第1話:元日の一幕
私にとって二度目の元日。
去年は、過去の友人の存在を知った直後で、
本当にこのまま高校へと進んでいいのか、苦悩していた。
今年は、本庄さんの本心を知った直後で、
本当にこのままお悩み相談を続けていいのか、苦悩していた。
私は今まで後先考えない行動を繰り返してきた。
今までが運よくうまくいってただけだ。
しかもそれは、私が見ている範囲での話。
裏ではどんなことが起きていたのか、知ろうともしなかった。
それが、その結果が、本庄さんなのだ。
朱音さんも鈴も、
「あんなの自分勝手なワガママじゃん。由依は気にしなくていいよ」
と言ってはいたけど、
私が引き起こした事に変わりはない。
それに、私は、本庄さんを敵だとは思いたくはない。
ワガママだと切り捨ててそのモヤモヤを無視したくはない。
だって、ライブの時の本庄さんは、あんなに楽しそうだったもの。
だって、ライブを見ていた私は、あんなに楽しかったんだもの。
・・・元日の朝から、なんて事を考えているのだろう。
目を覚ました私が、最初に考える事は、そんな事だった。
カーテンを開け、窓から差し込まれる、新年一発目の朝日を浴び、気持ちを切り替えて、服を着替えて下に降りる。
「明けましておめでとう、由依」
「お姉ちゃん、あけましておめでとう!」
家族が出迎えてくれる。
「うん、あけましておめでとう」
「ちゃんと一年無事で良かったよ。高校生活も、特に問題ないみたいだし」
「そうだね、お父さん」
テーブルに並べられているおせち料理は、去年はあまり食べられなかった。
その時は胃が弱っていたわけでは無かったけど、単純に量が食べられなかった。それだけ。
だから、今年は、せめて全種類一個は食べてやろうと、そんなどうでもいい気合を入れていた。
おせちを食べながら、皆でテレビを見る。
どのチャンネルも、やってる事はほとんど変わらない。
挨拶か、漫才か、歌か、なんかよくわからないおふざけ企画か。
それらをボーっと特に意識せず眺めながら過ごすのが正月の正しい過ごし方なんだろう。
「では、お次はつい先週無事新メンバーを迎え、7人ユニットへと返り咲いたPeacE.の皆さんです!」
私の耳がピクっと反応する。
それは鈴も同じようだ。
テレビにはたった今出てきたPeacE.のメンバーが映っている。
勿論、本庄さんも。
「あなたたちPeacE.のライブ見に行ったんでしょ?どうだったの?」
お母さんが聞いてくる。
本庄さんとのあれこれは話してないけど、ライブに行ったことは話した。
「凄いにぎやかで、なんか凄かったよ」
「うん。あんなの初めてで圧倒されちゃったな」
「へぇーやっぱり生で見ると違うのかしらね」
テレビでは、PeacE.新メンバーへの質問が行われている。
『なぜアイドルになろうと思ったんですか?』
『もともと目立つのが好きで、町でスカウトを受けたときに、これはやるしかないなって・・・』
『何か目標はありますか?』
『日本最強のアイドルになる!これだけです!』
本庄さんはテレビの前でも、狼狽えることなくはきはきと受け答えしている。
目立つのが好きってのは、本当なんだろうなあ。
初詣の神社は、去年は受験があったので、学問の神様がいるらしい大きなところに行ったけど、
今年は特にそういうのは無いので、近所の小さなところで済ませることにした。
「でも並んでるのは変わんないんだね」
「だいぶ短いからマシだよ」
この程度なら、立っていられる。
個人的にこの差はとても大きい。
初詣と言えば、神様への願掛けだけれど、
今年はどうしようか。
去年は受験という、大きな目標があった。
今年は・・・やっぱり皆と交流して、仲良くしたいって言う、
高校生活に掛ける私の目標の成就だろうか。
境内に立った私は、五円玉を投げ入れ、
鈴を鳴らす。この鈴はなかなか重くて、私は軽く鳴らすので精一杯だ。
えっと、二礼二拍手一礼・・・だったかな?
軽く目を閉じて、お願いをする。
今年も、いろんな人と交流して、いろんな人と仲良くなって、いろんな人の役に立ちたい。
それで、楽しい高校生活を送りたい!
・・・少しお願いを追加しちゃったけど、多分神様は許してくれるよね?
でも、よく考えたら、二つのつもりだった願いを四つに増やしてしまっているので、もう五円追加して賽銭箱の前を離れる。
その後御守りを買いに売店?に向かうと、見慣れた人が、
「あれ?御堂さん?」
そこにいたのは御堂姉妹。
「アルバイトしてるのよ」
「和装は着なれてるからな」
「そうだったんですか」
「って訳で、はい、プレゼント」
「え?」
突然桜さんから何かを手渡される。
それは桃色の御守りだった。
「恋愛成就の御守りよ。好きな人、居るんでしょ?」
えっ!?
「な、なんでそれを桜さんが!?」
「新聞部の美弥ちゃんから聞いたわ」
!!
いつの間にかスクープされてる!
「その、それは・・・」
なにか言おうとしたが、人の波に流されてこれ以上は言えなかった。




