第12話:文化祭のテーマ
「さ、今日の議題は、文化祭のテーマ決めだよ」
開口一番、生徒会長一条先輩は、そう宣言した。
「テーマ決めですか・・・」
「あ、そうだ、一年生は聞いたことないっけ?」
「いえ、前に聞きました」
「いえ、大丈夫です」
「去年の文化祭も行ったので知っています」
「そうかい?ならいいんだけど、って事は、テーマを設定する理由とかも、もう知ってたり?」
あ、それは聞いたこと無かった
どうやら皆そうだったらしく、皆で不自然な目配せを繰り返している。
「その感じだと、知らないみたいだね?」
「はい。理由までは知りませんでした」
「じゃあそこからだね」
会長は大げさに両腕を広げながら話し始めた。
「さっきも言った通り、文化祭では毎年違ったテーマを掲げている。けどそれは、別に連帯感を高め質の良い文化祭にしようとか、企画に意味を持たせることによって収穫ある文化祭にしようとか、そんな向上心の為に設定されたわけじゃないんだ」
私はてっきりそういう感じだと思ってたけど、どうやら違うらしい。
でも他にわざわざテーマを決める理由って・・・?
「テーマを決める本当の目的は、"そのほうが楽しいから"なんだよ」
「・・・え?」
そんな直接的な理由なの?
「去年は"海"そして一昨年は"アミューズメント"。そのくらい具体的なテーマを決めると、学校の雰囲気全体に統一感が生まれるでしょう?そうすると、普通の学校とは違う文化祭という別世界が、さらにもう一段回現実離れした特別な世界になる。なんだかんだいって皆、"特別なもの"には心惹かれるからね」
なるほど・・・たしかに、初めて見るもの、特別なものは、わくわくするかもしれない。
・・・見えるもの何もかもが初めてだと、それはそれで不安になるけども。
「つまり、今から僕たちが決めるテーマも、できるだけ具体的なものの方が良い。ってのはわかってくれたかな?」
「「「はい」」」
「よし、じゃあ、早速テーマ決めに入ろう。・・・とりあえず、これが過去十年間のテーマね。これと同じものにはしたくは無いけど、参考にはなるかな」
会長はテーマについて語りながら、背後のホワイトボードに過去のテーマを書き綴っていた。
海、アミューズメント、アメリカ、SF・・・
みんなバラバラなテーマだ。
「さて、何かいい案はあるかな?」
会長がそういうけれど、多分今回私は出る幕はないだろう。
目覚めて一年。この高校へ進学するための勉強ばっかりしてきたから、
こういうことへの知識や発想が圧倒的に不足してる。
「そうですね・・・中世ヨーロッパとか、宇宙とか・・・ありきたりではあるけど、直近のテーマには無いですね」
まっさきに案を出してきたのは、書記の江川先輩だった。
デザインとかを考えるのが好きって言ってたし、アイデア出しとかは得意なんだろうなぁ。
「そういえばそうだね。出店の発想もしやすそうだし、いいテーマだね」
「そうそう、」
次に手を挙げたのは、イケメン会計、三島蓮先輩。
「実は、こんなものを作ってみたんだけど・・・」
彼が取り出したのは、くじ引きの箱のようなものだった。
「何個かテーマを書いた紙を入れてあります。・・・つまり、くじ引きですね」
「くじ引き・・・まぁテーマとしては、面白そうな感じであれば何でもいいし、最後はそれでいいか」
「ってことで、とりあえず一人二枚ずつテーマ案を書いて、くじ引きで決めよう」
流れですごい大雑把な方法でテーマを決める事になった。
手元には紙が二枚。
私も二つアイデアを出さないと・・・
テーマかぁ・・・何がいいんだろう。
私が知ってる事柄はまだまだ少なすぎるし・・・
うーん・・・じゃあこんな感じになったら楽しそうってテーマでいいかな。
楽しそうと言えば、遊園地?
アミューズメントと被るかなぁ・・・
じゃあ、動物園・・・?
よし、そう書いておこう。
他に楽しそうなもの
・・・おとぎ話の世界とか・・・?ちょっと子供っぽいかな。
ファンタジーって書き方にしとこう。
「さて、全員分集まったね。ではくじを引こう。引いた後それが実現できそうか議論した後、決定だ」
「はい」
皆の意見を入れたくじを会長ががさごそとかき混ぜる。
「・・・・・・よし、これだ」
さっと会長が箱から手を引き抜く。
「えーっと・・・どれどれ・・・"ファンタジー"か」
あっ、私のだ・・・会員7人だから確率的には無い訳じゃないけど、まさか自分が当たるとは思わなかった。
「ファンタジーねぇ、確かに見た目の変化は大きそうだね」
「そうですね。クラスごとの個性の出しやすさも中々かと」
「ちょっとゲーム感は出るかもしれないけどねぇ」
「文化祭って基本そんなものじゃない?」
先輩たちは私が出したテーマについて、真剣に話し合っている。
自分で提案したはいいが、出る幕が無い。
「うん、反対意見も無さそうだし、このテーマでいいかな?」
「「はい」」
「よし、決定。今年の文化祭は"ファンタジー"だ」
あっさり決まってしまった今年のテーマ。
嬉しいやら、拍子抜けやら。




