第1話:はじめての夏休み
高校生になったけれど、
夏休みを経験するのは初めてだ。
・・・とはいっても、特に特別感はないけど。
「・・・おはよう」
9:30。
休日ならともかく、平日なら確実に遅刻する時間に起きても何の問題も無い。
夏休みが始まって5日。
毎日私はこんな感じだ。
「あ、おはようお姉ちゃん」
リビングに降りると、鈴はもう起きていた。
鈴は学校の課題をやっている。毎日だ。
このペースだとあと2、3日くらいで終わっちゃうんじゃないだろうか。
「鈴、生徒会長の話聞いてた?」
宿題は毎日コツコツと、って
「うん。聞いてたよ?聞いてたけど・・・」
鈴は苦笑いのような表情を浮かべ、
「分割してやろうとすると、楽しい事した後になんかやる気なくなって、最終的に最後にいっぱい残っちゃうんだよねー」
あははははは・・・と笑う。
まぁ、わからなくはない。
思いっきり楽しんだ日に勉強とかはあんまりやりたくはないかも。
朝食を終え、食器を片付けた後、私は玄関へと向かう。
「じゃあ、私散歩にいってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
一応、私は夏休み中日課として、散歩に出かけることにした。
目的としては、近所の地理を知る事と、筋力の回復。
いくら成長しにくい、変化しにくいとは言っても、こうやって毎日運動していれば、
いつかは人並みの生活が難なく行えるくらいの体力はつくはず。
7月の10時頃は、まだ涼しくて、ただ歩くだけでは汗があふれて来たりはしない。
降水確率はゼロパーセント。空は青く、まばらに白い雲があるだけの、絶好の散歩日和。
肌身離さず身に付けているブレスレットを揺らしながら、もう見慣れた家近くの道を歩く。
自由な校風も奏して、校則で禁止されなかったこのブレスレットは、私の片身のようなものだ。
過去の私が残してくれたもの。
何となく運命を感じているもの。
私の最初の宝物。
休み休み、気の向くままに町を歩いて、気が付けば10時30分。
30分しか歩いてない?
大丈夫。私の足はそろそろマズイ。
いつもこの辺りで、何処か休める所を探して、一休みしてから帰る。
ちょうど近くにあったファミレスに入り、さすがにドリンクだけでは失礼だから、軽く軽食のようなものを頼む。
基本疲れた足を回復させる為なので、休憩中はとにかくのんびりしている。
今日は窓際の席だったので外をぼんやり見ていた。
ボーッとしていると不意にスマホが震える。
見ると、鈴と朱音さんのグループに書き込みが来ているようだ。
朱音「今大丈夫?」
鈴「暇だよ」
由依「私も」
朱音「よかった」
朱音「海に向けて水着とか買い物にいく話だけど」
朱音「明後日とか大丈夫?」
明後日かぁ・・・まぁ予定入れて無いし、平気かな?
えっと・・・「あさってなら、予定n」
鈴「平気だよ。予定無いし」
由依「私も」
二人の入力速度についていけない。
さっきから鈴の便乗しかしてない。
朱音「じゃあ明後日の9時に駅前集合ね」
鈴「おっけー」
由依「わかった」
「・・・ふぅ」
一息ついてスマホをテーブルの側に置く。
・・・水着。
水着かぁ・・・
私個人としては泳ぐ気は全くないし、泳げるとも思ってないけど、
ビーチに出る以上必要だよね。
どんな水着が似合うだろう・・・
細い腕を見つめながら、私の体を思い浮かべる。
私の体、全体的に細すぎるからなぁ
似合う水着なんてあるのかな。
体型に合わせた水着が云々ってテレビで見た気がするけど、あんまり覚えてないや。
後で調べればいいかな。
お会計を済ませ、店から外に出る。
「・・・うわ、暑・・・」
入ったときとは別世界のように外は暑くなってた。
時間はまだ11時ちょい過ぎ。
暑いからといってだらだらしてるともっと暑くなっちゃう。
はやく帰らなきゃ。
散歩特有の定まらないルートを捨てて、スマホ頼りの最短ルートで帰宅する。
それでも結局時間はあまり変わらず帰る頃には、11時30分。
外は蒸し暑く、
汗が服を湿らせる。
す、透けてないよね?
「ただいま・・・」
いろんな意味でヘロヘロになりながら玄関の扉を開ける。
「あっ、おかえりー」
鈴がソファに寝転がりゲームをしながら出迎える。
あ、涼しい。
どうやら既にクーラーの電源が入っているようだ。
「クーラー早くない?」
「だって暑いじゃん」
「そうだけど・・・ほら、エコロジーしなきゃ」
「えー?」
もうこのやり取りは夏休み入って4回目。
夏休み中ずっと繰り返すんだろうなぁ。
でも、もうクーラーが入っている以上、私も涼んじゃおう。
さっきまで蒸し暑い外を歩いてたんだし、
許されるよね。




