第4話:お悩みの人
年が変わっても、私のお悩み相談は終わらない。
今日は、同学年の男子生徒のお悩みだ。
冬の屋上はびっくりするほど寒いので、
生徒指導室を利用させてもらっている。
「あなたが六依さんですか?」
「はい。って事は、あなたが林さん?」
「はい。その、悩み、聞いてくれるんですよね?」
「もちろん」
「あ、ありがとうございます・・・えっとですね・・・俺、」
お悩みにはいくつかのパターンがある。
一つは、答えは決まってるけど、あと一歩踏み出す勇気がないから、その後押しをしてほしいパターン。
これは私でもなんとかできる。
もう一つは、ただ聞いてほしいだけのパターン。
こっちは、私が真剣に聞いてくれれば、一通り話すと、「うん。なんかスッキリしたよ。ありがとう」と、満足してしてくれる。
たまに、本当に聞くだけでいいの?って内容もあるけど、大抵は私にはどうしようもない事なので、それ以上何も出来ない事が多い。
他にも、傷心したので、励ましてほしい、慰めて欲しい、という内容。
自慢できることではないけど、私も結構な絶望を経験しているので、割と素直な事を言っていると、相手は元気を出してくれる。
逆に、
困るものも何パターンかある。
多いのは、答えが出ていないパターン。
なまじ私の人生経験が少ない為、その場で答えを出すのは難しい。
でも、私以外に話すべきではないケースも多い。
と、いうよりも、私だから話した。という相談が基本だ。
これは今まで先輩たちに聞いてきた事の受け売りと、自身のわずかな実例で、なんとか繋いできた。
お悩み相談で得た経験がお悩み相談で生かされる時も多い。
そして一番困ったパターン。
まだ一件しかないけど、クラスの生徒の素行や態度が気に入らない。というやつ。
本当は生徒同士のいざこざを生徒に相談してほしくは無いのだけれど・・・
これは本当に困る。
この相談者を救う一番簡単な選択肢は、別の誰かを傷つけることになるから・・・
どうしても、妥協、という方向に舵を切るしかない。
その時は、生徒会という立場上、不用意に他生徒の批判を許容するわけにはいかないから、風紀委員等を含めた総合的な風紀の調査をすることで留めておいて欲しい。
と、なんとか矛を収めてもらった。
一応、個人名を伏せて会長に相談した結果、他生徒の批判等の話題を禁止する事になった。
こうして、少しづつお悩み相談の規約が増えていくのだ。
それとはまた違う話にはなるけど、
最近は恋愛系の相談は、私自身心当たりがあるせいもあって、今までように、スパッと物事が言えなくなってしまった。
好きかもしれないという感情を自覚すると、
今まで普通に話してた相手との話し方が、急にわからなくなってしまうものなんだと、身をもって知った。
「相談、聞いてもらって、ありがとうございます」
「どういたしまして」
今回のは、一番多い、後押しをしてほしいパターンだった。
今日の相談を終え、私も生徒指導室を後にする。
「や、お疲れ様」
「あれ、三島先輩」
生徒指導室の外では、例のイケメン会計三島蓮先輩が待機していた。
「六依さん、もうすっかりお悩み相談の人になってるね」
「そ、そうですね・・・」
今までは記憶喪失の人とか、生徒会の人とか、魔法少女の人とか、いろいろ言われてきたけど、今はお悩み相談の人だ。
「六依さん自身はお悩みとか無いのかい?」
三島先輩が聞いてくる。
「うーん。ない訳じゃないですね・・・」
本当はバッチリある。悩みだらけだ。
「ふーん、それはさ、自分で解決しようって思ってる?」
「まぁ、一応は・・・」
「解決、出来てる?」
「いえ・・・」
解決かあ・・・出来てないなぁ。
「なるほどねぇ」
先輩は両腕を首の後ろに回しながら、
「人の相談ばっかり聞いてて、自分の悩みを誰にも相談出来ないなんて、本末転倒だし、誰かに相談とかしてもいいんじゃない?」
「そうですね・・・」
「六依さんだって、仲の良い友達の一人や二人、いるでしょ?」
「はい」
「まぁ、もし居なかったら俺が相談に乗るよ」
冗談じみた雰囲気で先輩は言う。
「ふふふっ、ありがとうございます」
私もつられて軽く笑いながら応える。
「おっ、笑った。やっぱり笑ってた方が可愛いね」
「えっ」
「ん?あぁ、別に他意は無いよ。ただのお世辞とでも思っててよ」
び、びっくりした・・・
前から外見は格好いいとは思ってたけど、そんなこと言うとは思って無かった。
見た目も性格も良いのに、恋人とかと一緒に居るところは見たこと無いんだよね。
先輩、普段何してるんだろう・・・
プライベートに関わることだから、聞けないけれど。
しかし、私の悩みかぁ。
確かに、人の悩みを聞くばかりじゃなくて、
自分の悩みも、一人で溜め込んでないで、誰かに聞いたりして、解決しようとしなきゃならない時期が来るのかもしれない。




