛び掛かって来た1匹の腹にグーパンをめり込ませる。同時に足に嚙みつこうとしてきたもう1匹の顎を蹴って立ち上がらせて、そいつの腹にもグーパンを叩きこむ。
腹パン二連打でダンジョンウルフは吹っ飛んでいって倒れた。
さすがに低層と違って消し飛ぶことはなく、少しの間ぴくぴく痙攣したあとに死んで消えて行った。
横を見るともう1匹はミディアがすでに食べてしまったようだ。ミディアはうんうん頷きながら味わっている。
「ミディア。こいつの味はどうだった?」
「結論から言うと非常においしいです。引き締まった肉にほんのりと脂がのっているのが高評価ですね。脂が少ないので、がっつりと肉を食べたという満足感が味わえます。獣臭さも多少ありますが、これは逆に野性味があって良いと捉えるべきでしょう。星4つです」
:動物の方の狼は実際に食べられるからな
:解釈一致
:これは狼
:星レビュー助かる
ミディアの食レポはたまたま始まったものだが好評だ。確かにほとんどのモンスターの味なんて誰も知らないだろう。死体は消えてしまうからな。
「ダンジョンウルフのドロップは毛皮っと」
ダンジョンウルフの毛皮は人気がある。ファッションとしてコートにも使われるし、ラグマットなんかにも使われている。
一度に最低3匹出現するので、狩れるなら良い稼ぎになるのだ。
「毛皮3枚うますぎ。ここに籠る人の気持ちもわかるわ」
:ウルフハンターね
:実際中級者ならここに籠るのが金銭効率最高だからな
コメントでも言われているが、中級者の中には10層でダンジョンウルフを狩りまくる人もいる。奥に進むには実力が足りないが10層なら楽に狩れるみたいな人達は、ここで荒稼ぎするのだ。
「でも、やっぱ宝箱見つけたい!毛皮はおまけだおまけ」
:そうだよなあ!
:配信者ならやっぱロマンよな
「ウルフハンターを否定するつもりはないけどね。実際おいしいと思うし。だけど一度は宝箱見つけたいじゃん」
ウルフハンターを下げるような発言に聞こえたかも知れないと思ったのでフォローを入れておく。俺も稼ぎだけを考えるならウルフハンターをやっててもおかしくはなかった。それくらいおいしいのは確かだ。
「私は宝箱よりまだ見ぬモンスターを味わいたいです!」
:腹ペコキャラ
:素材の味をそのままで
:ずっと気になってたんだけど、ミディアちゃんのお顔って見せてくれないの?
:素材の味は草
:ただの丸かじりなんだよなあ
1つのコメントが目に留まった。ミディアの顔についてのコメントだ。
ミディアは髪で隠れていて普段は顔が見えない。わざとそうしてるのかと以前は思っていたのだが、本人は別に隠しているつもりはないらしい。何もせず放っておいたらこうなったと異世界にいた時に聞いたことがある。
「ミディア。顔、見せてみるか?気になってる視聴者さんがいるみたいだぞ」
「え?そうなんですか?私の顔なんてみても面白くないですよ?」
ミディアの顔をみたら、皆びっくりするはずだ。
「嫌なら無理強いはしないけど、気にならないなら見せてあげよう。皆驚くぞー?」
「こんな顔みてもしょうがないと思いますけど……」
ミディアはそう言って、顔にかかっていた髪をどけた。すると――
:え
:え?
:えええええ!?
:ふ、ふつくしい……
:とんでもない美人なんだけど!!
:なんで今まで隠してたんだ!
:ミディアちゃん推します
:決めた!俺の推しはミディアちゃんだ!
:魔王様すまん。ミディアちゃんに推し変するわ
爆速で流れるコメント。そうだろうそうだろう。ミディアは実はとんでもない美人なのだ。
少しつり目がちな切れ長の目は美しさを損なわないままにかっこいいという印象を持たせる。すっと通った鼻筋は芸術的なラインを描き、本体の方の口は唇が薄くて小さくてかわいらしい。
ミディアはかっこよさとかわいらしさを併せ持つ、超絶美人なのだ。
「皆驚いてるぞ。そうだよなー。俺も最初みたときびっくりしたもん」
「ええ……」
ミディアは困惑しているが、これで本人は全く自覚がないから困ったものだ。
コメントはまだ高速で流れている。ジャパニーズホラーの幽霊みたいな面白キャラからのギャップに皆やられてしまったようだ。
「今度美容室行こうな。さすがにその美しさを隠しておくのは何かの罪に問われそうだし」
「髪型なんてどうでもいいじゃないですかー」
ミディアはめんどくさがっているが、髪を切らせるのは決定事項だ。
美しさ云々は置いておいて、ジャパニーズホラーの幽霊と一緒に町を歩くのはさすがにちょっと恥ずかしいのだ。
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