八継、再び。そして――(掲示板形式あり)
【ミディア】ダンジョン配信総合スレpart4813【さん】
824:名無しのダンジョン配信リスナー
何度でも言うけどミディアちゃんやばくね?
825:名無しのダンジョン配信リスナー
>>824
ミディア『さん』な
826:名無しのダンジョン配信リスナー
>>824
あのかっこよさでちゃん付けはちょっと……
827:名無しのダンジョン配信リスナー
むしろミディア様では?
828:名無しのダンジョン配信リスナー
すまんけど美人度ではぶっちぎりでミディアさん
829:名無しのダンジョン配信リスナー
>>828
はげどう
830:名無しのダンジョン配信リスナー
>>828
同意
831:名無しのダンジョン配信リスナー
ミディアさんの美しさはちょっとやばいわ
832:名無しのダンジョン配信リスナー
魔王のチャンネルなのにミディアさん目当てに見てしまう
833:名無しのダンジョン配信リスナー
あの美貌を前髪で完全に隠していたのか……もったいない
834:名無しのダンジョン配信リスナー
男よけにはなってたよな
835:名無しのダンジョン配信リスナー
髪切る前は完全に不審者だったからなあ
836:名無しのダンジョン配信リスナー
魔王は一体どこでミディアさんを見つけてきたのか
837:名無しのダンジョン配信リスナー
あいつずっとミディアさんのあの美しさを知ってたんだよな
838:名無しのダンジョン配信リスナー
俺あいつ許せねえよ
839:名無しのダンジョン配信リスナー
待て。だがあいつは俺達に公開してくれたぞ
840:名無しのダンジョン配信リスナー
隠し通すこともできたのに公開したのはえらい
841:名無しのダンジョン配信リスナー
じゃあ許すのか?
842:名無しのダンジョン配信リスナー
>>841
羨ましいのでギルティ
843:名無しのダンジョン配信リスナー
あんな美人とずっと一緒なんて許せねえ
「いつも通りの掲示板だな」
「またインターネットをご覧になっていたんですか魔王様」
現在俺は家でエゴサをしている。
SNSももちろんチェックしているが、ダンジョン配信に関することなら掲示板の総合スレが一番手っ取り早い。
「ミディアの話題がほとんどだぞ?お前も見てみるか?」
「やめておきます。恐れられていた私が褒められチヤホヤされるというのは、ちょっとむず痒いです」
異世界にいた時と比べてミディアも変わった。
魔王の幹部だった頃はもうちょっと刺々しい感じがあったものだが、こっちではそういう部分は全く見せなくなった。
今のミディアの方が接しやすくて楽だ。
◇
エゴサを続けていると、家のインターホンが鳴った。
ミディアが出てくれたのだが……。
「こんにちは真桐さん」
やってきたのは八継さんだった。ついこの間来たばかりだが、まだ何か話すことがあるのだろうか。
「今日はどういった用件でしょうか」
「前回はご挨拶だけでしたので、今回はもう少し深いお話しを伺おうと思いまして。具体的には、『異世界』について」
「なっ!?」
ミディアがすっと八継さんの背後に回ってこちらを見ている。その視線は俺の指示があればいつでも八継さんを消せると言っている。
「いきなり過ぎましたね。申し訳ありません。敵意があるわけではありません」
謝罪はしているが、八継さんに慌てた様子はない。
「ミディア、今はいい」
「わかりました」
ミディアが八継さんから離れた。
八継さんにソファを勧め対面に俺が座る。ミディアは立ったままだ。
「それで、異世界について聞きたいとおっしゃっていましたが」
なぜバレているのか。それを知ってどうしたいのか。聞き出さなければならないことが多い。
「先に説明をしておきます。私のスキルは『読心』です。人の心や記憶を読み取ります。ですので、私に虚偽は通じないものと思ってください」
心を読むのか……。俺の記憶を見て、異世界のことを知ったってことか。
「真桐さんは異世界の記憶をお持ちです。それも、神を称する者に拉致された。そうですね?」
「……はい」
誤魔化しても無駄だろう。
「そして、殺されるとわかっていてなお、『魔王』の役割を強要された。そして勇者に討たれて一度亡くなり、再びこちらの世界に帰還された」
「その通りです」
これはもう全部知られていると思った方がいい。その上で穏便にことが収まるように頼むしかない。
「魔王の力は、そのまま引き継がれているんですか?」
「はい。そのままですね」
「スキルが『魔王』と鑑定されたのは、その影響でしょう。異世界にいた間、魔王として侵略行為に加担しましたか?」
「記憶を見たのならご存じのはずでは?俺はほとんどの期間を演技の練習に費やしていました」
「ご本人の口から証言をしていただきたいというのもありますので。……これをお聞きするのは心苦しいのですが、――魔王という役割は、楽しかったですか?」
「ッ!そんなわけないでしょう!?いきなり押し付けられて、お前は死ぬために召喚されたと言われて……ッ!楽しいわけが……ッ」
「落ち着いてください。ただの確認ですので」
思わず激昂してしまった俺を宥めるように言葉をかけてはいるが、八継さんは眉一つ動かしていない。まるで氷と話している気分だ。
「お聞きしたいことはあと1つだけです。報酬はありましたか?」
「それなりのお金と、配下を1人こちらに寄越してくれました」
八継さんの視線が一瞬だけミディアに向けられた。
「調べたところ、不自然な入金が1000万円。税金の処理は行われていました。ミディアさんの戸籍にも不備はありませんでした」
「神がやったことですからね。不備がないようにしたんじゃないですか?」
俺は半ばやけになって投げやりな返答をしてしまう。
「政府としても、不備がない以上、これらについて追及するつもりはありません。そのことについてはご安心ください」
この流れで安心しろと言われて、できるわけがない。
「今回お聞きしたかったことは以上です。もしかしたら、近い内に政府から出頭の要請があるかもしれません。その時はご協力ください」
「いつになったらこの件は落ち着くんですかね?」
「真桐さんが危険な存在ではないと政府が理解すれば、おのずと干渉はなくなるでしょう」
そんな日がくるんだろうか。
「それでは私はこれで」
八継さんは立ち上がり、そのまま帰っていった。
「魔王様。いっそ脅しをかけてしまった方が良いのでは?」
今回の面談でも口を挟まなかったミディアが物騒なことを言う。
だが、よく見えるようになった表情からは、心の底から俺を心配していることが伝わってくる。
「それじゃあ余計に警戒されるだけだろ。俺は平和に生きたいんだ」
俺の心を読めるなら、八継さんだってそのことはわかってくれているはず。
政府からの出頭要請だってなんだっていい。早くこの件を終わらせてほしい。
◇
「ミディア。これからの探索の方針なんだが」
夕食を終えた俺とミディアは、他の配信者のダンジョン配信を眺めていた。
「考えたんだが、探索のペースを上げようと思う」
「今も早いペースだったのでは?」
「そうだな。だが、これからはさらにペースを上げる」
これまでも初心者にしては異常な速度で攻略を進めてきた。
だが、もっと早めたい。
さすがにRTAとまではいかないが、そのくらいのつもりで攻略していこうと思っている。
「何か考えがあるんですか?」
「ああ。俺は新宿ダンジョンは50層までだと踏んでいる」
現在、新宿ダンジョンの最高到達地点は43層。これは先を目指した探索の末にやっと辿り着いた場所だ。
噂ではモンスターも相当強く、とてもではないが通常の狩りなど無理だと判断されたらしい。そのため、現在は先へ進むよりも余裕を持って30層辺りで稼ぐ探索者が多いという。
つまり、現状43層より先へ進もうという探索者はいない。
最先端をいく探索者の限界が今からもう少し伸びれば、最深部はそれほど遠くはないはずだ。
なので新宿ダンジョンは50層までだろうと俺は予想している。
「俺が40層まで進んだら、みくちゃんを誘って50層を目指そうと思ってる」
「勇者と魔王とその配下のパーティですか。面白そうですねー」
そして、俺の予想が当たっていれば。
――50層には、おそらく神がいる。




