第7話:悩める二人
翌日・日曜日
「うあああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・っ!」
朝っぱらから絶叫している。
その声は顔に押し付けていた枕に吸収されて広がってはいかなかったけど、
私の頭の中には激しく反響していた。
どうしよう!どうしよう!?
好きな人(暫定)に、私が好意を抱いていることが知られてしまった!!!
まさにお悩み相談案件である。
絶賛当事者なわけだけれども。
ここから私はどういう行動をとっていけばいいの?
積極的な好き好きアピール?
却下。無理。
じゃあいつもと変わらない対応?
これも無理。
ああもう、
枕に馬乗りになってボコボコにしながら考える。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
結局腕が疲れてくるまで殴ってたけど、何にも出てこなかった。
なので気分転換に散歩に行くことにした。
日課だし。
火照った気分に冷たい空気が心地良い。
今日のルートは、町の南の河川敷。
川沿いには長い散歩道があって、時折ランニングや犬の散歩をしている人とすれ違う。
そうだって、あれは朱音さんが悪い。
私に非は無いもん。
・・・だからって、私をとりまく環境は変わらないしなぁ。
いっそ、牧原さんの方から告白されて、
それで・・・
それで・・・・・・
・・・・・・・・
・・・うん。
結局外に出ても考える事は変わらない。
今のところ頭の中で思い浮かべる事はこれしかない。
「すいませーん」
今ちょうどすれ違おうとしていた人から声をかけられる
「はい」
それは外見年齢は年上の、多分、大学生かな?
と思われる女性だった。
私に何の用だろう。
「もし間違ってたら申し訳ないんだけど、あなた、PeacE.のミライちゃんのお友達かしら?」
本庄さんの事だ。
でも、なんでその事を?
「えっと、あなたは一体・・・」
アイドルの友達とか、そんなプライベート易々と教える訳にはいかない
「あ、私?私、PeacE.センターのルリよ?」
「えっ、えぇっ?」
ホントに!?
あっ、そう言われるとこの顔、見たことある気がする。
本当に、PeacE.のセンターがここに!?
「イブのライブの時、ミライちゃんと話してたよね?」
「・・・はい、話してました」
楽屋での事を知ってるって事は、嘘ではないんだろう。
「良かった。私、ミライちゃんのお友達、探してたのよ」
ルリさんは嬉しそうな顔をしている。
ライブでもこんな顔をしていた。
「そうなんですか?」
「ええ。あの日、なんかちょっと不穏なお話してたじゃない?」
「あ・・・聞いてたんですか・・・」
本庄さんと私の関係は、今もまだ解決しきってはいない。
お互いにモヤモヤしているだけだ。
本庄さんは私のことを気に入らないと言った。
私はそれをどうにかしたいが、方法がわからない。
「うん。でね、あれからミライちゃん。ちょっと無理してる気がするのよね」
「えっ」
本庄さんが?
「あいつにだけは負けたくないって。稽古の成果は出てるんだけど、最近寝不足気味に見えるっていうか・・・」
「・・・」
やっぱり、私のせいなのかな。
「あのままだと、本番で大変な事になりそうだし、あなた達でも何か出来る事があればして欲しいのよね・・・」
ふぅ、と重いため息を吐くルリさん。
ライブの時とはまるで別人のような暗い表情をしている。
「そうですね・・・」
本番でメンバーが取り返しのつかない事をしたなんてなったら、PeacE.全体の危機だもんね。
「もうすぐ新曲も出るし、心配なのよね・・・」
「新曲出るんですか?」
「あっ・・・ごめんなさい、その話は内緒にしておいてくれる?」
人差し指を唇に当て、秘密にしてね、のジェスチャーと共に軽くウインクをする。
こう言うときの一挙一動はやっぱりトップアイドルらしい。
「わ、わかりました・・・」
「まぁとにかく、私はあの子とあなたが心配なの」
「私?」
私が・・・何故?
「だって、あの子がライバル視してる子って、あなたでしょ?」
「っ!」
やっぱり全部聞かれてた?
「別に、あなたが悪いって言ってる訳じゃないわ。私はあなたたちに何があったか詳しくは知らないもの」
「・・・」
「私も大学生だもの。もし、困ってるなら、相談には乗るわよ?」
自然にポーズをとりながらルリさんは言う。
こういう時にきっちり決められるのは、アイドル故か。
「ありがとうございます」
「あ、でも恋の相談はダメよ?そういう歌は沢山歌ってきたけど、恋愛そのものは全然経験ないから」
「そ、そうですね・・・」
相談って、本庄さんの事じゃないの・・・?
それ以外の相談も承ってるの?
ルリさんの連絡先も貰い、帰宅した私の脳内は、
本庄さんの事に切り替わっていた。
本庄さん・・・そんなことになっていたんだ・・・
これも、やっぱり私にも責任はある。
私が何とかしなきゃならない出来事の一つだ。
固く拳を握りしめ、決意を露わにするが、
具体的な手段は思いついてはいない。




