第2話:裏生徒会長
学校が始まってから新江先輩を問いただしたところ、
「あれ?六依君とあの男の子が話してるとこ見てたら、あ、これはキテるなって、いやー、長いこと人間観察してるとわかるもんだよ?」
「その、拡散するのだけは止めてください・・・」
「そこはまぁ、お悩み相談の借りもあるし、信用できる人以外には伝えないよ」
「な、ならいいんですけど・・・」
御堂姉妹は信用できる人なんだね。
新江先輩といえば、気になることはもうひとつ。
「そういえば。先輩、告白って、どうなりました?」
先輩、一度告白したいって、私にお悩み相談してきた事がある。
その結果は何も聞いてない。
そんな問いに、先輩は一言も発することなく、
グッと親指を立てて笑うだけだった。
フラれてそんなリアクションする人は居ないだろうし、まぁ、上手くいったんだろうね。
ひとまず、全校生徒に拡散される危険性が無いことを確認し安心した私は、いつも通り生徒会室のドアを開ける。
「やあ六依君」
「あれ、今日は会長だけなんですね」
「そうだね」
そこにいたのは生徒会長、一条和也先輩ただ一人だった。
三年生、受験シーズンだというのに、生徒会の仕事をこなしている。
「会長、受験勉強は大丈夫なんですか?」
「うん?ああ、大丈夫だよ。志望校はA判定貰ってるし、むしろ、生徒会でやり残した事をやっておかないと気がすまなくてね」
「へぇ、すごいですね・・・」
私は未だに会長の弱点という弱点を見たこと無い。
「そういえば」
私はふと気になったことを聞いてみる。
「会長って、どうして生徒会に入ったんですか?」
すると会長は仕事をピタッと止め、こちらを向いて言う。
「気になるかい?・・・本当は内緒にしたいんだけどね」
相変わらず笑っているけどそれは苦笑いに見えた。
「あっ、言いにくいんなら、別に・・・」
「でも、六依さんには、言わないと不公平だよね」
「それはどういう・・・?」
「秘密を告白してくれたじゃない?だったら、僕だけ秘密ってのも、ズルいだろう?」
「そ、そういうものでしょうか・・・?」
「まぁでも、僕が生徒会に入った理由が気になるのは事実だろう?」
「それは、まぁ・・・はい」
「じゃあ教えてあげるよ、」
そして会長の過去の話が始まった。
それは、開幕から私の予想を大きく裏切っていた。
「実はね、この学校は、僕にとっては、滑り止めだったんだよ」
「そうだったんですか?」
「うん。実はもっと難しい所に行きたかったんだよ。だけど、落ちちゃったんだよね。だから、入学直後は、学校に通うモチベーションが保てなかったんだ」
「・・・」
会長の意外すぎる過去。
「まぁ、不良になる勇気も無くて、ただ目立たないだけの一生徒みたいな感じだったよ」
ははは
と自嘲するような乾いた笑いの会長。
「でね、その時に、ちょっと不良生徒と喧嘩になりかけた事があるんだ」
「えっ!?」
「いや、そんな物騒なものじゃないよ、ちょっと肩がぶつかった時に、こんなやつに謝るの嫌だなって、謝らないでいたら厄介な事になっただけだよ」
充分物騒な事だと思うけどなあ。
「で、そこを助けてくれたのがその時の生徒会長ってわけだ」
「なるほど」
「その時に「君は一年の一条和也君ね・・・あまりああいう輩と面倒は起こさないでね」ってそう言ってたんだよ」
会長は、普段は感じられない、とても嬉しそうな雰囲気を漂わせながら続ける。
「あの生徒会長は、僕の名前と顔を知ってたんだよ。その時の僕は、入学して数か月。部活にも入っていなければ、優等生でも不良でもない。目立たない地味な学生だったのに」
「今の会長と似てますね、その生徒会長」
一条先輩も人の名前をいっぱい知ってる。
「僕が生徒の名前を覚えようとしたのは、この人の影響もあるからね。で、その時、言い方は悪いけど、こんな学校にもこんなすごい人が居るのかって、そう思ったんだよ、で、生徒会に入ったってわけ」
「へぇ・・・」
「今考えると、人の名前覚えてただけで凄い人だ!なんて感じたのはおかしな話だけど、実際あの人は凄かったよ。活力とか、統率力とか、とにかく、周りを見つつ前に突き進む行動力があった」
「その人の事、尊敬してるんですね」
「そうだねぇ。僕がこうやって、今前向きに行動出来てるのもあの人のお陰だね。もしあの人と会わなかったら、僕は高校受験に失敗したあの時点で、いろいろ諦めてたかもしれないね」
「その人は今どこに?」
「さぁ・・・あの人はここを卒業した後、連絡が付かなくなっちゃったからね。どの大学に行ったのかも知らないし、もし会えるなら、お礼の一つでも言いたいんだけどね」
窓の外を眺めながら会長は笑う。
まぁ、いつも笑ってるけど。
「いつか会えるといいですね」
「うん。まぁあの人の事だし、どこかでひょっこりあったら、僕の事も覚えてくれてるだろうね」
「そうですね」
会長も、その人の事、かなり信頼してるんだなあ。
「いろいろ教えてくれて、ありがとうございました」
「こんなので大丈夫かな?」
「はい。・・・なんていうか、会長の意外な面が見れて、面白かったです」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
もうすぐ会長は卒業しちゃうけど、その前にいろいろ聞けて良かったと思う。
でも意外だったなぁ。まさかこの会長が受験に失敗してたなんて・・・
でもなんだかんだ有名大学に普通に行けそうな辺り、とても会長らしい。




