第6話:私の限界
私の傷跡の話を終え、戻ってきた鈴が着替え終わるのを待って、
私たちは更衣室を出る。
確か最初は、身長や体重を測るはずだ。
特に体力とかは使わないから楽だ。
「あー、春休みお菓子巡りしてたから太ってるかなぁ」
鈴がおなか辺りをさすりながらつぶやいている。
「運動してないとすぐ太っちゃうよねー」
それに朱音さんも続く。
いろいろ不足している私としては、
むしろ筋肉とか脂肪とかはもう少し欲しいところなので、賛同はできない。
案の定、身長は平均値より僅かに上程度だったけれど、
体重は、15歳女子の平均を大きく下回っていた。
・・・実年齢的には私は20歳だけど身体的には15歳から変わってないからセーフ。
次は、体育館で、反復横跳びと、上体起こしと、長座体前屈。
最後のはともかく、前二つは私にとって、苦痛でしかない。
下手すれば、今日一日分の体力をここで使い切ってしまうかもしれない。
「あ、ダメだこれって思ったら途中で止まってもいいからね」
「マジにやると私たちでも辛いしね」
二人はそう言ってくれてるけど。一応、無理のない範囲で頑張ってみようとは思う。
それで限界を超えて倒れてしまうようなことにはならないように気をつけなきゃ。
「ふっ・・・ふっ・・・ふぅ」
ほんの数メートルの幅を行ったり来たり。
それだけの動作で私の足に絶大な負担が襲い掛かる
あっ・・・ダメかも、ちょっとペース落とそう・・・
そうやって、一瞬足を止めたら、今までの疲れはフェイクだとでも言うかのように、
急に足が重くなる。足を引きずるような動きしかできなくなる。
それでも、完全に止まる事は無く、やりきる事が出来た。
「はぁー・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・」
深く息を吐き、傍らに倒れ込む。明らかに他の人たちより動けてはいなかったけれど、
これでも、私の全力は出し切れたと思う。
「おつかれ、お姉ちゃん。大丈夫?」
「うん、一応は・・・」
今は動けないけど、しばらくすれば歩けるようになると思う。
鈴はテニス部だけあって、機敏に動いていた。
もはや私では比較することすらできない。
次の上体起こしはもっと酷かった。
頑張るぞと意気込んだはいいものの、ものの数回で、どうしようもなくなって、
後半は、寝ながら体を左右に揺らす程度しか動けなくなった。
傍からみれば、すごい惨めな感じだったと思う。間違いなくかっこ悪い。
長座体前屈については、特に言うことはないよね。激しい動きじゃないし。
でも、思ったより私の身体は柔らかくは無いようだ。
運動は無理だと思っていたけど、もしかして私のスペックは運動以外の面でもかなり低いのでは・・・?
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グラウンド種目は、それ以上の地獄だ。
砲丸投げ、50メートル走、立ち幅跳び・・・
どれもこれも私にとっては高すぎるハードルになりえるものだ。
特に50メートル走。
走りきるまでのタイム計測なので、途中離脱も許されない。
歩いてでもゴールに向かわねば終わらない。
しかも次の人が待っているから。最後にもたもたしてると注目の的になる。
とんだ恥さらしだ。
「仕方ないでしょ!?こういう身体なんだから!?」
なんて、開き直って言えるはずもなく。
スタートしたその瞬間から、周りに置いて行かれる私。
そもそも、「走る」という行為そのものがいまいち習得しきれていない私は、
本当にこれでいいのだろうかと半信半疑で走る。本当に走れているかはわからない。
そしてそれすらも、半分にもたどり着かないうちに足が前に出にくくなり、
「あっ、ヤバいかもこれ」
などとコースの横を並走してくれている二人に警告してるうちに、他の人はゴールしている。
「ダメなら歩いてもいいんじゃない?」
「クラスメートはお姉ちゃんの事知ってるしね」
残り10メートル。
もうすでに走っているとも言えないようなフラフラ状態で進んでいる。
歩いてもいいとは言ってくるけど、正直なところ、もう普通に歩くような余裕もない。
「はぁ・・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・」
数メートルの距離を、死にかけのゾンビみたいな動きでゆっくりと進む。
何となく後ろがザワザワしている気がするけど、振り向いてる余裕はない。
「あっ・・・やっと・・・終わった・・・・」
ゴールラインに跨ぐように倒れ伏す。
正直ここでこんな事してたら邪魔なのはわかってるけど、もう横にはけるだけの体力が無かった。
後ろのざわつきが大きくなった気がするけど、もうどうでもいい。
「あっ!ちょっと!大丈夫」
「お姉ちゃん!?」
二人が駆け寄ってくる
「う・・・ごめん・・・コース脇まで運んでくれる・・・? もう、動けない・・・」
もう後は言わなくてもいいよね・・・
クラスメートから異常に心配されたり、
男子の歩幅以下の立ち幅跳びとか、
そもそも片手で持つのすらギリギリな砲丸投げとか・・・
そんな感じだから・・・




