第6話:テニス部見学
私はどんなに部活動に入ろうか。
青春を謳歌すると言った以上、放課後活動をすることは半ば確定と言ってもいい。
そうでなくとも、鈴がテニス部に入る以上、私は部活動が終わるその時間まで何かしら時間を潰さなくてはならない。
まだ、放課後に一人で帰れるほど体力的に自信が無いから。
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「おまたせー」
朱音さんと鈴がテニス部への体験入部をするために運動用の服に着替えて更衣室から戻ってきた。
「とりあえず最初は私たちテニス部の所に行くけど、それでいいよね」
「うん」
今日のスケジュールは、最初は朱音さんと鈴が行きたいテニス部の方へ顔を出して、
そのあと私の為に、いろいろな部活を見学していく。というものだ。
テニスコートでは、既にテニス部員の何人かが、新入生達と談笑 していた。
「おはようございまーす!」
「テニス部の入部希望で見学に来ました!」
朱音さんと鈴が、自前のテニスラケットを手に駆けてゆくのを、私はゆっくりと徒歩で追う。
それに気が付いた先輩の一人がこちらへ向かってくる
「お、またやって来たよ。えーっと、三人皆入部希望者?」
「あ、いえ、私は二人について来てるだけです・・・」
「そっか、でもテニスに興味とかは無いの?」
「その、私、体力とか全然無くて」
「体力なんて私も最初の頃は全然だったよ、技術が無いとか、体力が無いとかは問題じゃないよだからさ、」
先輩はぐいぐい勧誘してくる。鈴達は口を出してこない。確かに、この調子では私以外の人がいろいろ言っても、勧誘は止めてくれないだろう。
「えっと・・・そうじゃなくて、私・・・体質的に筋力とか脂肪とか、体力とか、全然付かない体なんです」
「あーそうなんだー。あれ、でもそれって太らないって事?うらやましいなー」
「うーん・・・そんないいものじゃないですよ・・・すぐバテちゃうし・・・」
よく考えると、もし、健康的な体の状態でこの体質であれば、外見年齢が変わらない事を除けば、体型を維持し続けられるダイエットいらずの体なのかもしれない。
ただ、歩く事すらままならない状態からのスタートである私にとっては、やっぱりいいものではなかった。
その後、私は朱音さんと鈴が試合をしているのを眺めていた。
パカン、ポコンと、軽快で爽快な音が響いている。
テニスのルールはよく知らないので、試合展開などはよく解らないけれど、
経験者同士、駆け引きは行われているんだろうなぁ・・・と試合の行く末を見守っていた。
試合が終わって、二人がこっちに戻って来る。
「ふー・・・朱音ちゃん結構強いね、実は大会とか結構いいとこまで行ってたとか?」
「えー?私なんて全然、大会だと緊張しちゃってねー」
「あ、わかるー」
「二人ともお疲れさま、テニス部のマネージャーさんからスポーツドリンク貰ってきたよ」
あらかじめ貰っておいたドリンクを二人に手渡す。
「あ、ありがと、お姉ちゃん」
「由依ちゃんってさ、マネージャーの素質あるんじゃない?」
「えー・・・どうかなぁ」
「でも、マネージャーも結構体力勝負な所あるんじゃない?」
「あー、そうかも、じゃあ由依ちゃんには大変かもね」
体力が関わって来ると、途端に私は出る幕がなくなってしまう。
「さて、次は由依ちゃんの番だけど、どこ回る?」
「うーん・・・運動部は無理だし、とりあえず文化部を見て回ろうかな・・・」
「あ、そうだ、一回演劇部見に行ってみたら?」
鈴がそう言い出した。
「演劇部?でも私・・・」
大声も出せない、体力も続かない私に演劇は・・・
「体質的に入れないのは知ってるけどさ、何か感じる事があったりするかもよ?さっきブレスレットがどうとか言ってた時になんかそんな事言ってなかった?」
「感じる事・・・かぁ」
ブレスレットを見つめながら、私は考えていた。
私は記憶喪失になる前、つまり中学生の頃は演劇部だった。そして、この学校へも、演劇部目的で入学志望していたと聞いていた。
感じる事、それは過去の記憶か、手がかりか、
私は、過去の記憶を取り戻す事に躍起になっているわけではないし、それに未練があるわけではない。
けれど、一度、私が夢見たこの高校の演劇を見ておく価値はあるかもしれないと、ブレスレットを見ているとそう感じるのだった。




