第62話 四人の茶会
フィーネが帰ってきた。
一ヶ月の巡察任務を終え、日焼けした顔で城門をくぐった彼女の第一声は——
「ただいまー! 腹減った!」
だった。
セラフィーナもヴェール邸から駆けつけた。約束の四人の茶会。
暁の庭園のテーブルに、紅茶とレイクミントティーとビスケットが並んだ。リゼット、フィーネ、セラフィーナ、そして俺。
「フィーネ、試験どうだった?」
「合格! 正式に騎士になったよ!」
「おめでとう!」
「えへへ。これでシルヴァーノ騎士団に正式配属を申請できるんだ」
フィーネが誇らしげに胸を張った。好感度は——見ない。見なくても、彼女の誇りと喜びは全身から溢れている。
「セラフィーナさん、護身術のトレーニングどう?」
「まだ……うまくはないですが。でも——楽しいです」
「楽しいって言えるようになったんだね。嬉しいなあ」
フィーネがセラフィーナの手を取った。セラフィーナが——照れくさそうに笑った。
「リゼット様——じゃなかった、リゼット。レイクミントティー、おかわりほしい」
「はいはい」
リゼットが茶を注いだ。両手でポットを持ち、丁寧に。公爵が自ら給仕する。
「……リゼット、お茶入れるの上手くなったね」
「レンに教わりました」
「レンに? レンが教えたの?」
「故郷の知識で——ミントティーの最適な抽出温度を——」
「あはは! レンのおかげだね!」
四人が笑った。
この光景を——ずっと見ていたいと思った。
かつて好感度の数字しか見えなかった俺が、今は——笑顔を見ている。
フィーネの三日月の笑顔。セラフィーナの不器用な笑顔。リゼットの氷が溶けた笑顔。
全部違う。全部綺麗だ。
好感度はいくつだろう。見る気はない。
数字で測れない幸福が、ここにある。
「レン。何ぼーっとしてるの」
「いや——幸せだなって」
「えっ」
三人の目が俺に集中した。
「はは。照れるから見ないで」
「レンが言ったんでしょ!」
「言った言った。でもほんとに思ったんだから」
リゼットの耳が赤い。セラフィーナが微笑んでいる。フィーネが呆れ笑いしている。
好感度。
見ない。
でも——きっと、全員プラスだ。
それだけわかれば——十分すぎる。




