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ライブマイグレーション。世界の心臓は『ゴライアスクレーン』で差し替えます

「……マスター、限界よ! 旧サーバー(地上)の物理メモリが完全に焼き付いたわ! あと30秒で、この世界の全プロセスが強制終了シャットダウンされる!」


王都の地面は、もはや「土」ですらなかった。

あらゆる物質が透明なデジタルノイズへと変わり、底の見えない虚無へと崩れ落ちていく。

俺たちが造った「天空大陸」だけが、かろうじて新世界の支柱に支えられ、空中に浮いている状態だ。


「リゼ、データの同期シンクロ率は!?」


「99.9%……! でも、最後の『世界の心臓コア・プロセス』だけが、旧世界に癒着して動かないの! これが移せないと、新しい世界に魂が入らないわ!」


空中に浮かぶ、巨大な光の球体。

あれがこの世界の全演算を司る「心臓」だ。

だが、それは旧世界の崩壊に巻き込まれ、真っ黒なノイズの触手に絡め取られていた。


「癒着してるなら、引き剥がすまでだ。……リゼ、新旧世界の間に『レール』を敷け。俺が直接、心臓を運び出す!」


俺はスキルを最大出力で解放し、新大陸と崩れゆく旧世界の「境界線」を跨ぐように、巨大な鋼鉄の門を召喚した。


「重機召喚――【超大型ゴライアスクレーン】! ライブマイグレーション、最終フェーズ開始!」


現れたのは、造船所の象徴とも言える、高さ百メートルを超える巨大な門型クレーンだ。

二つの世界を跨ぐように設置されたレールの上を、鋼鉄の巨神がゆっくりと動き出す。


「吊り上げワイヤー、全基連結! 『世界の心臓』を、旧サーバーから強制パージ(分離)する!」


ドォォォォォン……ッ!!


数千本のワイヤーが光の球体に絡みつき、重機の油圧が唸りを上げる。

旧世界の「未練」であるノイズの触手が、クレーンの圧倒的な揚力によって一本、また一本と引き千切られていく。


『うおおおお! 世界の真ん中をクレーンで持ち上げてるぞ!?』

『「ライブマイグレーション」って、動かしながら引っ越すことか……!』

『同接百五十万人突破! 頑張れタクミ、世界を落とすな!!』


足元の大地が完全に消失した。

俺のクレーンだけが、虚空の中で「旧世界」と「新世界」を繋ぐ唯一の架け橋となっていた。

ワイヤーが悲鳴を上げ、クレーンの脚が激しい振動で歪む。


「……マスター、今よ! 心臓が離れたわ! 新サーバーのポートに、一気にプラグインして!」


「おう! ――よっこらしょっと!!」


俺はレバーを叩き込み、クレーンの横行モーターを全開にした。

「世界の心臓」を吊り下げたまま、クレーンが新大陸の側へと滑り込んでいく。

そして、新大陸の中央に用意された「巨大なソケット」へと、光の球体を物理的に叩き込んだ。


ガチィィィィィィィン!!


「……接続リンク、確立! 全データ、新世界へ完全移転完了! 旧サーバー、シャットダウンします!」


リゼがエンターキーを力強く叩いた。

その瞬間、背後にあった「旧世界」の残骸が、音もなく真っ暗な闇へと消えていった。


静寂。


直後、俺たちが立っている新大陸に、これまでになく清らかな「光」が灯った。

空には本当の星空が広がり、地表には新しい草木が芽吹き始める。

システムメッセージではなく、世界そのものが「産声」を上げたような、柔らかな風が吹き抜けた。


「……ふぅ。現場の安全確認、ヨシッ。……さて、リゼ。引っ越しそばでも食うか?」


俺が重機の窓を開けてそう言うと、リゼは涙を溜めた目で笑い、俺の胸に飛び込んできた。

配信画面には、新世界の夜明けを見届ける、世界中の住人たちからの感謝の言葉が、止まることのない滝のように流れ続けていた。

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