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突入前夜

感想をいただきました。

ありがとうございます!

すごく嬉しいです!

「ただいま、アリス」


「早かったですね、マスター」


「でも色々あったよ」


「色々ですか?」


「うん、色々」



 元の山の根元にある道へと戻ると、アリスは荷物の横で体育座りをして待っていた。


 レイはその横に行き、並んで体育座り。


 そのまま街で起きたことを話した。



「――――――そのようなことが。マスターは、ロムニスと言う者とお知り合いで?」


「まあ、そうなるかな」



 レイは少し過去を思い出しながら語る。



「俺は昔、一年間戦争に参加してたんだよ。アリスと同じ。俺は生まれた時から魔法を二つ使えてさ、天才なんて呼ばれる時期もあったから、師匠の元を離れて直ぐに、追加戦力として軍に呼ばれたんだ」



 この世界における魔法とは、少し珍しい才能のようなもの。

 一つの小さな村に、五年に一人使えるものが生まれれば良いと言う程度の珍しさだ。


 それをレイは、誕生直後から二つ使いこなせていた。


 通常は一人の人間が操る魔法は一つ。

 聖職者などが使う、神から授けられるような魔法や、代々家に伝わる魔法などは例外として、一人の人間が二つ以上の魔法を操るなど、百年に一度の珍事だ。



「空間転移と炎の魔法―――両方とも師匠に鍛え上げられてたからそこいらの魔術師以上には使えたし、空間転移があるから何か起これば直ぐに本部へと帰還できたから、俺は直ぐに最前線に配属させられた。そこで敵となったのが、ロムニス・ロッチェロだよ」


「マスターも、戦争をしてらっしゃったのですね」


「ああ―――そこでちょっとポカしちゃってね。大怪我をしたり、炎の魔法をロッソに預けたりしてたんだ」


「ポカですか…………」


「ポカなんて可愛い言い方とは見合わない大ミスなんだけどね…………成果を上げたから許されたけど、あの時ロムニスに勝ってなければきっと、敗戦の大戦犯だった」


「ロムニスという者に勝ったのならば、なぜ今その名前が上がるのでしょうか…………」


「それが分からない。ロムニスの魔法はあの状況から逃げ出せるようなものじゃないはずだし、もし逃げる手段がある魔法だったとしても、もうそれを使うほどの魔力は残ってなかったはずだ」


「魔力…………ですか?」


「うん魔力」


「魔力というと…………その…………なんでしょう」


「ああごめん。魔力って千年前はなかったの?」


「名前を知ってはいるのですが……前のマスターには縁が無かったらしく、詳しく知る機会がなかったもので」



 アリスは少し恥ずかしそうに言った。

 レイはそれを見て、ほんの少しの優越感に浸った。



「魔力っていうのは、魔法の動力源。体力があれば体は動くし、魔力があれば魔法が動く。魔法を使う度にその魔力を消費して、消費すればするほど回復に時間がかかるんだ。その魔法を円滑に発動する為に、強力な魔法を使うときは詠唱なんかをするんだよ。言葉で魔力の通りを良くしてやるんだ」


「たまに聞くあの長い言葉は、そんな意味があったのですね」


「戦争のときなんかは、兵の士気を上げる為に使ったりもしたよ」


「中々に理に叶っていたのですね」


「そう、きたーやるぞーって、詠唱が聞こえてくると、奮い立つんだよ」


「マスターも詠唱が必要な魔法をお使いになられるのですか?」


「うん、必要ならね」




 ●●●●●●




 道端で火を焚いて夜を明かし、空に日が上った頃には歩き始める。 


 もう途中の街には寄らない。

 魔術師の男が何か仕掛けていた場合、レイ達の到着が原因で前の街の様なことが起こりかねないからだ。


 七日ほど歩くと、王都の城壁が遠目に見えた。

 その日は空も暗くなり始めていたので、少し離れた位置で火を起こし、野宿することとした。



「明日昼過ぎに王都に入ろう。俺達だけなら朝一でもいいとは思うけど、前の街みたいに王都もなってたら戦闘は避けて通れないだろうし、昼過ぎじゃないと」


「昼過ぎだと何かあるのでしょうか? 戦闘するだけなら、王都まで歩くだけでも体は温まっていると思いますが…………」


「朝だと多分、師匠が起きてないんだ」


「前に話していただいたお師匠様ですね」


「そう―――例えば王都が完全に敵の手に落ちてたとして、師匠は無事だと思う。多分師匠は俺が来てる事も分かってると思うから、生活リズムはいつも通りとして、起きるのは遅くても昼食時より少し後だ」


「了解いたしました。それではマスター、王都に入った後の行動はどういたしましょう?」


「考えてるよ」



 そう言うと―――身近な位置に落ちていた木の枝を拾って、それで地面に二重の円と、その中に二つの点を描いた。



「まず、外側の円は城壁で、内側の円が貴族街と、庶民の生活区域を分ける壁ね。そして、外側の壁の側(そば)にある点が師匠の家―――王都に入って戦闘になろうとならなかろうと、最初はここを目指す。次に、真ん中の点。これは王城、王都が陥落してた場合は、師匠とここを目指す事になると思う」


「王城―――王の意見というものは、どの時代も重大な意味を持つのですね」


「いや、王族は死んだか捕まってると思った方が良い。俺達がやるのは、城の地下牢に捕まってる、大罪を犯した囚人達を放つんだ。一度魔術師達が作った地上の混乱状態を―――囚人達を使って更に混乱させ、ぶち壊しちゃうんだ」



 そう言うと、アリスは少し悩ましそうな表情を浮かべて、円の中心の点、王城の位置をまじまじと見つめる。



「王族の血が絶えているというのは、避けたいですね…………」


「こればっかりは既に終わった事だろうし、あとは祈るしか出来ないかな」



 レイが言うと、アリスは王城の方へと視線を向けて、星に願うように目を閉じた。


 それを見たレイは長くなりそうだと判断し、早々に地面に布を広げて、横になる。

 明日に対して少しの緊張はあるが、目を閉じた瞬間脳は眠り落ちて、緊張など忘れ去った。

読んでくださりありがとうございます!

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