第13話:薄幸の制服
私には中学生の記憶がない。
だから、目の前にあるそれは、ひと際特別なものに見える。
"制服"と呼ばれているそれは、これから訪れる青春の象徴だ。
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高校に合格したとはいえ、準備するべきものはまだいくつか残っている。
正式な書類手続きを済ませたり、教科書等の購入を行ったり、
制服を仕立てるのもそのやるべきことの一つだ。
「どう?お姉ちゃん。似合ってる?」
鈴が試着室から高校の制服を身に纏い飛び出てくる。
「うん、似合ってるよ。サイズもぴったりそうだね」
私そっくりな見た目ではしゃいでいる鈴を見て、私はその姿をそのまま私に重ね合わせた。
ポーズをとっている私、スカートをひらひらさせている私、バレエのように高速回転している私・・・・・・は、無理かも。
制服を着て、可憐に笑う私の虚像は、未来の私の姿となりえるだろうか。
「次はお姉ちゃんの番だよ」
私も制服を手に取って試着室へと向かう。
私の制服は、鈴のものよりも一回りほど細い。
体質のせいで筋肉が鈴よりも少なくて、一般的に痩せているとされる人よりも、私のシルエットはさらに細い。
ちょっと衝撃を加えると簡単に折れてしまいそうなほど、いや、もしかしたら、本当に折れてしまうかも。
試着室の中で服を脱ぐ。
不自然なほど細身な私の肢体が露わになる。
風呂場でいつも見ているとはいえ、場所が変わると、その印象は大きく違って見えた。
普段の服なら、着方なんて意識しないでも着れるけれど、制服はそうはいかなかった。
「え、えぇっと・・・リボンの結び方が分からなくて・・・」
リボンが結べず、不完全な状態のまま試着室の扉を開けると、目の前に鈴、お母さん、お父さんが勢ぞろいしていた。
「リボン?ああ、ちょっと待っててね」
お母さんにリボンをつけてもらう。
少し前に見たドラマにこんなシーンがあったなぁと思い返したら、少し気恥ずかしくなった。
「うん、似合ってるじゃないか」
「とっても可愛いわよ」
全身鏡の前に立つ。
そこ映った私は、さっき私が重ね合わせていた妹の姿とは、また違った雰囲気を纏っていた。
これが・・・高校生の私・・・?
制服を着た私は、想像を超えて、遥かに、"儚い"印象だった。
普段着を着ている時だって、成人式で晴着を着た時だって、そんな印象はあまりなかった。
「こんな感じで・・・いいのかな・・・?」
思わず言葉が漏れる。吹けば倒れてしまいそうな、触れれば壊れてしまいそうな。そんな私では、少し近寄りがたいのではないか、
もう少し、気丈に振る舞って、気軽に触れあえるような雰囲気でなければ、友達は作れないのではないか
そんな不安が沸き上がる。
今まで、私は私の内面の事ばかり考えていて、外見の事はあまり気にしたことが無かった。
鈴と似たようなものだと、そう思っていた。でも、こうやって制服を身に纏うと、顔は同じでも雰囲気が大きく違うのだと気付かされた。
「こう、もう少し元気そうな方が・・・」
笑ってみるけれど、どうしても儚いイメージは薄まらない。
「そのままで良いわよ。十分可愛いから」
その時、お母さんはそう言ってくれた。
「そう・・・かな?」
「そうそう、もしかして、鈴みたいに元気いっぱいじゃないとうまく友達作れないとか思ってない?」
完全に図星。
「そんなことないと思うよ。無理に笑ってようとか思わなくても、由依は由依らしくしてれば、きっと仲良くなれると思うの」
続けて鈴も私を励まして来た。
「お姉ちゃんはもっと外見に自身持っても良いと思うよ。薄幸の美少女ってのも結構人気者じゃない?」
はっ、薄幸の・・・美少女・・・?
私からすると、貧弱そうとか、そんな感じのイメージなんだけれど、他の人からしたらプラス要素なんだろうか、この、なんとも言えない儚さは・・・
「え、ええー?こんなのただ弱々しいだけだよ・・・」
「そんなこと無いって・・・あー、でも高嶺の花とか言われちゃったりしてね」
そ、そんな・・・
「ま、何にせよマイナスなイメージになる事はないだろうから大丈夫だと思うよ」
きっとね、と家族はフォローしてくれた。これが本当なのかどうかはわからないけど、
私の不安は、少し和らいだ気がした。




