第1話:新学期
四月。
学校生活は二年目を迎え、
私は正真正銘、心機一転新たな一年を開始する。
「おはよう」
今年も鈴と登校する。
「あ、由依と鈴じゃん。おはよー」
昇降口で朱音さんと出会う。
朱音さんとの挨拶もお馴染みだ。
教室へ向かう途中、一人の男子生徒とすれ違う。
「あっ、おはよう、慎二君」
「おう」
バレンタインを機に仲良くなった慎二君。
クラスは違うけど、お昼休みはたまに一緒に昼食を食べる。
後は、生徒会に所属している星野さんと東原さんが私の友達。
そして、二年生からは、さらにもう一人。
「おはよ、由依」
「おはよう、未来ちゃん」
クラスメートの本庄未来さん。
アイドルユニットPeacE.で、第5期メンバーのミライとして活躍中だ。
学期末に色々あって、お互いに喧嘩が原因で、私はお悩み相談の顧客を、
本庄さんは、アイドルとしての学内のファンを、かなり失ってしまった。
そして、二人仲直りして、やり直していこうと誓った。
「仕事は順調?」
「うん、来週にはライブもあるしね」
「そうなんだ、行ってもいい?」
「いいけど・・・体力大丈夫?」
「まぁ・・・頑張るよ」
「あんた私に無理すんなって言ってきてんだから、あんたが無理して倒れたらぶっ飛ばすよ?」
「あ、あははは・・・・・・」
私は、本条さんの、友達として、ファンとして、向き合っている。
相変わらず口調は強いけど、いままでのギスギスとした関係はさっぱり消え去った。
まだまだ二人とも元の状態には戻れてないし、一度失った信用は取り戻すのは難しいって聞くけど、この調子で、なんとかしていきたい。
「で、新聞部の力を借りようと思う」
本庄さんが言う。
昼休み。
今までの三人に加え、本庄さんを加えた四人で、私たちの印象回復作戦会議をしていた。
原因の二人は既に仲直りしているが、その事実はまだ広まりきってはいない。
「新聞部かぁ」
「そう、事実を伝えるなら、やっぱりメディアを頼るのが一番だと思うんだよね」
「私も使った事あるよ」
お悩み相談を開設する際に、私の事情を全て、校内新聞で載せた。
「あ、そういえばお姉ちゃんそんな事してたね」
「うん。新江先輩とは面識もあるし、頼めばなんとかなるかも」
「由依の人脈広いよね」
「生徒会とお悩み相談のお陰だね」
お陰で連絡先の数が凄い事に。
「じゃあ、放課後新聞部行ってみようよ」
「ああ、あれの事ね」
放課後新聞部へと赴いた私たち。
「あれ?知ってるんですか?」
「まぁね、現場は抑えられなかったけど、大体の事情は抑えてるよ」
部長になった新江先輩は、既に事のあらましを知っているようだ。
三年生になっても、ゴシップ精神は変わらないらしい。
「仲直りしたのは知ってたけど、想像以上だね。協力して信用を取り戻そうなんて」
「まぁ・・・色々ありましたから・・・」
主に屋上で。
「そだねー・・・でも難しいかなぁ・・・」
新江先輩は難しい顔をして告げる。
「そうなんですか?」
「だってさ、この一連の事態、新一年生は知らないでしょ?」
「あ・・・そうですね」
あれは昨年度末に起きたことだ。
今の一年生は知らない。
「それに、新年度は連絡事項も多いし、私的な記事を載せるスペースがないんだよね」
「じゃ、じゃあそれが終わってからからでもいいですから!」
本庄さんは何とか食い下がろうとする。
「うーん・・・事件が風化してからだと、効果が薄いと思うけどねー」
「くっ・・・!」
悔しそうに本庄さんは歯噛みする。
「まぁ、君たちは私達新聞部としても、華々しい活躍をしてくれた方が記事を作りやすいから、私個人でなんとかしたいとは思うけどね」
「本当ですか?」
「具体的には、何を・・・?」
「いい噂を流す」
「それだけですか?」
本当に効果あるのかな?
「何言ってんの由依?噂は大事だよ?」
本庄さんは私を軽くつつきながら言う。
「うむ!噂は勝手に広がるからこそ、内容次第で新聞以上の拡散力を持つ事もある!きっとPeacE.も噂戦略、やってるでしょ?」
「ま、まぁ・・・バレると叩かれるんで黙ってて下さいね」
「そこは大丈夫。同じ情報戦略世界を目指すもの同士、そこは内密に・・・ね?」
私の目の前で、とても黒い話が行われている・・・
「あ、でもスキャンダルしたら容赦なく取り上げるからヨロシクね?」
「マスコミ怖ーっ!」
「私は嘘は言わないから、事実じゃなくて真実を伝えるってのがモットーだよ?」
「事実と真実って、それ何が違うんですか・・・」
「実際どうかはともかく、私の中では、事実は、実際に起きた事の事だね。そして、真実とは、あらゆる視点からみた、複数の事実を纏めあげた、本当の姿の事を指す!私はそれを追求したい!」
「お、おぉ・・・」
真剣な顔で語る新江先輩。
なるほど・・・
「あの・・・実際どうかはともかくって・・・」
だけど本庄さんは怪訝な顔で言う。
「ああ、うん。あの定義は私が考えたものだしね。これは事実ですらないね」
ええ・・・
うっかり納得しかけちゃったよ。




