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旧世界の遺言。外部ストレージ『天空大陸』のプロビジョニングを開始します

王都の空は、もはや「青」を失っていた。

ひび割れた大気からは紫色のノイズが漏れ出し、地上の建物が次々とポリゴンの欠片となって崩れ落ちていく。

世界の寿命――物理限界が、ついに訪れたのだ。


「マスター、全階層の住人の『魂(個体データ)』のパケット化、完了したわ! いつでも移転マイグレーションできる。……でも、肝心の『移転先』がまだ空っぽよ!」


リゼが強風の中で叫び、上空を指差す。

そこには、俺がクレーンで吊り上げた巨大な「基盤」が浮いているが、数百万人の生命を受け入れるにはあまりにも小さい。


「わかってる。今からそこに、世界一デカい『外部ストレージ』をぶっ建てる。……リゼ、座標固定ロックオンしろ。一秒も止まらない『連続打設』を開始する!」


俺は地上に、十数台の【超大型コンクリートポンプ車】を円陣状に展開させた。

その中心には、天高く伸びる鋼鉄の型枠が、巨大なエレベーターのように鎮座している。


「重機スキル――【スリップフォーム・システム】。工事開始デプロイ!」


ドッドッドッドッ……!!


複数のポンプ車が同時に咆哮を上げ、魔力を練り込んだ特殊強化コンクリートを、空中の型枠へと送り込み始める。

型枠はコンクリートが固まるのを待たず、油圧ジャッキでゆっくりと、だが確実に上昇し続ける。

1分間に数メートル。止まることのない「成長」を続ける巨大な柱が、王都のど真ん中に、天を貫く『新世界の支柱』としてそびえ立っていく。


『すげえ……空に向かって建物が「生えて」いってる!?』

『これが24時間ノンストップの「連続打設」か……。圧巻だわ』

『同接百二十万人突破! 全人類が「新築の世界」を見守ってるぞ!!』


だが、順調に進む工事の前に、空を裂いて「それ」が現れた。

銀色に輝く、巨大な龍の形をした光の塊。

この世界の古い防衛システム――『レガシー・ファイアウォール』だ。


「警告。未承認の大規模データ・エクスポートを検知。……これより、不正コピー(生命の移転)を強制遮断ドロップする」


「……っ、マスター! 奴、せっかく建ててる支柱を『不正なバッファ』として消去しようとしてるわ!」


ファイアウォールの龍が、その巨大な顎を開き、高出力の「消去レーザー」を俺たちのクレーンに向けて放とうとする。


「不正コピーだと? 違うな、これは『インフラの更新』だ。……リゼ、あいつの口の中に『パッチ』を叩き込め!」


「了解、マスター! 奴の攻撃パターンの隙間に、アタシの『偽装アクセス』を割り込ませるわ!」


俺はタワークレーンのレバーを極限まで倒し、フックに吊るした「数万トンの魔力遮断材(シール材)」を、ファイアウォールの喉元へと叩き込んだ。


ガギィィィィィィィン!!


「……っ!? 命令実行エラー。……口内が……物理的に閉塞している……!?」


物理的な「パッチ」によって攻撃を封じられたファイアウォールが、空中で悶え苦しむ。

その隙に、俺のコンクリートポンプ車はさらに出力を上げ、新世界の土台となる「天空大陸」の床面積を、一気に数キロメートル四方へと拡張させた。


「……ふぅ。現場の安全確認、ヨシッ。さて、リゼ。基礎工事は終わったぜ。あとは……全データの『書き込み』を開始してくれ」


俺が操縦席から空を見上げると、そこには夕日に照らされた、真っ白で広大な「新世界」の地平線が広がっていた。

世界の崩壊まで、あとわずか。

俺たちは、崩れゆく旧世界を背に、未だかつてない「引っ越し作業」の最終段階へと突入した。

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