表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役目を終えた元魔王の現代ダンジョン配信~腹パン魔王に配下の食レポを添えて  作者: やしき丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/26

新宿ダンジョン30層到達耐久配信

 耐久配信は順調に進んでいた。現在は深夜1時を回った辺り。俺とミディアは26層を探索しているところだ。


「モンスターも少し強くなってきたなー」


「おいしいモンスターは少ないですが」


:全部腹パン一発でその感想はおかしい

:おいしいの意味が他の探索者と違う

:今日の最高評価は星3つだもんな

:顔見れるようになったからまずいモンスター食べた時の表情がイイ

:変態もいます


リスナーから見れば同じ腹パン一発に見えるんだろうけど、込めている力はこれまでと全く違う。結構強めに殴らないと倒せないようになってきているのだ。もちろんただのグーパンなので、本気で戦っているとは言えないが。


 ミディアはおいしいモンスターが少ない事が若干不満なようだ。ソルジャービーを始め、これまで食ったモンスターが意外と高評価だったのもあって、今日出会ったモンスターが軒並みおいしくなかったのが気に食わないのだろう。


「まあそう不機嫌になるなって。その内おいしいモンスターも出てくるだろ」


「不機嫌になんてなってません」


:ぶすっとしたミディアさんかわいい

:かっこいいのにかわいい

:機嫌なおしてー

:魔王よ飴ちゃんをあげなさい


 ミディアを宥めながら歩いていると、前方からモンスターが。これはまだミディアが食べたことのないやつだ。

 これを食べて機嫌を直してもらうとしよう。


「ミディア。あいつは『キック』っていうモンスターだ。その名の通り蹴りで攻撃してくる」


「足しかありませんが……」


 ミディアの言う通り、『キック』には足しかない。ブーツを履いた人間の足のような見た目をしている。

 動物型のモンスターが飛び掛かってくるのと同様に、こいつは飛び蹴りをかましてくるのだ。


「意外とうまいかもしれないぞ?」


 ミディアはあまり期待していないようだが、巨大な口を出現させて、ぱくりとキックを捕食した。


「……」


 ミディアは黙って味わっている。時折眉毛がぴくりと動いたりしているので、色々と分析しているんだろう。

 たっぷり20秒ほどキックを味わってから、ミディアはゆっくりと口を開いた。


「期待はしていませんでしたが、良い意味で裏切られました。特にモモが良いですね。ほどよい脂身が甘味を感じさせてくれます。キックは足しかない。つまり、常に全身を使って動いています。そのため全ての肉が引き締まっていて、とてもおいしいです。星4つです」


:星4つキター

:今日初めての星4つ

:ミディアさんちょっとニヤけてるのイイ

:満足気なミディアさんいいね

:かっこいいとかわいらしいは共存できる


 ミディアはキックが気に入ったのか、それ以降出てきたキックは全て食ってしまうようになった。

 ちなみにキックのドロップは革だ。これがものすごく丈夫な革で、探索者の装備などに使われているためかなりの需要がある。『深層には行けないが稼ぎはほしい』という中堅探索者は、キックを重点的に狩ったりしている。


 ミディアがキックしか食わなくなってしまったので、おいしくない判定されたモンスターは仕方なく俺が腹パンで倒していく。

 雑な役割分担だが、苦戦しているわけでもないし、ミディアの機嫌が悪くなるよりはいいかと納得して探索を続行する。そして、


「27層到着!」


 俺たちは26層をあっさり突破して、27層へと到着したのだった。


:はやすぎだろ……

:中層もそろそろ終盤なのに足止めすら許さないじゃん

:立ち止まったのなんてミディアさんが食べてる間だけだぞ

:ほんとに完全攻略あるのか……?


 コメントがざわついている。27層と言えば中層も終盤で、モンスターもそれなりに強くなってきている。にもかかわらず、俺たちは全く苦戦しない。俺たちの配信だけを見ている人の中には、『ダンジョンなんて楽勝なんじゃ?』と錯覚してしまっている人もいるかもしれない。


「もう少しだぞ。朝までには30層に着きたいな」


:このペースならいけそう

:ダンジョンて実は簡単なのか?

:他の配信もみてこい。現実がわかるぞ

:魔王とミディアさんが強すぎるだけ定期


「ちなみに、次回は40層耐久の予定だから、今日の配信が終わったらしっかり寝ておいてくれよ?」


:は?

:39じゃなくて40?

:あのボスも倒すつもりか?

:まじかよ

:みくちゃんが苦労したあいつを?

:自信過剰と言い切れないのがなんとも……


 コメントが滝のように流れて行く。皆動揺しているようだ。みくちゃんが苦労して倒したグレーターミノタウロスをあっさり倒すと宣言したようなものだし、それも仕方ないだろう。


「40層から先はさすがにペースは落ちると思うけど……俺はマジで完全攻略する気でいるからな。見逃さないでくれよ?」


:魔王様かっこいい

:惚れそう

:この強さならいけるかも

:応援してるぞ!

:絶対見逃せない


 コメントもだいぶ肯定的になってきた。強さを見せつけるためにあえて腹パン一発で倒し続けているのも効いてるんだろう。


「私は正直不安です」


「ミディア?」


 いきなりミディアが弱気なことを言い出した。一体どうしたというのか。


「進めば進むほど、モンスターの味が落ちている気がします……。今日に至ってはおいしかったのはキックだけです。深層はまずいモンスターしかいないのではと、今から不安で仕方ありません……」


「そっちかーい!」


:そっちかよww

:これは腹ペコキャラwwww

:ミディアさんはブレない

:逆に安心感あるなw


 ミディアの唐突なボケにリスナーと一緒になってツッコミを入れる。多分ミディアは本気で思っているんだろうけど。


「今日は帰りに何かうまいもんでも食って帰るか」


「そうしましょう!私はうどんがいいです!あのもっちりとした麺と出汁のきいたつゆが最高なんです!やはりうどんはきつねです!油揚げに染み込んだアツアツのつゆが噛んだ瞬間ジュワっと口の中に広がるあの瞬間がたまりません!」


「急にめっちゃ早口になるじゃん……」


:ガチで好きなのが伝わってよき

:は?肉うどんだろ常考

:たぬき派もいます

:戦争か?


 物足りなさそうなミディアに何か食べて帰ろうと提案したら、物凄い勢いでうどんをリクエストされてしまった。徹夜明けになるし、うどんなら丁度良いか。


「じゃあ、ささっと30層までいって、アツアツのうどん食って帰ろうな」


「はい!」


 ミディアのやる気も戻ったようだ。


:ささっと30層

:この二人みてると感覚バグるわ


 コメントで何か言ってるが、気にしないでおく。


 この後も苦戦することなく、俺たちは30層の転移結晶に到着したのだった。


:ほんとに着いちゃったな

:楽勝やったな

:完全攻略できるとしたらこの二人しかいない

:次も期待してるぞ!


「それじゃ、さっきも言ったけど次は40層まで耐久だから、しっかり寝ておいてくれよ?それじゃ、またねー」


 ミディアと並んでカメラに向かって手を振りながら配信停止のボタンを押す。


「お疲れミディア」


「お疲れ様でした」


 探索自体は大したことはなかったが、徹夜したのが少し効いている。


「やっぱ徹夜で運動するのは結構クるな」


「帰る前にうどんを!うどんを食べに行きましょう!」


「わかったわかった」


 ミディアはしっかりとさっきのやりとりを覚えていたようで、早くうどんを食べに行こうと急かしてくる。


 転移結晶で入口に帰還し、ドロップを公式ショップに持ち込んで鑑定待ちをしていると、知らない探索者に声をかけられた。


「あの……魔王様とミディアさんですよね?!応援してます!完全攻略、絶対成し遂げてください!」


 二人組の若い女性の探索者に応援されてしまった。


「ありがとうございます。絶対にやるので、見守っていてください」


 二人と握手を交わし、本日の稼ぎを受け取ってショップを出る。


「人気が出てくると、ああいうこともあるんですねえ」


 ミディアがしみじみと呟く。


「そうだなあ。ちょっと前までは、俺もあっち側だったんだよな……」


 なんだか感慨深い。


「でも、配信している時の魔王様は楽しそうです」


「そうだな。配信は楽しい。始めて良かったと思ってるよ」


 ミディアの視線が生温かい。こんなキャラだっただろうか?


「さて、ミディアさんご所望のアツアツのうどんを食べて帰ろうか」


「はい!」


 熱いつゆで口の中をやけどしそうになって悶えるミディアは、とてもかわいらしかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ