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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第4章 仮面舞踏会の真実

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第53話 銀の鉱脈と金の商人

シルヴァーノ城に戻ると、グランツ商会との交渉が大詰めを迎えていた。


 加工魚の流通契約は問題なくまとまりそうだが——やはり、銀鉱山の話が出た。


「シルヴァーノ湖北東部の銀鉱脈について——共同開発の可能性を検討いただけないでしょうか」


 グランツ商会の交渉担当者が切り出した。好感度は【+8】。事務的だが、背後にヴィクトールの意思がある。


「お断りします」


 リゼットが即座に答えた。


「銀鉱山の採掘権はシルヴァーノ公爵家の専管事項です。外部の共同開発は受け入れません」


「しかし、資金面では——」


「資金は自前で調達します。加工魚事業の収益と、中立派貴族との連携による融資で賄えます」


 リゼットの判断は明確だ。だが俺は——別の角度からも考えていた。


「一つ提案があります」


 全員の視線が集まった。


「銀鉱山の共同開発はお断りします。ただし——精錬された銀の販路として、グランツ商会を利用する可能性はあります。採掘と精錬はシルヴァーノが行い、販売のみ商会に委託する」


「……権利は渡さず、流通だけを託す」


「はい。加工魚と同じ構造です。グランツ商会も利益を得られる。シルヴァーノも権利を守れる」


 交渉担当者の好感度、【+8】→【+12】。提案に前向きだ。


 リゼットが俺を見た。好感度は見えないが——目が頷いている。


「……それでいいでしょう。詳細な条件は後日詰めます」


 交渉がまとまった。


 担当者が去った後、リゼットが言った。


「うまい着地点を見つけましたね」


「リゼットが毅然と断ったから、交渉に幅が生まれたんだよ」


「……二人でやっていることが、もうすっかり板についてきました」


「公爵と顧問、ですからね」


「……公爵と顧問?」


 リゼットが——ほんの少し、不満そうな顔をした。


「……公爵と——恋人、でしょう」


 耳が赤い。自分から言ったのに恥ずかしそうだ。


「はい。公爵と恋人です」


「……馬鹿」


 ブレンナーが眼鏡を拭きながら、咳払いをした。好感度、【+30】。過去最高値を更新している。


 シルヴァーノ領の未来は——明るい。


 経済的自立。政治的安定。そして——大切な人たちとの関係。


 好感度の数字は——もう、生存のための道具ではない。


 人を理解するための参考情報。時に使い、時に手放す。


 前世の俺が夢見た「数字で人の気持ちがわかれば楽なのに」——その願いの答えが、ここにある。


 楽にはならなかった。


 でも——数字を超えた場所に、もっと大切なものがあった。

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