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役目を終えた元魔王の現代ダンジョン配信~腹パン魔王に配下の食レポを添えて  作者: やしき丸


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4/6

新宿ダンジョン10層到達

 今日は二回目の配信だ。

 前回と同じく新宿ダンジョンを探索していく。できれば10層くらいまで一気に進みたい。


「ミディア。中に入ったらすぐに配信開始するぞ。言葉には気を付けるように」


 ちょっとしたことで炎上に繋がることもある。気をつけなければ。


「お任せください!」



『【脱低層】新宿ダンジョンを進んで行くぞ【シュウ/ShuuMaT】』


 配信をつけるとすぐに視聴者が集まってきた。今後は時間を決めておいて、待機してもらう方が良いかも知れない。


「どうもこんにちはー。シュウです」


「ミディアです!」


「前回は初回だったのでテストも兼ねて1層だけの探索だったけど、今日からは本格的に攻略していくぞ」


「新しい味が楽しみです!」


:掲示板で話題になってた

:ミディアちゃんの口がゴブリン食うとこ切り抜き上がってたよ

:腹パンを見に来ました

:今日はどこまでいくん?


 コメントの流れが速い。開始早々100人を超える視聴者さんが来てくれている。

 視聴者数は今もどんどん増えて行っている。緊張するけど、賑やかで楽しい気持ちの方が強い。


「今日は行けるとこまで行こうと思ってる。10層まで行けたらいいね」


:初心者が二日目で10層とな?

:あの強さならいけるのでは

:5層で逃げ帰るなよー?


 初心者のビッグマウスだと思ってるコメントもちらほら見える。アーカイブを見た人と、話題になってるから見に来ただけの人が混ざってるんだろう。


「それじゃ早速進んで行こう。ちゃんとマップも買ったし、サクサク行くぞー」


 新宿ダンジョンの低層は、先人の探索者達によって完全攻略済になっている。

 完全攻略された階層はマップが販売されている。スマホで購入して、それを見ながら進んで行くのだ。


「ミディア。ゴブリンは食べ飽きたか?」


「ゴブリンってあんまりおいしくないんですよねえ。苦味が強くて、ネバつく感じがして……」


:ゴブリンの食レポは草

:知りたくない知りたくない

:想像したら気持ち悪くなってきた


 コメントがざわついている。ゴブリンの食レポなんて初めてだろう。

 知りたくないのは俺も同じ気持ちだ。


「じゃあゴブリンは俺がやるから、新しいモンスターが出てきたらミディアが食ってみてくれ」


「わかりました!」


 視聴者さんは他の配信でゴブリンは見飽きてるはず。低層はさっさと抜けよう。

 現れたゴブリンに腹パンを決めて消滅させて、ドロップした耳を回収する。


「ゴブリンを倒して落ちるのがプラスチック製の耳ってのも不思議だよな。明らかに資源にしろって言ってるじゃん」


:神の作為ってやつね

:ゴブリンの耳(プラスチック製)

:実際資源問題はダンジョンが出来てからだいぶマシになったらしい

:完全に解決ってわけでもないみたいだけどね


 雑談しながらどんどん進んで行く。低層は広さもそんなにないので、マップを確認しながらサクサク進んで行くことができる。

 俺達はあっさりとゴブリン地帯を突破して、5層に足を踏み入れた。


「さて、5層にやってきたわけだが」


:初心者殺しの5層

:ゴブリン相手に調子に乗った初心者が逃げ帰るまでがセット

:魔王様とミディアちゃんなら余裕っしょ


 コメントでも言われている通り、この5層は『初心者殺し』と言われている。

 理由は単純で、出現するモンスターがいきなり強くなることにある。雑魚のゴブリンをさくさく狩って調子に乗った初心者が、いきなり強くなったモンスターに追い返されるなんてのも日常茶飯事だ。

 『初めての5層反応集』なんていうまとめ動画なんかもあがっていて、結構な再生数を誇る人気コンテンツにもなっている。


「出てくるのは、バイトスネークとブルボアだ」


 バイトスネークはでかい蛇だ。素早い動きで近づいて来て、長い胴体で絡みついてから噛みついてくる。毒は持っていないが牙がデカくて鋭い。

 ブルボアは猪だ。『初心者にとっては』と頭に付くが、すごいスピードで突進してきて、額に生えている角を突き刺してくる。

 どちらもゴブリンと比較すると危険度が跳ね上がるので、ここで挫折する探索初心者は多い。


「お。早速いたぞ。ブルボアだ。食ってみるか?」


「はい!いただきます!」


 空中に巨大な口が現れ、ブルボアを一口で食った。バキバキむしゃむしゃという咀嚼音が聞こえてくる。


「味はどうだ?」


「うーん……。獣特有の臭みはありますが、うま味もしっかりあってこれは中々おいしいです。筋が多いのが若干マイナスポイントですね」


:獣特有の臭みw

:そりゃ獣ですからね……

:もしかしてここってグルメチャンネルなのか?

:ここを追っていれば魔物の味が解明される!?


 ブルボアを食い終わった口からドロップが吐き出された。ブルボアのドロップは鉄製の角だ。


「インゴットじゃなくて鉄の角なのって、やっぱりゲームを参考にして神様が作ったからなのかねえ」


:低層はほとんど資源系に寄ってるよね

:多くの人が狩る低層で資源回収しろっていう作為を感じるよね


 コメントと雑談していると、今度はバイトスネークが。

 初見のモンスターはミディアに味見してもらうのが良いか。


「ミディア。あの蛇を食ってみてくれ。バイトスネークって言うモンスターだ」


「わかりました!」

 

 またも巨大な口が出現してバイトスネークを一口でぺろり。ブルボアの時と違ってグチャグチャという咀嚼音が聞こえてきてちょっと気持ち悪い。


「うーん……。この蛇は好みが別れそうですね。臭みはないんですが、細かい骨がいっぱいあります。肉はふんわりと柔らかくておいしいです」


:いかにも蛇って感じだな

:骨が多いのは無理

:聞いた感じ肉は美味そう


 バイトスネークを食べ終わった口から吐き出されたドロップアイテムは袋。中には肥料が詰まっている。バイトスネークがドロップする肥料は品質が良いらしく、農業に使われている。


「味見も終わったし、ここからは俺も戦ってさくさく進んで行くぞ」


 バイトスネークを掴んで引きちぎり、ブルボアは角を掴んで腹にグーパンをお見舞いして倒す。

 どっちも楽勝だったので、やはり低層では俺達の脅威になりそうなモンスターはいないようだ。


 さくさく進んだ俺達は、今日の目標であった10層に到達した。


「さて。10層に到着っと」


:ほんとに10層までいきやがった

:ほんとに初心者か?

:強すぎん?

:ここから新しいモンスターがまた出てくる。食レポ楽しみ

:腹パン魔王様も強い


 視聴者数もどんどん増えて行き、今では500人を超えている。チャンネル登録者も5000人を超えた。チャンネル登録者の10%がリアタイしてくれているってのはすごいことだ。もっと登録者が増えて行けば割合は下がって行くと思うけど、それだけ今話題になっているってことだ。


「10層からは中層って呼ばれてる。ここで狩りができるようになれば中級者って言われるようになる」


「まだまだ余裕ですねー。弱くてもそこそこおいしいモンスターがいることがわかったので、次のモンスターの味が楽しみです!」


「キリもいいし、今日はここまでにしておこうか。次回は10層からってことで」


 ダンジョンには10層ごとに転移結晶が設置されている。これを使って到達済みの他の転移結晶に移動できる。1層に帰還することもできるので、ダンジョン探索はこれを目安にすることが多い。ゲーム的な仕様の一つだ。

 

:もう5時間もやってたのか

:時間が経つのがはやい

:攻略もはやい

:中層もあっさり突破しそう

:次の食レポ待ってます!


「それじゃ、また次もみてねー。ばいばーい」


 前回と同じくミディアと並んで手を振って配信を締める。


「魔王様!今日はたくさんの視聴者さんがきてくれましたね!」


「そうだな。最初はちょっと緊張したけど、始めてしまえばすぐ慣れたわ」


「これからどんどん視聴者さんが増えて、もっと賑やかになるといいですねー」


 ミディアと一緒に転移結晶で1層に戻ると、外はもう夕方だった。


 ドロップ品の買い取りショップで今日の成果を換金したところ、3万円ちょっとになった。低層での一日の稼ぎなら上出来だろう。

 どこのダンジョンでもそうだが、ダンジョンの近くには買い取りショップがある。

 基本的に探索者協会が運営している公式ショップでの取引が推奨されている。

 民間の買い取りショップもあるが、悪質なショップとのトラブル報告も聞いていたので、俺は公式ショップしか利用しないと予め決めていた。


「何か食って帰るか」


「この世界の料理はおいしいので楽しみです!」


 料理は別腹らしいミディアと一緒にラーメンを食べて帰宅したのだった。

 お読みいただきありがとうございます。

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