第5話:暗躍の鈴
「さぁて、じゃあ私らしい水着探さないとね!」
数分前のしおらしさはどこへやら。
完全に調子を取り戻した朱音さん。
「朱音さんっぽい水着ってどんな感じ?」
「うーん。まぁあんまりフリルとかは無いよね」
「わたし達の中では一番セクシー系似合うんじゃない?」
鈴がさっきの露出がすごい水着のややおとなしいバージョンを持ってくる。
「いやそうかもしれないけど、もうそれはいいから・・・」
朱音さんは鈴の水着を取り上げて棚に戻す。
・・・しっかし、こんなものも売ってるんだなぁ・・・
なんてつぶやいてる。
「じゃあこっちだ」
鈴は巧妙に背中に隠し持ってた。もう一つの水着を取り出した。
その水着はさっきのやつに比べればだいぶマシな露出度だけど、まだ多い方だと思う。
「んー・・・まぁさっきのに比べればイケるかも・・・ちょっと着てみるね」
そういって試着室に入っていく。
「よし、大成功」
鈴が若干黒い笑顔をしている。
「何が?」
「一回凄いのを見せてから、妥協点を見せる事で朱音ちゃんにセクシーな水着を着せる事に成功したよ」
鈴、何してんの・・・
「え、えぇ・・・」
「これで牧原君へのアピールポイントが一気に上がってあわよくば・・・?」
「まだそれ諦めてなかったんだ・・・」
お母さんから、鈴は割と悪戯好きだったって聞いてたけど、こういう事だったのか。
「ど、どうかな?」
試着室から朱音さんがでてくる。
「なんかちょっと露出多くないかな・・・?」
想像通り、露出が多くてやっぱりセクシーな印象は強いけど、
朱音さんに似合うかと言われれば、
バッチリ似合っていた。
鈴恐るべし。
「お?、おおー!?、思った以上にベストマッチ」
鈴も意外そうな反応をしている。
偶然だったのかな。
「私もちょっとセクシー過ぎないかな・・・って思ってたけど、想像以上に似合ってるね」
実際に合ってるのは事実だ。
「そう?ちょっと過激過ぎない・・・?」
「セクシー度が高いのはそうだね。でも逆にそれが朱音ちゃんらしいよ」
ここぞとばかりにアピールしていく鈴
「私たち3人キャラの区別していくならそれぞれの方面に特化していかないと!」
「元気カワイイ系の私、優しい儚い系のお姉ちゃん。カッコイイセクシー系の朱音ちゃんってね!」
なにそれ私一度もそんなの聞いた事ないんだけど!?
「なにそれ、私聞いた事ないよそんなの」
朱音さんも私と同じ感想を抱いてる。
「今考えた」
「えー」
えー
「あとね、その水着、他のよりリーズナブル」
「・・・あ、ホントだ、思ったより安い」
ここで値段出してくるのどうなんだろう・・・
「どう?ちょっとの露出に目を瞑れば、似合う、朱音ちゃんっぽい、安いの三拍子だよ?」
「う、うーん・・・ま、まぁこの方向性の水着は好きだけど・・・ねぇ、もうすこし控えめな奴ってある?」
「控えめなやつね。分かった。ちょっと探してくるよ」
そういって朱音さんはカーテンを閉じて着替えはじめ、鈴は新しい水着を探しに・・・
探してない。
一直線にどこかへ向かって、水着を1着持って戻って来た。
持ってきた水着は、確かにさっきよりはおとなしい感じだった。
けど、この店の水着の中ではまだまだ派手な方だと思う。
「ねぇ、もしかして最初から・・・」
「こっちが本命。まぁあっちで決めてくれたらよかったんだけどねー」
交渉人鈴。敵に回したら怖そう。
探してる感を出す為か少し待機してから鈴がカーテン越しに声をかける
「あったよ、ちょっとおとなしい奴。しかもさっきのより安い!」
ホント抜け目ないなぁ
「本当!?」
カーテンから手と顔を出した朱音さんに鈴がその水着を手渡す。
ガサゴソと音がする試着室越しに声が聞こえる
「あ、いいかもこれ、さっきのより可愛いし」
グッっとこっちに親指を突く出してくる鈴。
「か・ん・ぺ・き☆」
「うわー・・・」
朱音さん。鈴に遊ばれてるよ・・・!
「この水着いいね!可愛いじゃん!」
カーテンを勢いよく開け放って朱音さんが出て来る。
「でしょー?これ見つけた時キタ!ってなったね」
「こういうの着てみたいけど、ちょっとセクシー過ぎないかなーって、思ってたんだよね。でもこれなら大丈夫!」
「じゃあこれでー?」
「決定!」
本人も満足してるし、真相は言わなくていいかな。
その後私たちは、モールのフードコートで昼食を取った。
・・・鈴が水着着てるところ見てない気がする。
「あれ?鈴水着買ってた?」
「うん」
「いつの間に?」
「お姉ちゃんが着替えてる間に」
「え、だいぶ早いね」
「二人と違って方向性は決めてたしね」
「試着とかしなかったの?」
「したよ?お姉ちゃんが着替えてる間に」
「え?」
早着替え・・・?
「朱音さんは見てた?」
「見てたよ。決めるの早いし着替えるの早いし似合ってるし、水着選びの才能あるね」
「そうなんだ・・・」




