表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役目を終えた元魔王の現代ダンジョン配信~腹パン魔王に配下の食レポを添えて  作者: やしき丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/26

新宿ダンジョン40層到達耐久配信02

「むぅ……」


 ミディアが唸っている。

 40層到達耐久も折り返しを過ぎて、今俺たちがいるのは37層。残すはあと2層とボスのグレーターミノタウロスのみ。

 順調すぎるほどなのに、あいつは不満そうだ。


「むぅぅ……」


 原因ははっきりとわかっている。おいしいモンスターが少ないからだ。

 これまでに高評価を得たモンスターはカニとミノタウロスだけ。カニと牛がうまいのはわかりきっている。

 ミディアは未知のおいしいモンスターに飢えているのだった。


「そんな唸ってもモンスターの味は変わらないぞ」


:ほっぺ膨らませてるミディアさんかわいい

:こういうときはミディアちゃんって言いたくなる

:わかる

:見た目こんなにかっこいいのにかわいらしい

:ダンジョン深層とは思えないのほほんとした雰囲気


「私は期待しすぎているのでしょうか……」


 ミディアがしょぼくれながらおにぎりをかじる。


「期待というか、そもそもお前以外にモンスター食うやつがいないからな」


 今は休憩中なので、持参してきたご飯を食べながら雑談中である。


:食材をドロップするやつ以外の味を知れたのはよかった

:まず食おうと思わないけどなw

:っていうか高級牛肉がちゃんとパッケージされてるのなんなんだよ

:作ったやつがおかしい

:お買い得シールも貼ってあったしな


「よし!40層までもう少しだ。朝までには到達しような」


「……はい」


 いまいち元気のないミディアを連れて探索を再開したのだった。



 38層になった途端、モンスターが増え始めた。

 今も5体のミノタウロスの群れが現れ、ミディアの胃の中に消えた。


「ミノタウロスは飽きました……」


 この層はミノタウロスゾーンらしく、必ず群れで襲ってくる。


「まあこの後のボスがグレーターミノタウロスだからな」


 ダンジョンのあちこちから「ブモーブモー」という鳴き声が聞こえてくる。


「獣臭いです……」


「そりゃこんだけいたらな」


「うぅ……」


 この層がミノタウロスばかりと判明して、ミディアのテンションは地に落ちた。


「さっさと抜けましょう!もう牛は飽きました!」


 さっきからミノタウロスが出現するたびに、俺が戦うまでもなくミディアが瞬殺している。

 よっぽど早く抜けたいのだろう。


 ミディアに急かされながら歩き続けること約1時間、俺たちはついに39層に辿り着いた。

 39層には大きな部屋が1つあるだけ。その入口である巨大な扉が俺たちを待ち構えている。


「ついにここまできたな……」


:本日のメインディッシュ

:ここを超えれば40層

:このダンジョンで確認されている唯一のボス

:ミノタウロスゾーンのボス

:やれんのか魔王!


 扉の前で一旦立ち止まる。この扉の向こうにはボスが待ち受けている。そして、それを倒せば40層到達だ。


「みくさんが倒したグレーターミノタウロスがいるんでしたよね?」


「ああ。そいつを倒せば40層到達で目標達成だ」


「今日はほんとに長かったですねえ」


 昼過ぎに始めた耐久配信だが、今は早朝の4時。それにもかかわらず、コメントの流れは速い。

 一番の見どころを見逃さないために、多くのリスナーが頑張って起きている。


「よし。いくぞ!」


 俺は39層の扉に手をかけ、一気に押し開けた。


 広い部屋の中央にはやはりグレーターミノタウロスの姿がある。


「俺が戦うから、ミディアは見ててくれ」


「わかりました」


 ミディアを待機させ、俺は一気にボスに突っ込んで行った。


『グルォォオ!!』


 グレーターミノタウロスが咆哮を上げる。俺を近寄らせまいと、手にした巨大な斧を振り回してきた。


「パワーなら負けてねえぞ」


 俺は振り下ろされた斧を蹴って弾き、がらあきの腹にパンチをお見舞いする。


 グレーターミノタウロスの体がくの字になって浮き上がる。俺は飛び上がり、ボスの後頭部めがけて回し蹴りを叩きこんだ。

 今度は顔面から地面に叩きつけられ、ボスはダウンした。


:魔王がまともに戦ってるの初めて見た

:強すぎないか?

:みくちゃんがあんなに苦労したのに……

:やばすぎだろ

:もう倒したの?


「いや、まだ生きてるよ」


 グレーターミノタウロスはまだ消えていない。生きている証拠だ。


 少しの間ダウンしていたグレーターミノタウロスだったが、やがて起き上がり、


『グルォォォオオオ!!!』


 と、怒りの雄叫びをあげた。


「目が血走っててこわっ」


 グレーターミノタウロスの目は血走り、鼻息も荒くなっている。どうやら激怒させてしまったらしい。


「長引かせるのもいじめてるみたいでアレだから、これで終わらせるぞ」


 俺は手のひらをグレーターミノタウロスに向けた。黒い魔法陣が現れる。



【――闇の(いかずち)



 魔王の属性は闇。漆黒の魔力から生まれた雷がグレーターミノタウロスを襲う。

 巨大な斧を盾にして防ごうとしたようだが、黒雷はそれを貫き、体にデカい穴をあけた。



【グル……ォォ】



 最後の呻きを残してグレーターミノタウロスが倒れる。そして死体が消え、40層へと繋がる扉のカギがドロップした。


「よし!目標達成!」


:つええ

:マジかよ

:楽勝なんだ……

:これマジで更新あるぞ

:完全攻略いけるぞ!


「お疲れ様でした」


 ミディアがドロップしたカギを拾って渡してきた。


「さて、転移結晶の前で配信締めようか」


 俺とミディアはカギを使って40層に入り、その転移結晶の前に立つ。


「目標達成!かなり時間はかかったけど、ずっと見てくれてた人も、途中からの人も、見てくれてありがとう!」


:おつかれー

:おつおつ

:この先はほとんど知られてないゾーン

:次回も楽しみにしてる

:お疲れ様


「次回はサプライズもあるから、見逃さないようにな!それじゃまたねー!ばいばーい」


 いつものようにミディアと並んで手を振り、配信停止ボタンを押した。


「……ふう。長時間はやっぱきついなあ」


「戦闘は楽でしたけど、やはりこれだけ長く活動するのはまた違った疲れがでますね」


「今日は何か食べて帰るか?」


「肉はもういいです……」


 そりゃあんだけ食べたからなあ。


「まだ早朝だから、ほとんど店はやってないだろうけど、帰りに何か食べられそうなところ探してみるか」


 俺たちは転移結晶で入口に帰還したのだった。



「待って!」


 換金も終わり、さて帰るかと歩き出したところで声を掛けられた。どこかで聞いたことがあるような……。

 振り返った瞬間、俺のトラウマが蘇る。


「!?」


「魔王様!?」


 ミディアがすぐに俺の前に立ち、相手を警戒する。


「あっ……ごめんなさい!脅かすつもりはなかったの!」


 相手は申し訳なさそうに頭を下げている。そして再び顔を上げた。


「……勇者」


 そう。目の前に、魔王だったときの俺を討った勇者が現れたのだった。


「私はもう勇者じゃない。獅童(しどう)(なぎさ)。これが私の名前よ」


 勇者が名乗ったので、俺も真桐(まとう)(しゅう)と名乗り返す。


「いきなりごめんなさい。でも、どうしてもあなたにもう一度会いたくて……」


「会って、どうするつもりだ?」


 かつて自分を殺した相手に、つい言葉が荒くなってしまう。


「えっと……私、何も知らなくて……魔王が私と同じように召喚された人だったこととか、あなたが演技の練習をしてたとか……」


「……」


「それで……それで……あれ?私、どうしたかったんだろう……」


 困ったようにしょんぼりしている元勇者。どうやら戦う気はないらしいことはわかった。


 魔王としての俺を討ったことを謝らなかったことにも好感が持てた。謝られても困ってしまう。

 あの時はお互いに役目を果たした。それでいいんだろう。


「もし、あなたが迷惑じゃなかったら、一緒に探索したいの。私は、あなたのことをよく知りたい」


「えっ?」


「スキルは微妙だったけど、強さは引き継いでる。すぐに追いつく。だから、お願い!」


 そう言って勇者は勢いよく頭を下げた。


「魔王様、どうされますか?」


 ミディアは困惑しているようだ。俺もなんだけど。


「一応確認しておくけど、敵対の意思は……?」


「あるわけないじゃない!私は自分で命を絶って日本に帰ってきた。あなたに会うために」


 恐ろしいことを言いだした。もしかしてヤンデレなんだろうか。


「嫌なら断ってくれていい。でも、私はあなたと一緒に探索したい。もっとあなたのことを知りたい」


 俺が日本から召喚された魔王だってことを誰かに聞いて、自ら命を絶って俺のところへきた。

 これはちょっと作為的なものを感じるなあ。


「ちなみに俺が召喚された魔王だって誰から聞いた?」


「……神様」


 やっぱりそうか。あいつ、わざとこうなるように仕向けたな。ってことは、断らない方がいいか。


「わかった。次は40層からだから、そこから一緒に探索しよう。もう一人いるけど、それはいいよな?」


「ありがとう!他に誰がいたってかまわないわ」


 俺と元勇者は連絡先を交換した。

 これから急いで攻略を進めるという彼女と別れ、俺たちは帰宅したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ