ミラ回想
「ハッピーバースデートゥーユー」そんな言葉が私の中で駆け巡る。光に溢れた毎日。そんな特別な毎日でも、忘れもしない。あれは私が7歳になる誕生日。お父さんとお母さんが笑顔で迎えてくれたあの日。
「おい、こっちに来てくれ。」お父さんに呼ばれた。
「明日な、どうやら「名付けの儀式」が中止になったらしい……」
ショックだった、本当に皆と一緒になれると思ったのに。胸がズシンと沈む。目の縁がゆらゆらと揺れてくる。私だけがすぅーと取り残されていく。
「どうして?なんでなの?こんなにお手伝いも、頑張ったよ!!!」
私は自然と叫び出してしまった。お父さんの顔が歪む。そうして、少し表情を緩めて、
「まぁ落ち着け、神父さんがな、ちょっとしたことで来れなくなったんだ。それになお父さんとお母さんはなぁお前に本当に大切な物をな、用意したんだ。」
そう言って、お父さんは、私の肩に手を当てて、私をなだめる。お父さんの手はゴツゴツしていた。
「とりあえずな、今日はご馳走だ。」
そう言って、テーブルには、見たことのない果実が並ぶ。私はその瑞々しい物を見て興奮した。どうしてあるのだろう?
「どうして?果実は採っちゃいけないって、神父さんが言ってた、その果実を採る魔物や動物を食べなさいって、そうやってこの土地を守るんだって。」
「ハハッ……今日は特別なんだよ。なんたって、今日は7歳の誕生日だからな。教会にも許可は取ってある。なんたって神父さんが来れなくなったからな」
そうしてみるとお父さんの顔には傷があった、まるで何かに、擦り付けられた傷……どうして、気づかなかったたんだろう?
「大丈夫?その傷?」
「なぁにちょっと転んだだけだ。」
お父さんは気さくに微笑み返した。そして、玄関のほうを見て。
「そうだお母さんの絵を持ってきてくれ」 そうして、玄関に急いで行く、お母さんの肖像画を持ってくるのだ。お母さんは私が小さい時に亡くなったらしい。生前、お父さんとお母さんは、私に寂しい思いをさせないように、大金をはたいて絵師に描いて貰ったらしい。正直、私はあの絵が嫌いだ、なぜだか暗く感じる。なぜだか、いつもは暗いと感じるお母さんの絵が私に微笑みかけてくる気がする。
「なぁかぁさんや、こいつもこんなに大きくなったぞ。そうさなぁ二人で祝おうや。……」そしていつもと同じようにお母さんのに話しかける。
「スゥ……」息を吸う音が聞こえる。いつものあの歌を歌うんだろう。
「ハッピーバースデートゥーユー……」
そう始まった、どうやらお母さんが、お父さんのお誕生日を祝う時に歌った歌らしい。昔の歌で誕生日を祝う歌らしい。ちなみに、少し音が外れている。
「ハッピーバースデートゥーユーハッピーバースデーディアミラ……」
ミラ?
「ハッピーバースデートゥーユーおめでとう!!!」
よくわからない、ミラというのは、なんだろうか?聞いてみよう。
「お父さん、ミラって何?」
「何って?お前、お前の名前だよ。」
よくわからない……どういう事だ?突然のことで頭が真っ白になる。
「そうさな、神父さんが来れなくなったから特別にお前の名前を伝えていいことになったんだ。それでな、お詫びに特別に森に入って良いと言われたから採ってきたんだ。」お父さんは恥ずかしそうに頬を掻く。
ミラ?そうか私の名前か、そうなのか。
「ありがとう……」
嬉しくなる、なぜだろう?涙が出てくる。
「おいおい、泣くなよ。せっかく採ってきた果物が、不味くなっちまうじゃないか。そうだな……母さんが生きてた頃、言ってたんだ。「この子は強く生きる子になる」ってなほんとに……願いが叶ったなぁ」お父さんの頬にもに涙が伝って来た。
「グスッ……こんなんじゃ締まらないわいよっしゃ!ミラ皮を剥いてやるから食え」
お父さんは丁寧に果物の皮を剥いていく。そうして、果物の瑞々しい姿があらわになった。そうすると自然と涙が引いていく……逆に口の中から、よだれがあふれてくる。
「美味しそう……」勝手に手が伸びそうになる。
「コラ、まずは神様に感謝の気持ちを示しなさい」
「うん!いただきます!」
そしたらお父さんは嬉しそうに。
「さぁたぁんとお食べ」
フォーク持ってその果物刺す、そうすると果汁が溢れてくる。瑞々しい……口に運ぶ……瑞々しい果汁が口の中を包む。さっきまで泣いてたのが嘘みたいに元気になる。
「なぁかぁさんやミラをなここまで育てられたぞ。ありがとう……」悲しそうなお父さんの顔が印象的だった。
「ミラ頑張れよ……お父さんはいつまでも応援してるからなぁ……頑張れよ……」いつまでもってどういうこと?お父さん……。――




