↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/28

アノン起床

 オタンジョウビオメデトウ。何かが聞こえる、誰が歌ってくれた気がする……

 "あの声"は何かが言ってきた気がする……僕が、光が僕に溶けてきて僕が僕じゃなくなった気がする。

「アハハ……アハハ……」

 手を取り合って、笑い合う。お互い、顔なんて知らない。でも、笑っている。足が軽い、辺りを走り回る。気づいたら、地面が柔らかい、ふかふかだ

「タノシイネ」

「うん、たのしいね」

 バシャバシャ……水が跳ねる、冷たくて気持ちいい。

「ヨシキョウソウダゾ」

「負けないよ」

 だんだん、楽しくなって、体がどんどん前に出る。 光の海を泳いでいく、海なんて知らない?光が教えてくれたのかも。もう帰らなきゃ……光の中で僕も手を振り返す。

「バイバイ」

「また遊ぼうね」

 ……

 ここはどこ?地面は硬い……あの柔らかい地面は何処へ?木の匂いはするけど、なんだろう、呼吸はしていない。いつも通り、僕の目の前は殺風景だ。光なんてありゃあしない。笑顔なんて見えやしない。少し、埃っぽい、けどあそことは違う、そういつもいた、あの石の冷たいあの部屋とは。足音は聞こえない。ミラはどうしたのだろうか?そういえば、あの時確かもう、ミラは……、"あの声"に従っていたけどどうなったんだあの後光と一緒になった気がする。そう一緒に……。けれど僕は、これだけは言える……光にはなっちゃいない。そっと自分にため息を吐いて体を起こそうとする。ゴツッ。

「痛っ」 

「…………」

 思わず声が出る。頭が痛い、何かに当たった。懐かしい声が聞こえる。でもなんて言っているか分からない。まだ頭がボッーとして誰かが分からない。

「…………」何かを言っている、分からない。でも懐かしい。けれど、あの遊んだ子達とも違う……、そういえば、あの子達は誰だったんだろうか。僕は姉さんとしか遊んだことはないのに。なんだろう、懐かしい匂いだ。体温を感じる。

 ガシッ。背中が痛い。

 ピチャ。背中に何か水滴がついた。背中に暖かいものを感じる。この手の感触はミラだ。そうだ。ミラだ。彼女は少し震えている。目頭が熱くなる。

「良かった。ヒック」ミラの声が流れ込んでくる。

 良かった……本当にそう本当に。そう、2人で生き残れたんだ。どうなったかなんて関係ない。今は、この感触を感じてたい……何故か、不思議と殺風景な部屋が僕たちの再会を祝っているようだった。体温を感じる。

「ゴクリ」あたりの空気が止まっていく。

「オッホン」沈黙を切り裂くようにどこからか咳払いが聞こえる。

「まぁお熱いところ失礼するが、一応ここは俺の家なんでな」どうやら、この家の家主らしい。

「うるさいわね、アノンが起きて嬉しかっただけよ」ミラが、恥ずかしそうに言い返す。

「まぁ、そいつがアノンか、起きてみても面白いもんだ。こいつが森を……ふふふ」

 森?何のことだろう?そういえば、僕が気を失うまで確か、ミラと一緒に森にいた、そうだった。

 そして、”あの声"が聞こえて確か、そうだった、僕は、光と一緒に……。胸の奥が高鳴る、体が熱くなる。なにか、やってはいけないことをしたのだろうか?

「森ってなんのこと?何が起こったのあそこで」僕は、思わず、聞いてしまう。

 窓から流れる風が止まった気がする。

「今なんて?」ミラが驚いている。どうしたんだろう?そんなに不思議なことでもしたのだろうか。

「こいつは面白いな……。俺に話しかけてくるなんてな」」

 家主もミラと同じ反応をしている。何を言っているか分からない……僕は森で起こったことを聞いているだけだ。ミラが手を握ってくる。僕がここにいることを確かめているかのように。

「あのね、アノン、あいつはねあなた達、いや私たちの周りではね、"ゴブリン"って言うの、一緒に住んでいたから、こいつが"別の言葉"を話していることがわかったの。私だって、理解するのに何年もかかったわ……いや何でもない。」

 少し、ミラはなぜか悲しそうだった。

「はっはそういやお前、最初の頃俺に付きっきりだったもんな。それでかはっは」

「うるさいわね」

 二人の間には、なんとも言えない絆があるように思えた。そう、僕には、わからない何かがあった。でも、確かミラはこう言ってた。ゴブリン、そう、目の前にいる人?がゴブリンなわけなかった。だって、こうやって僕はあの人?いやあの家主の話が分かるじゃないか。手が自然と震えだす。寒い。背中がゾクリとする。何か、駄目なこと、理解できないもの、いや理解をしてはいけないものを触れたときみたいに。そう、”あの声"を聞いたときみたいに。

「大丈夫よ、怖い奴じゃない。こいつは私たちを助けてくれたのよ。」ミラは、この前にいる、家主が怖いと思って、そっと暖かい手で包みこんでそばにいてくれる。

 嬉しい。 でも、そんなことじゃない。もはや目の前にいる家主がどこの誰かなんて関係ない。僕たちを認めてくれるそして共においてくれるだけで十分さ。

 でも、僕には別の言葉を話すというのは信じられないことだった。 お母様は、言葉は、神様が私達に与えてくれた贈り物だって。 だから、言葉というのは、いつだって同じはずだ。僕は、魔法も名前も神様にはもらってないけど。僕は、少なくとも、言葉だけは貰うことができたのだ。そうだから、ミラと僕は話すことができた。

 だから、この家主が今僕と話している言葉は同じ言葉なはずだ。だって、こうして僕はこの家主の言っていること"分かる"からだ。そういえば、お母様は、ゴブリンはお話は出来ないと言っていた。そう、神様に祝福されなかった”存在"として。言葉を与えてくれなかったって。なのに、目の前にいる家主は、こうして僕と話をしている。ミラは、こちらのことを勇気づけようとしてくれている。そして次第に僕の手を握り力が強くなる。そして、ミラは驚いたように。

「アノン?もしかしてあなたこいつの話がわかるの?」

 ……風が通り抜ける、いつになくその風は僕の肌を冷たく焼いた。

「そういや、俺もこいつの言ってることがわかるわ。」

 2人とも、こちらを覗き込むようにこちらを伺うように見ているのがわかる。そう、この感じは、前の場所でもあった……こう、自分とは違う、いや理解できないものを視るそういう感じ。

「なんで見えないの?」「どうしてのあの坊やは見えないのかしら」

 その声が耳から聞こえてくるみたいに。

「まぁ、取り敢えず分かるならそれでいいや、ちょっと話したいことがあるからまぁこの辺に座れや。」

「さぁここよ」

 けれど、2人は違った……。そういって家主はどうやら座る場所を用意してくれる。そして、ミラは、優しく僕を導いてくれる。そうして、冷たくて硬い椅子に腰を掛けた。

「さてどっから説明すっかな。うーん」そう言って家主は、何か、考えを巡らしてようだ。

「ねぇ、アノン」ミラが何か思いつめたように話しかけてくる。 

「本当に、……置いてかないでね」僕のボロボロの服の袖をそっと掴んで、そう言った。そして、そのまま僕の手を握りしめた。

「ああ、もちろんだよ」

 置いていくつもりなんてない。それでも彼女がそう感じたならそうなんだろう。そう、彼女は置いて行かないとそう心に決めた。

「……おっほん、まぁ俺のことも忘れないでほしいなぁ」

「うるさいわね」ミラの手が熱くなる、なんだか、ミラの新しい表情を感じ取ることができて、嬉しかった。そう、僕の隣にいる人は、同じ言葉を話して、同じ気持ちになっているのだとそう思えた。胸の奥がじんわりと暖かくなる。自然と今までこわばってた顔が緩んでいってしまった。

「ねぇ、アノン、今君変なこと考えたでしょ」

「そんなことないよ」

「どうかな」ちょっと握る力が強くなった。今、ミラに睨まれてる気がする。ミラには、隠し事はできないみたいだどうやって僕の考えてることがわかるのかなぁ?ミラはやっぱり僕の表情が見えてるのだろう。でも、僕にはミラがどんな顔をしているのか見えない。きっとずっと見えない。ミラにだけ見えてずるい、とそう思ってしまう。

 いいなぁ……もっと、僕もミラのことが知りたい。

「おーい、聞いているか、ここの家は俺の家だぞ」家主が平坦な声で言った。

「……うっうるさいわね」また、手が熱くなった。この家主とミラとの間にある空気はやっぱり、どこか違った。こんな空気は初めてだった。

「しまいには泣くぞ俺でも……まぁいいやお前ら仲が良さそうで。よし!いいかげん話を始めるぞ。……まったく何を説明するか忘れちまったじゃねえか」

「さっさと説明しないさいよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。