第14話:終業式
「皆さん、明日から夏休みになります。ですが、高校生という立場は変わりません。あまり羽目を外し過ぎて、問題を起こさないように。部活動部員にも迷惑がかかりますからね」
生徒会長、一条和也先輩の演説がホールに響く。
終業式。高校生活1年目の、前半最後の日となる今日。
私はこういう式ではいつも鈴に体重を預けながら聞いている。
そうしないと、たまに足が持たない時があるから。
「さて、ここからは勉学の話です。夏休みといえど、勉強は怠ってはいけません・・・などと、塾では言われるかもしれないけど、それにこだわり過ぎてもいけません。なにせ、夏、"休み"なんですから。貴重な学生の長い休み期間です。目いっぱい羽を伸ばしてもいいんです。」
なんていうか、一条先輩らしいというか・・・生徒会長らしくないというか・・・
「夏休みの宿題は、学力の維持が目的です。なので、初日に全部終わらせたり、最後まで取って置いたりしないで、できるだけ夏休み中分割して行うのが理想だって事、覚えておいてください」
でも最後は真面目に締める。
抜け目がないなぁ。
「さて、これで配布物も配り終わったし、連絡事項も終わったし、今日やることはもうないな・・・次に会うのは8月の登校日だな。よし、解散!」
担任の先生の宣言で、晴れて夏休み突入となる。
ホームルームが終わり、生徒一人一人各々の行動を取り始めている頃、
「ねぇねぇ、二人とも」
朱音さんがうきうきしながら話しかけて来る
「何?」
一瞬反応が遅れた私とは対照的に、鈴が高速で反応する。
「夏休みどっか行こうよ」
「遊びにいくの?」
「そう、海とかどう?」
「海かぁ・・・私海行った事ないなぁ」
泳ぐだけの体力だって無いし。
「じゃあちょうどいいじゃん。行ってみようよ」
「でも私泳げないよ?」
「別に泳ぐだけが海じゃないし大丈夫だよ。あ、そうだ、水着ある?」
「え?どう・・・だろう、中学の頃のがある・・・かもしれない」
まだクローゼットの中とか、全部見れたわけじゃないから、探せばあるかも。
「うーん・・・そんなんだったら新しいの買いに行こうよ。私も新しいの買おうと思ってたし」
「新しいの?」
「だってそれ五年以上前のでしょ?新しいの新調しようよ」
そっか、五年前か・・・確かに古いかも。
「鈴ちゃんはどうする?」
「私も新しいの買おうかなー」
「じゃ、決まりだね。詳しい日程とかは後で決めよう」
海に行くこと、そして、そのための水着を買いに行くことが決まった。
すると、
「おっ、皆なんの話してんだ?」
「あっ、牧原さん」
やってきたのは朱音さんの幼馴染の牧原慎二さん。
「ん?ああ、夏休みの予定について話してたよ」
朱音さんが慣れた口調で言う
「へー、どこに行くんだ?」
「海に行くんだって」
「へー、海かぁ。俺も行っていい?」
「なんでよ!?女子たちの集まりに混ざるの?」
朱音さんが声を荒げる。
「いや、別にいいんだけどさ、女子だけで海行って、ナンパ野郎とかチャラ男とかなんとかできんの?」
「え?あー・・・うん・・・そっか、あー・・・ナンパかー・・・・」
私にきっぱり断れる勇気はあるかな・・・もしそれでキレられたら私逃げられないし大声も出せないし、どうしよう・・
「どうするの?」
頭を抱えてうなる朱音さんに鈴が聞く。
「まーたしかにこいつなら下心とかは特にないだろうし、並のチャラ男なら普通に撃退できるだろうし・・・でも・・・」
「前から思ってたけど、朱音ちゃん結構慎二くんへの信頼度高いよね」
鈴は唐突にこういう事をぶっこんでくることがある。
「ええ?そんなことないよ!?」
「今も下心真っ先に否定してたし」
「だってこいつそういうキャラじゃないし」
「ほら、やっぱり信頼してる」
「・・・・・・・・・・・うぅ」
朱音さんは何も言えず固まっている。
「ね、ねえ!?二人はどうなの?こいつに水着見られて恥ずかしいとかはないの?」
急にこっちに振られた。
え?ど、どうだろう・・・
「私は別に大丈夫だよ、朱音ちゃんお墨付きだしね」
「だからーっ!」
鈴・・・遊んでるね?
「由依っ!由依はどうなの?」
「私・・・」
うーん・・・男の子に水着を見られるって事自体が全然想像できないし・・・
っていうか、まず私自身水着着たこともないし・・・
「どうなんだろう・・・いまいちイメージできないや」
「じゃあ、慎二くんでデモンストレーションしよう」
「?」
鈴が謎の提案をしてくる
「友達の幼馴染で、友達に水着見られてどう感じるかをテストしてみようって事。朱音ちゃんお墨付きで安全だしね」
「そ、それ・・・必要なの・・・?」
「一回試しておく価値はあるんじゃない?」
「そ、そうかな・・・?じゃ、じゃあ、私も、お願いしよう・・・かな?」
「だってさ。私達二人は賛成だよ」
「う・・・わ、わかった、じゃあ慎二も護衛として採用!変な事したらぶっ飛ばすからね!」
なんかテンションがおかしい朱音さん。
「だからしないって・・・」
「あと!水着買いに行くときは同行させないからね!」
「そっちは初耳だし、もともと買い物に付いていく気はないよ。どうせ荷物持ちさせられそうだし」
「いい?絶対だよ?」
「だからわかってるって・・・」
ナンパ対策として、海に牧原さんが同行することになった。
っていうか、朱音さんと牧原さん。やっぱり仲いいよね。




