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ハードウェアの寿命。壊れる前に『マイグレーション』を計画します

Server-04との接続に成功した俺たちを待っていたのは、救いようのない「異世界の光景」だった。

回線を通じて送られてくる画像データ。そこには、空がひび割れ、大地がテクスチャの剥がれたポリゴンのように透けて見える、崩壊寸前の世界が映し出されていた。


「……マスター。わかったわ、ガベージコレクションが起きてた本当の理由が」


リゼの指が、かつてないほど激しく震えている。

管理者権限で見えてしまったのは、この世界の「物理レイヤー」の状態だった。


「これ、ソフトのバグじゃない。物理的な『ハードウェアの寿命』よ。この世界を支えている基板そのものが、数万年の稼働で熱劣化して、もうすぐ完全に焼き付くわ。……修正パッチじゃ、もうどうにもならない」


「直せないのか」


「……ええ。OSを入れ替えても、土台のハードが物理的に壊れるのを止める魔法なんて、この世界のコードには存在しないわ」


『ま、待てよ。世界が物理的に壊れるって、どういうことだ!?』

『俺たちの家も、家族も、全部消えちまうのかよ……』

『同接百万突破。……笑えねえぞ、これ』


配信のコメント欄が、初めて「恐怖」で埋め尽くされた。

今まで重機で何でも解決してきた俺たちの前に、初めて現れた「直せない現場」。

だが、俺はクレーンのレバーを握り直し、モニターに映る崩壊した世界を睨みつけた。


「リゼ。ハードがダメで、修理も効かない。……なら、やることは一つだろ?」


「……え?」


「『リプレース』だ。今のサーバーが燃え落ちる前に、新しい、もっとデカくて頑丈なサーバーを隣に建てて、中身(住人)を全部そっちに引っ越しさせる。……世界規模の『大規模移転工事』の始まりだ」


リゼの目が、一瞬で技術者の輝きを取り戻した。


「……そうね。データの整合性を保ったまま、全生命体の個体情報を新サーバーへ移転させる。……正気じゃないわ。でも、マスター。そんな巨大な『受け皿』、どうやって造るつもり?」


「地上だけじゃ足りない。なら、空に造ればいい」


俺はスキルを限界まで解放し、王都の遥か上空、雲を突き抜けた成層圏の座標を指定した。


「重機召喚――【タワークレーン・クライミング仕様】、および【高所作業プラットフォーム】!」


王都のど真ん中に、天まで届く巨大な鋼鉄の柱がそびえ立った。

超高層ビルを建てるための重機が、今度は「新しい世界そのもの」を空中に吊り上げるための支柱となる。


「世界を修理するのは終わりだ。これからは、世界を『新築』する。……リゼ、全サーバーに通知しろ。――『これより、全生命体の強制マイグレーションを開始する。工期は世界の崩壊までだ』ってな」


俺は重機のハッチを閉め、最上階の操縦席へ向けてクレーンを上昇させた。

第11話から始まった俺たちの「現場」は、ついに世界の理を超え、新しい宇宙の創造へと足を踏み出した。

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