第7話:最初の一頁
日記帳を買って帰宅した私は、
まず最初に、日記帳の最初の方にある人物情報ページを作ることにした。
そこには、顔写真を貼るスペースもあったので、鈴とお母さん。あと、自分自身の写真を撮ることにした。
スマホのカメラを自撮りモードに切り替えて、私自身を映す。
・・・
こういうのってどんな顔がいいんだろう。
笑った顔でいいのかな?
カメラに映る半笑いの私を見ながら、ベストな映りを探っていると、
「ただいまー・・・って、何してんの?自撮り?」
部活動を終えた鈴が帰ってきた。
「あ、おかえり。これね、日記に載せようと思って」
「日記に自撮り?インスタでも始めた?」
「あ、いや、そうじゃなくて・・・」
私はさっき買ったばかりの日記を見せ、日記を書く目的を話した。
「思い出を忘れないようにねぇ・・・お姉ちゃんが言うと重みが違うよね」
それは否定しない、やっぱり失って初めて分かる物ってあるんだろうし。
「って訳でね、人物情報の欄に載せる写真を撮ってたの」
「ふーん。じゃ、わたしが撮ってあげるよ」
「え、じゃあ、お願いね」
と、鈴による私の撮影が始まったが・・・
「なんか笑顔がぎこちないよー」
「こ、こう?」
「もっと変になった」
「ええー?」
とにかく私は、写真に写る時の顔作りがヘタクソだった。
「ほら、こういう感じにさ」
鈴がキラリと眩しい笑顔を放つ。
しかも、そのまま私のスマホで流れるような自撮りを行った。
「あれだよ、笑うっていうよりも、楽しそうオーラを出すって感じ」
「楽しそうオーラ・・・」
まずその存在がいまいちわからない。
「例えば・・・お姉ちゃんの趣味って?」
「趣味?」
私の趣味・・・・・・
・・・なんだろう。
目覚めてからもうすぐ二年。
初めの頃は、身体の回復と、高校合格に必死だったし、
中盤は、ついに始まった高校生活の楽しさに浸っているだけだったし、
後半はお悩み相談の事ばっかり考えてた。
「・・・・・・趣味かぁ・・・・・・」
「無いの?」
「これだ!・・・って、いうのは、無いかも」
「そっかー・・・」
鈴は腕を組んで、まるで自分の事のように悩みだす。
「お姉ちゃんの趣味も、いつか作らないとね。楽しい人生の為に」
「そうだね・・・」
趣味かぁ・・・今の所日課になってるのは散歩くらいかなぁ
体力回復の為にやってる事だけど、あれは趣味でいいのかな・・・
「ま、それはまた考えるとして、今は写真撮らないとね・・・そうだなー・・・何か嬉しかった事とかはあるでしょ?きっと」
「嬉しかったこと・・・」
高校に合格した時、初めての友達が出来た時、誰かのお悩みを解決した時、
皆で遊びに行った時・・・うん。嬉しかった、楽しかった事ならいっぱいある。
「ちょっとそれを思い浮かべてみてよ」
「うん」
やっぱり一番うれしかった事って言ったら・・・
最近だと、
・・・慎二君と二人でスイーツバイキングに行った時か・・・
それか、本庄さんと仲直りした時の事・・・かな?
そんなことを思い浮かべながら、カメラのレンズを眺めていると、
カシャッ!
と、カメラのシャッター音が響く。
「おっ、良い感じのが撮れた!」
そう言いながら鈴は私のスマホを見せつけてくる。
そこには、少し赤らんだ頬をした、柔らかな笑顔を浮かべた私の姿。
「・・・私こんな顔してたんださっき・・・」
「嬉しそうな顔でしょ?」
「まぁ・・・ね」
とりあえず、二人分の写真は手に入れた。
今日は、あとは、お母さんとお父さんの写真を撮って、情報欄を作ろう。
お父さんはまだ仕事から帰ってきてないし、
お母さんも買い物に行ってるし、先に自分と鈴の分を作っちゃおうか。
部屋に戻り机に向かった私は、早速買ったばかりの日記帳を開く。
人物情報の欄は、名前・顔写真・自身との関係・どんな人か、
に分かれている。
記念すべき一人目は、六依由依。私自身。
自身との関係は・・・自分・・・って書いておこう。
どんな人か・・・
そこには、私がここまでに至った経緯を書いておいた。
事故に逢ったこと、記憶喪失になったこと、体が成長してないこと、色んな人達の助けがあって、高校に入れた事。そして、生徒会に入り、お悩み相談をしていたこと。
ここまで書けば、十分だよね。
次は鈴。
関係は、私の妹。
どんな人か、鈴は・・・
テニス部に入ってて、5つ下だけど、私と同級生。
鈴はいつも明るくて、いつも私のサポートをしてくれる。
たまに怪しい時もあるけど、大事な味方で、相棒。
目覚めたばかりの、何も分からない頃から、今日まで、ずっと一緒にいる、私の大切な妹。
・・・うん。こんなところかな?
5月28日
天気、晴れ
私は日記を書き始めました。
私が思い出を忘れないために。
これから毎日、その日に逢ったことを、丁寧に書き記していきます。
今日は、日記を買いに行ったとき、星野さんと話したり、私の趣味が特に無いことが判明したり、写真写りが苦手な事が分かったり、そんな一日でした。
まだまだ私は、課題だらけのようです。
記入者:六依由依




