第59話 ヴィクトールの茶会
意外な招待状が届いた。
ヴィクトール・グランツからの茶会の招待。場所は王都のグランツ商会本部。出席者はレン、リゼット、そしてヴィクトール本人のみ。
「行きますか?」
「行きましょう。断る理由がありません」
リゼットの判断は明快だった。ヴィクトールとの関係は——敵でも味方でもなく、対等なビジネスパートナー。茶を飲むくらいの余裕はある。
グランツ商会本部は、王都の商業地区にある三階建ての白い建物。かつての王宮とは比べ物にならない質素な造りだが、品は良い。
ヴィクトールが出迎えてくれた。
好感度チェック——「見る」を選択。
【+8】
+3から+5上がっている。商談の成立が寄与したか。
「ようこそ。リゼット殿、レン殿」
「お招きいただきありがとうございます」
三人で茶を飲んだ。ヴィクトールが自ら淹れた茶。意外にも上手い。
「……美味しいな」
「商人は接待ができないと生き残れませんので」
ヴィクトールが言うと——その言葉に皮肉はなかった。素直な笑顔。好感度、【+8】。安定。
「商会の経営はどうですか」
「順調です。シルヴァーノ領からの加工魚の販売が好評でしてね。王都の市場で人気です」
「それは何より」
「それと——実は、今日お呼びしたのは別件がありまして」
ヴィクトールの表情が真剣になった。好感度は【+8】のまま。変わらない。本心で話す気だ。
「弟のアレクシスが——来月、正式に戴冠します」
「おめでとうございます」
「で——戴冠式に、シルヴァーノ公爵家を招待したいのですが」
「……戴冠式に?」
「はい。兄として——弟の即位を祝ってほしい。そしてシルヴァーノ公爵家と新王の間に、友好的な関係を築きたい」
リゼットが考え込んだ。
「……ヴィクトール殿。あなたの意図は?」
「意図は——率直に言えば、贖罪です。以前の私は、あなたに対して非道なことをしました。その償いとして——弟には、あなたと対等な関係を築いてほしい」
好感度、【+8】→【+10】。
わずかだが上がった。誠意がある。
「……検討します」
「ありがとうございます」
茶会が終わり、帰りの馬車の中。
「行くの? 戴冠式」
「行きます。新しい王との関係構築は、シルヴァーノ領にとって重要です」
「ヴィクトールを信じる?」
「数字は——何と言っていましたか」
「+10。嘘はなさそうだ」
「なら——信じましょう。数字と、あなたの目を」
好感度が見えることと、人を信じることは——両立する。
かつては好感度のプラスを「信頼できる」、マイナスを「信頼できない」と短絡的に判断していた。
今は——数字は参考にしつつ、最終判断は自分の目で行う。
+10は「完全な味方」ではないが、「嘘はない」ことの指標にはなる。
この使い方が——正しい。




