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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
第四章:お悩み相談生徒会
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第9話:御堂の双は頂に


秋晴れ、という言葉がある。


・・・その日も天気は快晴だった。



三度目の夕日。

日は暖かく、空気は冷たい。





「桜さん・・・」

これは、わたしのわがままなのかもしれない。


けど、このまま放って置くなんて出来ない。



「何?私に言いたい事って?」

桜さんは、夕日に背を向けながら立っている。



私は意を決して、事の全てを話す。


「前に、楓さんに勝てないから、悔しいから、剣を捨てたって、そう、言ってましたよね」


「そうね。それに間違いはない」


「そのことって、楓さんは知ってるんですか?」


「楓?ううん。言ってないわ。弓を極める。そうとしか伝えてはいないわ」


やっぱりそうだったんだね。

私は軽く拳に力を入れ、覚悟を確かな物へと変える。


「・・・実は、楓さんも、私のお悩み相談を利用してたんです」


「・・・そうなの?」

桜さんは少しびっくりした表情をした。

普段は見ない顔だ。


「はい。お悩みの内容に関しては言えませんが、楓さんは、桜さんの事を、目標だと言ってました」


「・・・私を?」


「はい」


「本当に?御堂の本質に背いて剣を捨てたのに?」


「楓さんは、剣で勝っても、弓で勝っても、心の在り方で勝てたことは決して無かった。そう、言ってました」

はっきりと、そう告げる。

私と桜さん以外、誰も居ない屋上に私の声が響く。



これを聞いた桜さんは、どう思うだろうか。

私は桜さんをじっと見つめる。


「・・・ふふっっ」

すると桜さんが急に笑い出す。


「さ、桜さん?」


「そう・・・そうだったのね。私は剣を捨てたとき、御堂の誇りも一緒に捨ててしまったと、そう思ってたのだけど、楓にとってはそうじゃなかったのね」


桜さんは手すりから身を乗り出して、学校の端の方を見つめている。

声色は、いつもの優しい声だ。


「ねえ、六依さん。ひとつ、お願いを聞いてくれないかしら」


「なんでしょう」


「楓をここに呼び出してくれる?今」


「今ですか?」


「ええ、部活中だし、携帯は使えないと思うから、直接行った方がいいかもね」


「桜さんは行かないんですか?」

正直ここから剣道場までは距離があって、桜さんはともかく、私は体力的にちょっと辛い。


「私は剣を捨てた身だからね。あそこに入る訳にはいかないわ」

とことん律儀な人だ。

何があっても、誓いは破る気にはならないんだろう。


「わかりました。行ってきます」











「御堂さん、いますか?」

剣道場に着いた私は、楓さんを呼び出す。


「ああ・・・ん、六依か、何の用だ?」

楓さんは、道場の隅で素振りをしていたところだった。



「ちょっと来てくれますか?」


「ん?生徒会の用事か?それなら今は・・・」


「桜さんが呼んでます」


「・・・姉さんが?」

楓さんの目つきが変わる。

声色も変わったと思う。


「はい」


「・・・分かった。場所は?」


「屋上です」









楓さんは歩くペースが速い。


私は必死になってついていこうとするが、私の足の疲労も中々で、全然追いつけない。

そのたびに楓さんは立ち止まって。

「・・・大丈夫か?」

と声をかけてくれる。

申し訳ない事この上ない。







屋上の扉を開けると、そこには真っ赤な夕日に照らされた桜さんが一人。

桜さん本人が美人な事もあって、一枚の絵のような光景だった。



「・・・姉さん」


「楓」


二人が向きあう。




「私を呼び出した理由って・・・何でしょう?」


「私ね、楓に言ってない事があるの」


二人が話始めるそれを、私は少し離れた位置で見ている。


「・・・」


「私が剣を捨て、弓一本に絞った、本当の理由」


「っ!」


「弓を極める為。きっと楓はそう聞いているはず。そう、言ったはず」


「・・・はい」


「でも本当はね・・・楓、貴女に負けたくなかったからなの」


「わた・・・し?」


「そう、あの時私は何か一つでも、貴女に勝ちたかった。御堂の誇りを捨ててでもね」

桜さんの声は今まで聞いたどの声よりも真剣だった。

関係ない私までこわばる。


「そ・・・そんな事・・・」


「剣と弓、その双方を極め天に立つ。その信念を捨てて、剣を捨てる・・・それは、」


「・・・捨ててません・・・」

今まで順番に言葉を交わし合っていた二人だったけど、

楓さんが初めて、桜さんの言葉を遮った。


「・・・うん?」


「姉さんは・・・信念は捨ててませんよ・・・」


「・・・」


「私、父さんに言われたことがあるんです」


「・・・何を?」


「御堂双天流は、本来、剣の達人と、弓の達人。その二人によって創始された武道であると」


「・・・」

桜さんは何も言ってはいなかったけど、

その顔は明らかに動揺していた。


もしかして・・・桜さんはその事実を知らなかった?



「二人一組で戦場を戦う戦術があったと、でも時と共に、個の力を重視するようになったと」


「・・・」


「だから、弓だけを極める事は、御堂の源流の信念には、背いてないと・・・思うのです・・・」

楓さんの声がすこし震えているように聞こえる。


「むしろ・・・むしろ信念を捨てたのは私の方です」

楓さん・・・私に打ち明けたそれを、言うの?


ともすれば、姉さんに失望されてしまうかもと言っていた、それを・・・


「・・・どういう事?」


「・・・私は・・・私は、御堂の剣を私欲の為だけに振るっていました・・・ただ、試合に負けたくない。・・・それだけの為に」


楓さんの頬を一筋の涙が流れる。

それが夕日を浴びてきらきらと反射する。


そんな楓さんに、桜さんはゆっくり近づいていく。


「・・・武道を志す者として、剣を取る者として、最低の振る舞いですよ・・・」


もはや桜さんの方を向く事すら出来ない楓さんを、

桜さんはそっと抱きしめる。



「・・・それは私も一緒よ」


「・・・」


「元はと言えば、私も、負けたくなかったから、貴女に勝ちたかったから、そんな浅ましい我欲で剣を捨てているもの。本質は変わらないわ」


「・・・」

楓さんは声こそ出ないものの、体は小刻みに震えている。

二人の間を夕日を受けて輝く涙が光り落ちていく。


・・・あっ、なんか私ももらい泣きしてきた・・・



「私はこれを楓に伝えて、だいぶ吹っ切れる事ができたわ。楓はどうかしら?」


「・・・私もです・・・」


「そう・・・じゃあ、今日から、二人、やり直しましょうか」


「・・・何を・・・ですか?」


「全てよ。剣も、弓も・・・私達姉妹も」


「・・・・・・はい」


「・・・もっと、姉妹らしくしましょう?」


「・・・・・・うん」



夕日に照らされ、抱き合いながら涙を流す二人は、

日が山の影に落ちるまで続いていた。




・・・写真を返すタイミングを逃した私も、

そこから動けなかった。


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