アノン光になる
どうしてだろう……ずっと空っぽだ。なぜだろうこんな贈り物を貰っているのに……空へと飛んでいけそうだ。
手触りが残る……今になってようやく分かった……あのきめ細かい手は……お母様やお姉様の手と一緒だった。ミラは、紛れもなく〝女の子〟だったんだ。
どうしようもなかった……僕はちゃんと〝ミラのモノ〟になれたのだろうか?答えが感じられない。わからない。
「フフ……ねぇちゃんと面白いものが見えたかな?……」
「面白いもの……?ふざけるな。ど……どこがだよ!!!」虚空に僕の声が響く。
「フフ……まぁまぁ怒らない、怒らない。僕は……君に〝教えた〟だけだよ。その理由は他にいるんじゃないかな?」
光を感じられる……もっと、ずっと塊で遠くに……、こいつらがミラを……。そういえば……カンジは……?
「カンジはどこに行ったの?」
「……うん?その……は知らないけど人間君たちがゴブリンって呼んでた人?ならこのザマを見ればわかるよ。フフ、君は見れないんだけどね」
「アァァッ!!!」
何かが出そうだ、叫んでないと何かが消えてなくなりそうだ。涙と鼻水が詰まって息ができない。なんとか吐き出す。
「どうだったかな……フンどれもやると決めたのはニンゲンの君たちだからね」
「僕は……君もアイツラも許せない!!!……でも今はアイツラからだ……」
「フフ……まぁせいぜい頑張るといいよ。君も〝本当〟のことが分かるからね……フフ」
まだ、〝あの声〟は何かを呟いている……そんなことはどうだっていい。今は、どうしても、アイツラを討ちたい。なんだっていい……もうアイツラの光を消す。お腹の底が熱くなってくる……わからないでももう一度アイツラを打ち倒す。そう、前にもできたんだ……僕を信じろ、光と一緒に……。
だんだんと溶けていく……僕がボクでなくなってくる、嫌だ……イヤだ……でもやルンダ。
「あそこダヨ……」光がいや僕の一部がアイツラの場所を教えてくれる。消えちゃえ……キエチャエ。
どんどんと光を消していく……ソウダ、ミラやカンジを消したニンゲンなんて要らない。ドンドンだ。ドンドン……世界の灯りが、どんどん一つずつ消えていく。もう止められない。
どんどん消えていく……どんどん僕の中からも何かが消えていく。アハハ、オカシイ。あれ?僕とは違う光がある……暖かな光、それをそっと、包もうとした。
「あはは……」お姉様の笑い声が聞こえてくる……どうしてだろう。
「ねぇ……アノンおかえりなさい」ミラの声もだ。どうしたんだろう?でも帰ってきた、そう帰ってきたんだ。
「ザザー」なぜか雨が降ってきた……おかしいなぜだろうお姉様もミラも雨の音に溶けていく。どうして……?
痛い……どうしてだろう?今転んだ……なんでぇ。痛い誰も起こしてくれない。誰も手を握ってくれない。痛いのにこんなに涙が出てくるのに。
「やっぱりキサマは魔物だったんだ。おかしいとは思っていた。それにキサマだけおかしな動きをしてやがる。そう今日ようやくそれが分かったんだ!!!」
何なんだろう?これはドコだ?神官の人がなぜか怒っている。
「奥様!これはどういうことですかな?神様は降臨なされないぞ?」お母様が責められている……。これはもしかして……。
「いえ、本当に私の子供です!!!」お母様が声を張り上げている。なぜなんだ?
「ほぅ……なら貴様は魔物と子供をなしたわけか!この不貞者!!!」
「そんなはずございません!天地神明に誓って不貞など」お母様は何かと揉めている?
「そうならな!どう説明するんだこれは……そうかそうだな奥様?この息子いやこの魔物は息子様になりかわれたに違いありますまいな?」
神官様は、何かおかしなことを言っている。魔物が僕になり変われるはずがないのに。そんなわけあるはず……。
「……確かにそうですわ……この子……いや、この魔物は目が見えません。そんなこと王の息子である子に限ってそんなことありませんわ」
お母様どうしてそんなに簡単に認めるの?
「どうですか?アノン様……」
「いや、そうだわ。最初からそうだったのコイツは私のことを調べるようにずっと一緒にいたわ!」お姉様どうして……?
「さぁ……二人ともこれでわかりましたな。魔物は呪いで……お二人を幻術に嵌めていたのですぞ。ささっほかの部屋で魔法師が解術と呪われた名前を解除しましょう」神官はなぜか、2人にこの部屋を出てどこかへ連れて行こうとしている。
「嫌よ!!!"名無し"になるのは嫌!!!あんな仮面つけたくない」お姉様が喚いている。どうして?
「"名無し"にはなりませんよ。アノン様はちょっと神様に頼んでお名前を変えて頂くまでです」神官は容易いことのように言っている。
「おい……コイツを連れて行け、そして王様がコイツは殺すなとな。後学のためだそうだ」僕は何処かに運ばれていく。
ああ、そうだ、そうだった……僕は「名付けの日」の時、あの地下の冷たい部屋に押し込められたんだ。そうか、僕は誰にも名前を呼んでもらえなかったんだった。
「嫌だーーーーー!!!」叫びはどこへかかき消されてしまった。誰も聞いてくれない。……




