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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第5章 好感度を、見なくなった日

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第60話 フィーネの旅立ち

フィーネが遠征任務に出ることになった。


 シルヴァーノ領の騎士見習い課程の最終試験——北方国境の巡察任務。一ヶ月間。


「行ってくるね」


 訓練場で、荷物をまとめたフィーネが振り返った。軽鎧にマント。腰には正式騎士試験用の長剣。


 好感度は——見ない。


 見なくても、フィーネの表情が全てを語っている。不安と期待と寂しさが入り混じった、いつもの三日月の笑顔。


「気をつけろよ」


「あたしに言う? あたしはレンと違って、うっかり刺されたりしないからね」


「ひどい」


 二人で笑った。


「レン」


「うん」


「あたしが帰ってきたら——ちゃんとリゼット様のこと、大事にしてよ」


「言われなくても」


「言わないとわかんないでしょ? レンはリゼット様のことになると馬鹿だから」


「君もリゼットのことになると馬鹿だね」


「……ばれてた?」


 フィーネが苦笑した。


「あたしね——リゼット様のことも好きだよ。友達として。最初はレンの恋人だから苦手かもって思ったけど——全然そんなことなかった。リゼット様って、仲良くなると意外とかわいいんだよね」


「わかる」


「でしょ? 耳赤くなるし、猫好き隠しきれてないし」


「な」


 フィーネの目が——少し潤んだ。


「だから——二人のこと守りたいなって。騎士になったら、正式にシルヴァーノ騎士団に入れてもらえるようにって——がんばるから」


「フィーネ——」


「泣かないよ。泣くのは帰ってきてからだから」


 フィーネが背を向けて歩き始めた。


 振り返らない。


 その強い背中に——好感度を見る必要はない。


 +72であろうと、それ以上であろうと——フィーネの強さと優しさの前では、数字は飾りでしかない。


「行ってらっしゃい!」


 叫んだ。フィーネが片手を上げた。


 ——あいつは、大丈夫だ。


 つよいから。


 夕方。リゼットが執務室でフィーネの出発を聞いた。


「フィーネが——」


「うん。一ヶ月の巡察任務」


「……寂しくなりますね」


「リゼットもフィーネのこと好きだもんな」


「……認めます。友人として——大切です」


 リゼットの耳が——ほんのり赤い。


「帰ってきたら——茶会をしましょう。四人で。セラフィーナも呼んで」


「いいね。フィーネ喜ぶよ」


「ええ」


 窓の外に、北方に向かう馬の姿が小さく見えた。


 フィーネ・ロートシルト。


 好感度+72の——かけがえのない親友。

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