第10話:第三の選択肢
演劇部の役者さんたちは、皆楽しそうに演技をしていた。
そんな感想は、皆抱いているものだろうと思っていたけど、
鈴や朱音さんに聞いたら、どうやら私だけらしい。
やっぱり、私には元演劇部として、失っていたと思っていた何かが残っているのかもしれない。
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「どう?何かピンとくる部活はあった?」
中庭にある休憩スペースで、私達は話していた。
「うーん・・・演劇部の人たちは楽しそうに見えたけど、他に何かピンとくるものは・・・」
「でも、演劇は体力的に辛いって言ってたよね」
「うん。私には無理かな」
「でも帰宅部はつまんないよね」
皆私の為に、色々考えてくれている。
それでも決めきれない私の不甲斐なさが申し訳ない。
すると、朱音さんが、
「そうだ、由依ちゃんはさ、何がやりたいとかあるの?」
「え?やりたいもの・・・?」
「うん。テニスがしたいとか、楽器を演奏したいとか、そんな具体的な話じゃなくてさ、自分の作品を他の人に見せたいとか、なんかの大会で賞を取りたいとか、なんかそんなふんわりした目標みたいなのとかさ、そうゆうのあったりしない?」
私がやりたい事・・・一番やりたいことは、始めから考えていた、「青春を謳歌すること」だけれど、
じゃあそれって、何をすればいいのか、を考えた事はあまり無かった。
青春を楽しむ・・・つまりそれって、友達をたくさん作ったり、恋をしたり、そうやって楽しむことを言うんだよね、きっと。
そのために、私がやりたい事、やるべき事・・・それは、
「やりたい事と言えば・・・あれかな。いろんな人と交流して、仲良くなりたい」
「いろんな人と交流・・・ねぇ」
「どうだろ、おかしいかな・・・」
「ぜんぜん!目標としてはかなりいい感じじゃない?」
「さて、いろんな人と関われる活動かぁ・・・」
三人はまた、考え始める。
目標が出来たからといって、すぐにアイデアが浮かぶわけでは無かった。
すると、鈴がいきなり顔を上げ、
「それなら、生徒会とかいいんじゃない?」
部活動ではなく、生徒会。そう提案してきた。
いままで放課後活動としては部活動しか考えてなかったから、生徒会の存在は頭には無かった。
「生徒会・・・?」
「そう、今日もいろんな所で生徒会の腕章付けた人が部員と楽しそうに話してたし、いろんな人と触れ合うって、ポジションで考えると、かなり良い選択肢じゃない?」
思い返してみれば、見学の時に、そんな人たちが居たような気がしないでもない。
生徒会。学校の様々な物の管理・運営を行う組織。
確かに、人と交流する機会は多いのかもしれない。
「生徒会かぁ・・・選択肢に入れてみてもいいかもね」
「じゃあ早速行ってみようよ」
「え?どこに?」
「生徒会室!」
「え?でも、今日は部活動見学会じゃないの・・・?」
「一応、各種委員会もスペース設けてるらしいよ」
「そうなんだ・・・」
私達は、早速生徒会室に向かうことになった。
「ねえ、本当に公開してるの?」
生徒会室と書かれた部屋の前まで来たが、見学や募集のポスターはおろか、張り紙の類すらない。
あるのは、学校の連絡事項や、校内新聞だけだった。
部屋の奥からは物音ひとつせず、人がいるのかさえ怪しい。
「ま、まあ行ってみようよ、間違ってたら謝って帰ればいいし」
そういって鈴はドアに手を掛ける。鍵はかかっては居ないようだ。
「すいませーん」
心なしか小声な鈴が、挨拶しながら生徒会室へと足を踏み入れる。
私と朱音さんがそれに続く。
「ん?おや、珍しいね、ようこそ生徒会へ。僕は一条 和也。生徒会長をやってるよ」
生徒会室には、いかにも優等生といった雰囲気の男子生徒が一人いるだけだった。
「ここが、生徒会の見学場所であってますか?」
私は生徒会長にそう問いかけた。あまりにも催し物感が無い事務的な空間に、それを確かめなければだめだと思ったから。
「一応ね、この学校で、部活よりも生徒会に入りたいって人はほとんど居ないから、見学できるようなものは何も用意してはいないんだけど・・・」
「そうなんですか?」
「うん、この高校ってさ、必要な学力はそこそこで部活動が活発でしょう?だから、この学校に入学してくる生徒って、部活する為に来るか、勉強も含めてそこまでいろいろやる気があるわけでは無い生徒が大半なんだよね。だから生徒会含め、委員会関連は皆人が集まらなくてね・・・今日だって、生徒会に来たのは君たちが初めてだったんだよ?」
生徒会もいろいろ大変なんだね、
そう耳元で話しかけてくる朱音さんに、私も、そうだね・・・と苦笑いで返すしか無かった。




