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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
第三章:夏休みサマーデイズ
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第13話:トラウマと思い出

8月の末日。

夏休みもあと少しといったところ。






「・・・ふぁぁぁぁ・・・」



朝、目が覚める。

時間は10時18分。

夏休みにしても随分と遅い。



そのままベッドから身を起こし、着替えの為にタンスへ向かう。


パジャマを脱ぐと、


少し黒くなったような気がする腕が目に入る。

日焼け止めクリーム塗ったんだけどなぁ・・・


そのまま私服に着替え、一回のリビングに降りると、

鈴が待っていた。

鈴はソファでスマホをいじっている。



「おはよ、お姉ちゃん」


「おはよう」


そのままの流れでソファに腰掛ける。


「テレビ、つけるよ?」


「いいよ」


鈴に一応確認を取り、リモコンを手にして、電源を入れる。





「ビーチは大変楽しいものですが、一方で海難事故も多数発生していて・・・」


「っ」



テレビの内容は、海の事故についてだった。

危険な生物、場所、いろいろなことについて特集していたが、

溺れてしまったときの話に話題が移った時、私は思い出してしまった。


ビニールベッドから落ちて、いきなり全身が海水に包まれた事、

息を吸おうと思っても、海水しか入ってこなかった事、

なんとか息が吸えても、またすぐに沈んでしまう事。

手足の疲労を感じ、徐々に抵抗が出来なくなっていく事・・・


部屋の中だというのに、あの時と同じように息が苦しくなる。

「はぁ・・・っ。はぁ・・・っ」

触れる事など出来もしない肺を掴むように胸を押さえる。


ぼやける視界の中、嫌でもあの日の事がフラッシュバックする。

もし、あの時呼吸が一回できていなかったら。

もし、あの時手足がもっと疲れていたら。

もし、あの時牧原さんが居なかったら。


「ぅっ・・・ぐ・・・」

息が詰まる。

さっきまで入って来ていたわずかな空気も途絶える。


あ・・・マズイ・・・

そのまま考える事もめんどくさくなって、

私の意識は深い海の底へ・・・




「ちょっ!お姉ちゃん!?お姉ちゃん!」


急に体がグラグラと揺さぶられ、はっと我に返る。


「・・・っ、ぅはぁあっ!」


ぼやけた視線ははっきりと戻っていき、

喉で止まっていた空気が流れ込んでくる。


「だ、大丈夫・・・?」


「・・・・・・あ、わ・・・私・・・?」


「・・・やっぱり」


「な、何?」

鈴は私の目をまじまじと見つめている。


「やっぱりトラウマになってるね?」


「・・・」

やっぱりそうなのかもしれない。

あの日帰宅してから、お風呂で湯船に水を張ってみた時は大丈夫だったのに。


「なんとかしないとね・・・私が居ない時に発作起きたら大変だもん」


「う・・・」

鈴の言う通りだ。さっきは溺れても無いのに、本気で死にかけた。

部屋のなかで窒息なんてしたくない。


「お姉ちゃんは今水の中にいないんだから、大丈夫、溺れないよ」


「そうだね・・・」


「アブナイ!って思ったら深呼吸だね」


「そんなんでいいのかな」


「深みにハマってくよりマシだと思うよ」


「そっか」


「ちょっと練習してみようか」


「?」


「ほら、あの時の写真」

鈴が見せてくれたのは、スマホに写る、あの日皆で行った海の写真だった。


「こんなの撮ってたの?」


「うん。ホントはあとでLINEに上げるつもりだった」




鈴はいつの間にか大量の写真を撮っていた。

着替えてる時も、朱音さんが初めて牧原さんに水着を見せているときも、

パラソルを借りているときも、設営の時も・・・


「いつのまに・・・シャッター音とか聞こえなかったよ」


「まぁ、そんなのアプリで簡単に消せるし」


「・・・」

盗撮じゃない・・・それ・・・



鈴は次々と写真を見せてくる。


朱音さんと撃ち合っている写真。

・・・を見ている私の写真。

私が牧原さんをじっと見てる写真・・・・・・え


「み、見てたの・・・っ?」


「ちょっとだけね」


み、見られてたのあれ!?

ど、どうしよう・・・ま、まぁ妹だし・・・




次の写真は、俯く私に忍び寄る朱音さんの写真。

そして、私の顔面に水がかかる写真。

そして、

逆に私がやり返す写真。


あったなぁ。こんな事。

私が目覚めて初めてのお茶目だった。



そして、三人で撃ちあっている写真。

海の家の写真。

から見た私と朱音さんが話している写真。

皆で昼食を食べている写真。

私がたこ焼きでひどい目に遭っている写真・・・。



そして、ビニールベッドにしがみつく、私の写真。


「っ・・・」


まただ。

また胸が苦しくなる、


頭に、喉に、肺に、胸に、刻み込まれてしまったその記憶が甦る。

ダメだと分かっているのに、大丈夫だと分かっているのに、

勝手に呼吸を引き留める。


そんなことでいっぱいになる頭を振り絞り、私は強引に息を吸う。

大丈夫、ここは水の中じゃない。吸えば空気は入ってくる。

だから、

だから、


だから!


いつもの私っ、戻ってこいっっ!!



「・・・っえふっ・・・」


変な咳と共に、苦しさが晴れてゆく。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・や、やった?」


「あっ、戻ってこれたね?」


「うん」


鈴と軽くハイタッチをかわす。



普通に発作は起きるので、トラウマ克服になった訳ではないが、自己対処の方法を会得しただけでも十分だ。

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