第14話:私と未来
ライブは続き、私のテンションが続かなくなってきた頃、
『じゃあ、そろそろ第5期新メンバーの紹介をしよっか!』
歓声が沸きおこる。
「あ、ついにきたよ!」
『ニューメンバー!カモーンッ!!』
ブシューッっとステージの端からガスが噴き出て、
そこから3人の女の子が小走りで出てくる。
その中に一人、見覚えのある顔がある。本庄未来さんだ。
歓声が大きくなる。
『では、自己紹介どうぞー』
「まっ、マイです、14歳です・・・」
「ミノリです。中3の、15歳です」
「ミライ、16歳、高校一年生ですっ」
皆が自己紹介をする。本庄さんが一番ノリノリだ。
『これからは、また7人でやっていくことになるから、第5期PeacE.をよろしくね!』
ワァーッと歓声が沸き起こる。
あそこに、私のクラスメートが立ってるなんて、信じられない。
『第5期PeacE.最初の一曲、聞いてください・・・新しい子はみんな初めてのライブだから多めに見てね?』
『私がミスした時も多めに見てね!』
『あんたは歴長いんだからダメでしょ。お手本にならないと』
『でもほら、反面教師とか・・・』
『だーめ!』
会場が笑いに包まれる。
このグループも仲いいんだろうなぁ
『はぁ・・・じゃあ、気を取り直して、"友達→恋=元気→照れ"』
私が知っているPeacE.は、4人になってからなので、
7人になって初めての曲が始まる。
最近の曲だ。私も知ってる。タイトルみても読めなかったやつ。
『~~♪』
カラフルな音と光に会場が包まれる。
私のテンションも持たないかな・・・と思っていたけど、曲が始まれば、雰囲気に流されて自然と高揚していくのだった。
つまり、それは事が終わった後、限界を超えている状態で解放されるというわけで・・・
「しっかし、あんなヒールでよく踊れるよねー」
「絶対コケる自信あるね」
「私あんな高いの履いた事ないかも・・・」
ステージで踊るメンバーはそんなヒールをものともせずダンスを踊っている。
本庄さん他新メンバーも既メンバーと遜色ないキレを見せている。
遠くからなので表情はそこまでよく見えないけど、楽しそうな雰囲気と緊張している雰囲気、両方伝わってくる。
この大歓声の中で歌って踊る。
・・・そんなの、想像も出来ないけど、凄いんだろうなぁ・・・
そんなライブは、視界を埋め尽くすほどの紙吹雪と共にフィナーレを迎えた。
「いやー・・・すごかったねー」
「う、うん・・・」
案の定燃え尽き気味の私。
身体は動かしてないから、気疲れというやつだ。
だけどまだ帰る訳にはいかない。
私たちは楽屋に行く権利があるのだ。
友達特例というやつかな。
「いやー!未来ちゃん最高だったよ!もう完全にPeacE.の一人じゃん!」
楽屋に入り、本庄さんを見つけるや否や朱音さんが本庄さんの所へ駆けて行く。
他の新メンバーも知り合いと思わしき人たちと話していて、
それを既メンバー達が微笑ましく眺めている。
「そ、そう?なら良かった。プロデューサーさんからもそういってもらえたけど、観客席側で見てた人からもそう見えたんなら、そうなんだね」
本庄さんはやや照れ気味な顔で言う。
皆でアイドルやライブのあれこれを一通り話した後、
私は、あの話題に切り込んでみた。
「ねぇ。本庄さん」
「何?」
相変わらず、私に対しては少しトーンが低いように感じる。
「なんであの時、私のを名指しにして、「絶対負けないから」なんて言ったの?・・・その、私を・・・嫌ってるの?」
聞いてしまった。
答えによっては、関係が崩れてしまいかねない危険な質問だった。だから今までは言えなかった。
けど、言ってしまった。
どうして言ってしまったんだろう。疲れてたからかな・・・
「は?嫌ってる?」
私の質問に対する答えは、意外なものだった。
「嫌ってなんかないよ、嫌ってたらライブの招待状なんか送らないでしょ」
「そ、そうだよね・・・」
「あん時のも、今回のも、あんたに知ってもらう為よ」
「な、なにを・・・?」
「あたしの存在を」
・・・え?
ど、どう言う事?
「誰よりも目立って、誰よりも人気者になって、沢山の人の中心に居たかったのに・・・初日に全部あんたに持ってかれたからね。せめてあんたの印象には残りたかったの」
「そのためにPeacE.に・・・?」
「別にそれだけじゃないけど、理由の一つではあるよ。・・・そういう意味では、やっぱりあんたの事、気に入らないかもしれない」
うっ・・・バッサリ言われた・・・
「そのうえお悩み相談とか始めたり、文化祭でコスプレしたり・・・うん。やっぱあんた気に入らないかも」
「ちょっと!お姉ちゃんは好きでこんな体になってるわけじゃないからね!」
鈴が食い下がる。
「分かってる。校内新聞でも見たし。だから、あんたたちに止めて欲しいとかそんな事言うつもりはないから。ただあたしが個人的にモヤモヤするだけ。それでいいでしょう?」
「う、うぅん・・・」
鈴も、彩音さんも私も、言葉が詰まってしまう。
そこまで言われたら、それ以上何も要求も出来ない。
嫌ってる人に、嫌うな、なんて言えないし。
「ま、それでも絶交とか、そんなことするつもりはないよ。ライバル視してる人がいる。って、そう思ってくれればいいから」
会場の外に出た私達の前に待ち受けていたのは、白い雪だった。
夜景とイルミネーションと雪のコンビネーションが美しい。
「うわぁ、ホワイトクリスマスだぁ」
鈴がヒラヒラと雪を避けるような動きで舞いながら、はしゃいでいる。
けれど、私はそんな気分では無かった。
私が今まで行ってきた行動の数々が、裏目に出ている人がいるという事実に、少しショックを受けていた。
以前お母さんに、気にしないで良いとは言われたけど、実際目の当たりにすると、気にしないなんて、出来ないよ・・・




