第4話:私の後輩
PeacE.のライブも終わり、
またいつもの平和な日々が始まる。
なんてことはない。
新年度開始直後は、様々な出来事が立て続けに訪れる。
今日は、生徒会に、新しいメンバーが増える日だ。
去年、私が生徒会室に入った瞬間、目の前には一条先輩が待ち構えていて、とてもビックリしたことを思い出した。
今年はそんなことをする人は居ない。
「さーて、今年は何人きてくれるかなー?」
壁に寄りかかりながら三島先輩が陽気な雰囲気で呟く。
「蓮さん、仕事してください」
それを会長がピシッと制止する。
「いいじゃん?新メンバー来るまでのドキドキの時くらい楽しくいこうよ」
「はぁ・・・」
会長がため息を吐いた瞬間。
ドアが叩かれる。
「はーい」
一番ドアの近くにいた星野さんが返事をすると、ドアが開かれて、
二人の生徒が入って来た。
一人は、前に私が仕事紹介をした男子生徒。
もう一人は、見たこと無い女子生徒だ。
「おっ、君たちが入会希望者だね?」
三島先輩がさっきのテンションを維持したまま話しかける。
まぁ、三島先輩いつもこんなだけど。
「は、はい」
「ま、締め切りまではあと30分あるから、それまで待ってようか」
30分後。
新しい生徒は来ることは無かった。
「二人・・・例年通りってところね」
「じゃ、皆で自己紹介と行こうか」
「ええ、生徒会長は私。三年生の須藤 千華です。皆さんよろしくお願いします」
「同じく三年の、三島 蓮。会計だよ。みんなよろしく」
三年生の二人が先導していく。
「次は二年生、お願いね」
「あっ、はい」
のんびり聞いてる場合じゃなかった。
私も自己紹介しないと。
「副会長。六依 由依です。皆、よろしくね」
初めて、後輩に自己紹介するわけだけれども、これで合ってるだろうか。
「書記の星野 八恵です。よろしくお願いします」
「東原 浩司。事務だよ。よろしくね」
名前と役職だけの簡単な自己紹介。
でもそんなもんだよね。
「じゃあ、次は一年生だ」
三島先輩がそう告げ、男子生徒の方が自己紹介を始める。
「はっ、はい。えぇっと、一年生の、木田 誠也です」
緊張した面持ちで自己紹介をしている。
去年の私もこんな感じだったのかなぁ
「同じく一年の、上谷 藍です。よろしくお願いします」
女子生徒の方も紹介を終える。
うっ、この二人・・・私より身長高い・・・
私は自己紹介とは関係ないところでショックを受けていた。
「さて、皆さん自己紹介が終わった所で、一年生の皆さんに、言っておきたい事があります」
会長がすっと立ち上がり、壁に貼られている生徒会会則の前まで歩いていく。
「それは、これ。生徒会会則です。これは、生徒会としての心得や約束を記したものです。生徒会はいろいろな面で、生徒全体を統括し、牽引する立場にあります。一年生といえど、影響は無い訳ではないので、あまり問題は起こさないください」
去年も一条先輩が言っていた。生徒会という立場の重さ。
「あなたもですよ、六依さん」
「わ、私?」
突然私にも話を振られる。
「あまり大事には至らなかったからいいものの、生徒会の立場にある者が生徒と喧嘩は、避けるように」
「あ、そ、そうですね」
本条さんとのアレか・・・
あの時は我慢ならなくてつい感情的になっちゃったけど、そうだよね。私は立場としては生徒会だもんね。
一条先輩は、腕章を付け、生徒会という立場であるうちは、そこに権限と責任が発生する。
って言ってたけど、私の場合は、校内新聞やお悩み相談を通じて、生徒会として私の顔が有名になり過ぎてたから、腕章が無くても、生徒会である事がバレバレだった。
おかげでいじめとか、そういうのには無縁だったけど。
生徒会役員に嫌がらせとかしたら、即問題になるしね。
「と、言うわけで、一年生は、今日はこれで終わりです。実際の仕事は来週以降ですね」
一年生が帰った後は、私たちの仕事だ。
各部活動の、新規メンバーをリストアップしたデータを回収しに向かう。
場所はテニス部。
先輩となった鈴を見に行く。
「あ!お姉ちゃん!」
私がコートに行くと、鈴は目ざとく私を見つけて、駆け寄ってくる
「どう?後輩はできた?」
「もちろん!テニス部は活発だからねー」
得意気に胸を張る鈴。
「ふーん。鈴、ちゃんと教えられる?」
「一応わたしだって一昨年は先輩やってたからね?」
頬を膨らませるように、鈴は不満げに言う。
「あ、そっか。ごめんね」
私以外は中学生の時に先輩の経験があるんだと、
中学の記憶が無い私は、ついその事実を忘れてしまう。
「どっちかって言うとお姉ちゃんの方が初めての先輩なんだからちゃんとしないとね」
「は、はい・・・」
「なんで私にまで丁寧な口調になってんの?」
「え?いやー・・・」
何て言うか、「先輩」の先輩って感じがして・・・
新しい生徒会。私は先輩としてやっていけるかな?




