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マルチサーバー接続。断線した『ゲート』は横穴ボーリングで繋ぎ直します

「……バカな、ありえん。この『隔離環境サンドボックス』、物理層の強度が異常すぎる。外部からの救助信号パケットすら通さないというのか!」


地盤改良機で固めた「光の檻」の中で、監査官の男が絶望に顔を歪めていた。

リゼはその檻の外で、悠然と端末を操作し、奴の法衣から漏れ出る「データ」を次々と吸い上げている。


「無駄よ。ここはアタシたちが『管理者』として定義した絶対安全圏だもの。……さて、面白いことがわかったわ。マスター、聞いて」


リゼが解析画面を俺に向けた。

そこには、この世界を中心に、クモの巣のように広がる広大な「ネットワーク図」が映し出されていた。


「この世界は、単一の存在じゃない。膨大な数の『サーバー(世界)』が連結されたマルチサーバー環境の一つ、Server-05に過ぎないわ。……でも、見て。他のサーバーに繋がるゲートが、物理的に『断線』させられてる」


「断線? 誰がやったんだ」


「わからない。でも、誰かがこの世界を隔離するために、世界間の『通信ケーブル(魔力ルート)』を物理的に引き抜いた跡があるわ。今、アタシたちがいる座標の真下に、その『切れた端子』が眠ってる!」


(物理的な断線か。……なら、繋ぎ直すのがインフラ屋の仕事だろ)


俺は新たな重機を、地表へとデプロイした。


「重機召喚――【横穴ボーリング機(HDD)】。他世界への『回線敷設工事』を開始する!」


現れたのは、斜めに傾いた長いドリルを備えた、地下を掘り進むための特殊重機だ。

通常の縦穴とは違い、地上から目的地まで正確な軌道で横穴を通し、通信線や水道管を敷設するための精密機械。


「リゼ、他サーバーへの『IPアドレス』――いや、空間座標を特定しろ。ドリル先端に魔力ファイバーを連結する。そのまま別世界まで突き通してやるぜ!」


「了解、マスター! ターゲット、隣接するServer-04の『受信ポート』に固定。……空間の歪みが激しいわ、慎重に掘り進めて!」


ギュリリリリリ……ッ!!


ボーリング機のドリルが、空間の境界線へと食らいつく。

ドリル先端のセンサーから送られてくる情報を、リゼがリアルタイムで修正し、俺がレバーでミリ単位の進路調整を行う。

世界の壁という「分厚いファイバー」の中を、俺たちのドリルが一本の『新しい回線』として貫いていく。


『きたあああ! 世界と世界を「有線」で繋ぐのか!?』

『「横穴ボーリング」で別世界へハッキングとか、スケールが狂ってるww』

『同接九十五万人突破! ついにマルチサーバー接続、くるぞ!!』


配信の熱狂が最高潮に達した瞬間、手元のレバーに確かな「手応え」があった。

ドリルが世界の果ての「壁」を突き抜け、虚空を越えて隣の世界の端子へと到達したのだ。


「……ヒット! Server-04との物理リンク、確立したわ! 今、アタシの管理者権限をこの回線で『同期シンクロ』させる!」


リゼがエンターキーを叩いた瞬間、ボーリング機が打ち込んだケーブルを伝って、膨大なデータが双方向に流れ出した。

目の前の空間が波打ち、そこには「別の世界」の風景――鬱蒼とした森と、巨大な遺跡が眠るServer-04の姿がホログラムのように映し出された。


「……ふぅ。現場の安全確認、ヨシッ。これで世界は『オフライン』じゃなくなったな」


俺が汗を拭ったその時。

新しく繋がった「回線」の向こう側から、この世界の住人ではない「誰か」の困惑した声が聞こえてきた。


『――こちら、Server-04管理部。……誰だ? 未承認の『物理回線』を直接繋いできたバカは!?――』


「……あ、マスター。どうやら、向こう側の『現場監督』を怒らせちゃったみたい」


俺はニヤリと笑い、ボーリング機のエンジンを再びふかした。

新しい現場が見つかったなら、挨拶に行くのがプロの礼儀だ。

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