表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役目を終えた元魔王の現代ダンジョン配信~腹パン魔王に配下の食レポを添えて  作者: やしき丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/26

政府の動きと約束(一部三人称視点あり)

「以上が真桐(まとう)(しゅう)の証言です」


 八継(やつぎ)からの報告を聞き、会議室は重苦しい沈黙に包まれた。


『神が国民を拉致し、死ぬことを前提とした役割を強要していた』


 これが表沙汰となれば、社会を巻き込んだ大きな騒ぎになる。誰もがそれを理解したが故の沈黙であった。


「異世界での力を引き継いでおり、スキル『魔王』はその名残りと思われます。なお、本人に悪性は認められませんでした。むしろ、事態の収束を望んでおり、ただの探索者に戻りたいとすら考えておりました」


 危険分子かと思って監視・調査した結果、大問題が飛び出してきてしまった。

 藪をつついて蛇を出してしまったと、誰もが考えていた。


「どのように対応されますか?公表は差し控えるべきと存じますが……」


 会議の出席者である警察庁長官の長谷部が、議長を務める内閣官房長官の梨田(なしだ)に進言する。

 梨田は顎に手をやり、眉間にしわを寄せて思案に耽っている。


「証拠はあるのだったな?不審な入金と、戸籍情報が作られたという」


 梨田が八継に向けて問いかける。


「はい。どちらも公的な書類に不備はなく、『存在すること自体が不自然である』点を除けば、形式上は合法的に処理されています」


「ふむ」


 会議の出席者たちは声を潜め、梨田の言葉を固唾を飲んで待っている。

 たっぷり1分ほどの沈黙の後、梨田は顎から手をどかし、トントン、と机を軽く叩いた。


「物証もなしに異世界を認定するわけにはいかん。よって、神による拉致など存在しない。これが政府としての見解だ」


「――隠ぺいする、ということでしょうか?」


 八継が氷の冷たさを帯びた抑揚のない声で問い返す。


「元より、君のスキル以外に確認する術はないのだろう?同様の事例が頻発するならば何かしらの対応が必要だろう。しかし現状はその一例のみ。公表して、むやみに国民の不安を煽る必要はない」


 周囲の面々が梨田の言葉に深く頷く。

 公表すれば大きな騒動になることは確実。しかし次があるかはわからない。であれば、今は騒ぎを起こさず、当人のケアのみで処理するのが最善。

 多少の違いはあれど、出席者の思惑は一致していた。


「真桐周の処遇については、どうされますか?」


「一度私のところへ連れてきてくれ。その面談をもって真桐周への警戒措置は解く。配信の監視は継続するが、これ以上の議論は不要だろう」


「承知しました。真桐周へ任意での同行を要請しておきます」


「では、今日はここまでとする」


 梨田が席を立ち、会議室を後にする。


(結局なかったことにするのね。まあ、他に例はないし、ちょっとつまらないけれど、妥当なところかしら)


 絶対零度の視線で周囲の出席者を見渡しながら、八継は会議を振り返る。


(国家の動きなんてこんなものかしらね。もう少し面白い展開を期待していたのだけれど)


 八継は書類をまとめ、氷の仮面を張り付けたまま、会議室を後にした。




◇◇◇




「シュウさん!こんにちは!」


「みくちゃん元気だね」


 俺は今みくちゃんと通話している。

 一緒に最深部を目指す約束を取り付けるためだ。


「どうしたんですか?今日は配信してないんですね」


「ああ。実はみくちゃんに提案があって……」


「提案?なんでしょう」


「みくちゃんって今、30層で狩りをしてるだろ?」


「?……はい。それがどうかしましたか?」


 みくちゃんは40層に到達した後、ここ数日は他のトップ探索者と同様、30層で狩りをして稼いでいる。


「それで、俺達が今のペースで攻略していけば、40層までそんなに時間はかからないと思うんだ」


「もしかして……」


「そう。40層から先の攻略、一緒にどうかな?」


「それって、43層の先を目指すってこと……ですよね?」


「もちろん。俺は新宿ダンジョンは50層でゴールだと予想してる」


 予想が外れる可能性はある。あるけど、それでも50層に到達すれば、俺たちがトップだ。


「40層でちょっと狩りをしてみたんですけど、ソロはまだ無理そうでした」


 どうやらみくちゃんは配信外で40層での狩りを試してみたらしい。


「俺たちは1週間以内に40層に到達する。だから……」


「わかりました!」


 俺が言い終わる前にみくちゃんから元気な返事が返って来た。


「前にも言いましたよね、勇者と魔王で暴れましょうって。しかもそれで新宿ダンジョンの記録更新って、面白そうじゃないですか!ぜひやりましょう!」


「ありがとうみくちゃん」


「っていうか……私が苦労した39層もあっさり突破しちゃう前提なんですね」


「あっ……それは、まあ、その……」


「ふふっ。冗談ですよ。本物の魔王様ですもんねー。配信でもまだまだ余裕たっぷりって感じでしたし」


「あはは……」


 ついこの間みくちゃんが苦労して倒したグレーターミノタウルスをあっさり倒せるみたいな言い方は、ちょっと無神経だったな。


「じゃあ、私はシュウさんとミディアさんが40層に到達するまで、少しお休みしようかな」


「それもいいかもね。40層からはモンスターもだいぶ強くなるみたいだし、今の内に休んでおいた方がいいかも」


「お休みの間は、シュウさんの配信をみて応援してますね」


 みくちゃんに見られるとなると、無様な姿は見せられない。これは気合を入れていかなければ。


「じゃあ、40層についたらまた連絡するね」


「はい。待ってます。それじゃあ」


 通話を切って大きくため息をつく。みくちゃん(推し)と話すのは、まだ緊張するのだ。


「無事に約束を取りつけられたみたいですね」


「ああ。……やばい、めっちゃ楽しみなんだけど!」


「勇者と魔王の血を引く子孫はどちらになるんでしょうか」


「まだ早いというか、そういうんじゃないだろ。俺とみくちゃんは」


 ミディアはやれやれといった表情で首を横に振っている。髪を切って顔が見えるようになってから、ミディアが急に感情豊かになったように感じる。


「いいですね。平和な世界というのも」


 穏やかで優しい目をしたミディアがぽつりと呟いた。

 こんな表情は、異世界(あっち)では見たことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ