第11話:影の守護者
「相談、ありがとう」
「どういたしまして」
今日もまた一人、誰かのお悩みを解決する。
相談がうまくいったときはとても嬉しい。
一人でできる趣味こそ無いけど、嬉しい、楽しい成分は、そこそこ補給できる。
すこし屋上でのんびりしてから、生徒会室へと帰ろうと屋上の扉を開けると、
「おっと」
「ひゃっ」
同じ生徒会役員の三島先輩と鉢合わせした。
「び、びっくりした・・・」
「いやー、ごめんごめん。驚かせるつもりは無かったんだけどね」
いつも通りの爽やかな笑顔で先輩は言う。
「せ、先輩は何でここに?」
「いや、相談者が帰った後、しばらく待っても六依さんが来ないから、ちょっと心配になってね」
「あ、その・・・ちょっとのんびりしてただけです・・・」
特に理由はなかった辺り、とても恥ずかしい。
「ならいいんだけどね」
先輩、私の事心配してくれてたんだね・・・
道理でお悩み相談の前後辺りで、三島先輩と出くわす時が多い訳だ。
・・・あれ?
「先輩」
「うん?」
「私の心配してくれるのは凄いありがたいんですけど、先輩自身の仕事って大丈夫なんですか?」
お悩み相談は、正式な生徒会の活動とは言え、私個人が好きにやっているに過ぎない。
実際スケジューリングは私に一任されてるしね。
だから、私を心配して、近くに居てくれるのは嬉しいけど、それで仕事が溜まってしまうのは忍びない。
「あぁ、それについては心配要らないよ」
先輩は気楽な調子のときに両腕を頭の後ろへ持っていく癖がある。
今もそんなポーズだ。
「今の俺の仕事は、六依さんのお悩み相談を見守る事だからね」
「え?」
今何て?
「いつも六依さんが無事にお悩み相談を終えられるかを見届けるのが今の仕事って事だよ」
「そっ、そうなんですか!?」
私の知らない所でそんなことが行われてたなんて・・・
でもなんで?
「六依さんさ、このお悩み相談、自分一人さえ居れば問題ないって、そう思ってるでしょ?」
「・・・はい」
正直に答えた。
私さえ居れば問題ないというより、私以外には聞かれたくないと思ってる人も沢山いるので、私以外居てはいけないんじゃないかという思いもある。
「それはさ、ちょっと楽観視し過ぎじゃないかって、俺と一条先輩は思ってたんだよね」
「そ、そうですか?」
「言っちゃえばさ、お悩み相談って、現役の女子高生と、誰からも見られない、聞こえない、秘密の場所で二人っきりになれる場所作りって事でしょ?」
「そっ、そんな如何わしい言い方しないでくださいよ・・・」
なんか途端に変な会合みたいな雰囲気になった気がする。
しかし三島先輩は止めなかった。
「まぁ六依さんとしてはそんな如何わしいコトするつもりは一切無いよね?」
「当然です!」
「でも、相手もそうとは限らないんだよ」
先輩の声のトーンが明らかに下がった。
いつものお気楽な雰囲気は消え去っている。
「お悩み相談と偽って、六依さんの目の前まで行って、そこから"そういうこと"に及ぼうと考える奴等だって、居るかもしれない」
「・・・!」
「文化祭の直後、六依さんのもとに、お悩み相談に便乗して、コスプレの話を出してきた人が出てきたって、言ってたよね?」
「・・・・・・はい」
それは間違いじゃない。
もう一度着て欲しいとか、ポーズとって欲しいとか、相談ついでに言ってくる人はそこそこいた。
「あれの、もっと乱暴なバージョンが、出てこないとも限らないって事さ」
反論は出来なかった。
三島先輩の言うことは、何一つ間違ってない。
学校の屋上なんて、普段からお悩み相談くらいにしか使われてないし、
もし相談と嘘をついて、襲われでもしたら、私はどうしようもない。
声を上げればなんとかなるかも知れないけど、校庭から屋上まで、駆け上がってる間に逃げられてしまうだろう。
・・・
「あっ、でも、相談にはLINEアドレスと生徒氏名が必要ですよ?」
あちらもある程度の個人情報を渡してるからそうそうそんなことが起こるはずは・・・
「毎回生徒氏名が、実際に在籍してるものか確認してる?」
「・・・いえ・・・」
めんどくさくてそこまではしてなかった。
一条先輩がいれば、
「ああ、彼は○○部だね」
って、即教えてくれたけど。
「それじゃあ嘘の名前を書かれたら偽のLINEアカウント使われて騙されちゃうよ?それに、毎回確認してたとしても、会ってみないと本人かどうか確認出来ない今のシステムじゃ未然には防げない」
「・・・・・・ですよね・・・」
私、今までそんな危険な事してたんだ・・・
「行き過ぎた信頼は、たった一回の裏切りで、簡単に崩れ去るんだよ」
三島先輩の真剣な声は、私の心の奥底に、強烈に突き刺さってくる。
「ま、その為に俺らが居るって思ってくれればいいよ。見張りが居るってだけでもかなりの牽制になるしね」
が、先輩はまたからりと何時もの明るい声へと戻った。
「あの・・・それって、いつから・・・?」
たまに見るなぁとは、思ってたけど、全然気付かなかった。
「初回からだよ?一条先輩と俺で交代でね。先輩が卒業したあとはずっとやってるけどね」
一条先輩と、三島先輩の隠れた努力と、お悩み相談のリスクを知った。
やっぱり、私にはまだ知らないことが山ほどある。




