第5話:遊びに行こう
冷え切った空気が息を白くする。
休日だったので、私と鈴、彩音さん、そして牧原さんのいつものメンバーで、映画館に行くことになった。
最近話題になった恋愛系?アニメ映画だ。
生まれて未だ数度しか来たことの無い都会。
まだ立ち並ぶ高層ビル群には圧倒されてしまう。
朱音さん、牧原さんが前、鈴、私が後ろの二列になって、町を歩く。
「そろそろバレンタインだね」
鈴が前の二人に聞こえないように話してくる。
「えっ、あ・・・そうだね・・・」
「ちゃんと考えてる?慎二君へのチョコ」
「え、ええ?」
チョコ?そ、そんなの・・・どうしようかな・・・
好きな人にチョコを渡す日・・・
うーん・・・
「好きなんでしょ?」
「で、でも・・・そんなチョコ渡すような感じじゃあ・・・」
「うーん・・・まぁ、もうワンステージ上って感じがするよね。チョコは」
「で、でしょ?」
必死に渡せない理由づけに同意する。
・・・実際、渡したくない訳じゃないのだ。
恋人ってほどじゃないけど、やっぱり、もう少し仲良くなりたい。
勇気が・・・・・・出ないだけ。
それに、牧原さんが私をどう思ってるのか・・・わからないし・・・
映画館は人気映画であることもあって、人がいっぱいだ。
内容が内容なので、恋人同士で来てる人が多い。
「いやー、ハーレムだねー?」
鈴が牧原さんをからかうように小突く。
「別名、荷物持ち。だな」
「柔道部でしょ?期待してるよ?」
彩音さんも牧原さん弄りに参加する。
「はぁー・・・ハーレム感の欠片もねえな」
「お姉ちゃんも慎二君に色々持たせちゃえ」
「うぇ!?あ、う、うん、そうする・・・」
ダメだ。牧原さんとまともに話せない。
チョコどころではない。
普通のコミュニケーションすら危うい。
「ポップコーンとか買う?」
「うーん・・・今回のって、そんな映画だったっけ?」
何か食べながら見るような内容かな・・・?
「・・・違うかも」
「じゃあ要らないんじゃない?」
「そっか、じゃあドリンクは?」
「途中でトイレ行きたくなったら辛いよ?」
「じゃ、別にいっか」
映画の上映ホールに入った私たちは、
牧原さん、朱音さん、鈴、私の順で座る。
「面白そうな映画だよね」
「大好評だって言うし、楽しみだね」
口々に期待を露わにする。
私も楽しみだ。
開演のブザーが鳴り響き、映画が始まる。
と、同時に、ざわざわとしていた会場が瞬時に静寂に包まれる。
私も、意識を切り替えて、画面へと視線を向ける。
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映画が終わる。
「・・・ふぅぅーー・・・・・・」
長い息を吐く。
ぼんやりとエンドロールを眺めながら、映画の感想を思い返す。
ストーリーも良かったし、演出もしっかりしてた。
結末も、見事なハッピーエンドだった。
話題になるのもとてもわかる、良い映画だった。
だからこそ、
好きかもしれないという自覚がありながら、行動に移せないでいる自分が、
映画序盤から中盤にかけての自分と重なって、
そこから勇気を出して行動していく主人公に、置いて行かれた気がして、
こう・・・・・・自分が小さく見えてしまうのだった。
映画館を出て、町を歩きながら、私たちはさっきまで見ていた映画について話していた。
「どうだった?あれ」
「良かったねー。とくに、あのラストの抱き合う前の所とか」
「そう!そこ最高だよね!」
鈴と朱音さんが盛り上がっている。
そのシーンは、私も好きだった。
「由依は?どこが良かった?」
「私もそこ好きかなあ・・・あ、あとは、真ん中あたりのメール見て二人同時に家飛び出していく所とかも・・・好きかな」
「あー。あそこかぁ・・・あれもかなりキタね」
「あそこからストーリー動いた感あるよね」
「うん、わかる気がする」
女子三人で映画トークをする。
それを牧原さんが一歩引いた位置から眺めている。
・・・まぁ、女子三人の話に混ざるのは抵抗あるよね。
そのまま私たち4人はちょっとお洒落なカフェで昼食をとり、ショッピングへと向かう。
「三人分の荷物、重いよー?」
「いや、全部持たせようとすんなよ」
「最低でも由依のは持ってもらうよ?」
「お・・・おねがい・・・します」
恥ずかしいけど、実際重いものは持てないので持ってもらうしかない。
「ねえ、これ良くない?」
「いいじゃん。これ他の色ない?」
「えー、どうだったかなー」
夏の女子力アップ作戦以来、
一応トレンドのアイテムやカラーは把握しておくようにしてきた。
えっと、今年の春ものはー・・・
・・・あ、なんかこれ朱音さんが好きそう。
ちょっと派手目な服。
私はそれを手に取って、朱音さんに見せに行く。
「ねぇ、朱音さん」
「うん?・・・おっ、可愛いじゃん」
「うん。これ・・・」
「由依にしては攻めてるよね。やっぱり慎二に見せる為?」
「えっ!?そっ、そうじゃなくて・・・これ朱音さんに合うかなって・・・」
「あっ、そ、そういうことね・・・」
これを着て牧原さんの前に・・・?
無理だって!




