表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
第五章:いつものわたしじゃいられない
83/280

第13話:私と全力ミライ


「由依、おはよう」


「おはよう、慎二君」


だんだん、新しい呼び方にも慣れてきた。


最初は呼ばれるだけで、心拍が高まって、緊張しっぱなしだったのに。

思ったより早く適応できてきた。


「もうカップルじゃん」

鈴や朱音さんはそう言ってくるけど、

私的にはまだまだ。呼び方を変えただけだもん。



慎二君と私の関係は割といい関係だという事が分かって、不安要素が無くなったので、とてもスッキリとした気分




・・・とは、いかなかった。


視界に移る本庄さんは今も輝いているけれど、そこには間違いなく疲れが見えている。

週末は、アイドルの顔が剥がれはじめてしまっている。



ルリさんも、なんとかしようとしてるみたいだけど、あまり効果は出てないとLINEで送ってきた。













その日の休み時間


次の授業は理科室で行うので、その準備をしていた。

クラスの人たちが次々と教室から出ていく。


私の席はドアの近くなので教室を出る際の通行路に面している。

そこを本庄さんが通り抜けようとした時、


「あっ」


本庄さんは何かに躓いて転んでしまった。

やっぱり本庄さん、いつもの調子は全く出てない。


「だっ、大丈夫!?」


私は手を差し伸べて、起き上がる手伝いをしようとした。

けど、


「だからお節介は要らないって、言ってるでしょ!?」


「っ!?」

本庄さんは私の手をはね除けた。

その口調は、間違いなく素の本庄さん。アイドルとしてデビューしてから一度もクラスメート達には見せたことないハズの。

だけど、まだこの教室には、沢山の生徒が残っている。


「今の本庄さん?」

「あんな声だっけ?」


案の定クラスはざわついている。


「あたしはあんたの手は借りない。意地でもね」



「っ」


その時、私の何かが外れたんだと思う。

自制心が、恐怖が、使命感が、我慢が、


・・・感情が。


「そっ、そんなことばっかり言ってっ!」


立ち上がった本庄さんに合わせて私も感情に任せて立ち上がった。

ガタンと椅子が大きな音をならす。


「ちょ、お姉ちゃん!?」

「由依!?」

二人はビックリしてるけど、気にせず続ける。



「皆の前ではずっと元気そうな顔してるけどさ?」


本庄さんの方を向いた拍子に、机から教科書が落ちてしまうが、そんな事気にしている場合ではない。



「裏ではずっと辛そうじゃん!」



「あんたには関係無いって、何度も、何度も言ってるでしょ?」



本性丸出しの本庄さんにも、一歩も引かず、言い返す。

「関係あるから言ってるんだよ!」



「だ、か、ら!」

もはやアイドルの影もない本庄の本気の声。

だけど私は、本庄さんの話を遮ってでも私は思いの丈をぶつけた。

こんなの、生まれて初めてだったけど、抵抗感は無かった。



「本庄さんはあんたは気にするなって、言ってるけどさ、あんなの見せられて、気にならない訳が無いじゃん!」

一歩踏み出して本庄さんのすぐ目の前まで迫った私は、

そのまま本庄さんの肩を全力で掴む。

私の方が背が低いので必然的に見上げる姿勢になった。



「だからって・・・」


「こんなの私のワガママかもしれないけどっ!私は本庄さんが心配で心配でどうしようもないの!わかる!?」


「っ!・・・あたしがどうしようとあんたには影響ないでしょ。私が要らないって言えば、あんたのそれはお節介でしかないの」


「・・・それでも私は!」


「いい加減認めなさいよ!あんたとあたしは分かり合えないって!」


「そんなことで、無理してアイドル然としてたの?」


「悪い?」


「悪いよ!ルリさんだって、心配してるんだから!」


「ルリさん・・・?」


「前にね、偶然ルリさんに会ったの。その時にね、ミライちゃん、無理に特訓し過ぎてて、いつか大変なことになるんじゃないかって、そう言ってたんだよ!?ねぇ!」


「あ・・・あぁ、あん時のはそう言うことだったんだ・・・」

私の手の力は気づかぬうちに緩んでいたらしく、本庄さんが一歩後ろに下がる。

何か思い当たる節があったんだろうか。



「はぁ・・・まぁ、メンバーに迷惑かける訳にはいかないかぁ」

本庄さんは大きな溜め息を吐きながら、乱れた服をぱっぱと整えていく、


「それに、クラスメートに、素のあたし知られちゃったしね・・・」

そう言って、本庄さんは教科書やノートを手に教室から出ていった。


そこまでしてようやく、周りの音が聞こえてくる。



「お姉ちゃん?」


「鈴・・・」

今まで見せたことのない姿を見せてしまったのは本庄さんだけじゃない、私もだ。

私自身、こんなに感情が高ぶった事なんて無かった。

周りも見えず、聞こえず、判断力なんて無いに等しかった。

そんな自分は、初めてだった。


「由依、けっこうキレると激しいんだね」


「そ・・・そうなのかな・・・」


立ち上がった時に散らばってしまった教科書を見ながら、私は、私自身の激情に恐れていた。

今の私は、何だったのだろう。


言っていることは心配だったかもしれない。

でも、あんな言い方じゃ暴言とさして変わらない。

こんなものは、私の望む事ではない。













私と本庄さんが喧嘩したという情報は、新聞部を介さずとも、瞬く間に拡散した。


それは、私が初めて本気でキレてたという情報へ、

それは、生徒会が生徒と喧嘩してたという情報へ、

それは、本庄さんの隠されてた本性という情報へ、

それは、本庄さんが疲れ果てているという情報へ、

それは、私が本庄さんを心配してるという情報へ、



様々な情報と憶測が飛び交う事態となった。

結果的に、二人とも大きく印象を落とした形となり、


私のお悩み相談にも、本庄さんの元にも、

集まる人は殆ど居なくなってしまった。



そんな日が数日、十数日と続いたある日、

私のお悩み相談も廃業かもしれないと、そう思いながら投書箱をひっくり返した時、




一枚の紙が落ちてきた。

そこには、名前と、時間、場所のみが書かれていた。








その送り主は、







本庄 未来さん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ